キャプテン兄っす。
個人的には、久しぶりに時代物である。
しかも、現代経済小説で名高い幸田真音氏の作品なのである。
なんだか不思議な気分だが、最近の小説家は現代物から時代物を書く方が多い。
本書は江戸時代末期に登場した、近江商人絹屋半兵衛の半生を主題としている。
商才に長けた半兵衛が、磁器事業を起こし、その磁器を焼く窯を中心に物語は展開される。
夫婦の絆、職人の意地、お上と商人と、場面場面の様々な人間模様がおもしろい。
また、彦根藩主、井伊直弼が非常に魅力的に書かれているところが大きな特徴だ。
安政の大獄により、井伊直弼はどうしても悪いイメージが日本人の中につきまとう。
しかしながら、若き日の不遇、藩主となっての彦根藩での藩政、大老としての苦悩などが
生々しく描かれており、なかなかどうしてイイ男なのである。
残念なのは、湖東焼が進化していく過程が詳細に書かれているのだが、釉薬、赤絵といった単語に
対して、私自身に焼き物の素養がない為、イメージが湧かないのである。
まだまだ知らないことが沢山あるということを、改めて実感させられる。
商人、職人、武士が幕末という時代に躍動する傑作。