昨夜の夢は奇妙だった。 主人公は自分ではなく、客観的にドラマを見ている感じだった…
九州の北の離島に青少年の矯正施設があり、主人公Aは一昼夜かけ船で到着する。 気候は温暖、強制労働といったものもなく。 三食昼寝付きで、島内は自由に往来できる。 むしろ、避暑地の病院に治療に来た雰囲気だ。
ある日、散歩をしているとラーメンの良い香りがする。 それに惹かれて店内にはいると、店主が一杯100円だと言う。 金は持っていないと答えると、院長に言えば貸してくれるとぶっきらぼうに返事がきた。
院長に申し出るとニコニコしながら、100円と一枚の紙切れを出した。 無地の約束手形だ。 これは何ですか?と聞くと、もう一度見ろと顎を突き出す。 よく見ると、振出人は自分、宛先は院長、期日は一年後の出所日、額面100円と書いてあった。
手形を見ながら、よく分からないままにラーメンを食べる。 美味しかった… 警察に捕まって以来、こんなに美味しいものは食べたことがなかった。
それ以来、院長に借りては買い物をするようになった。 不思議なことに借りる度に、最初にもらった約束手形の額面が増えている。 書き直していないのに自然に増えていく。
「出所日に返せないと、返せるまで延期になりますよ」とニヤッと笑いながら院長が言う。 「島内では自由に働けますので、働いて稼いでください」と続ける。 嫌な顔だ。
一日中することもないのでラーメン屋で働くことにした。 店主一人の店だが、Aはいつの間にか皿洗いをしていた。
一月後、手形を見てみると 受取人が自分に変わり、額面が5000円になっている。
スープを作る手伝いもするようになった。 額面が5万円になっている。
麺を茹でさせてくれるようになった。 額面10万円
その増える額面を楽しみに、人生で初めて真面目に働いた。
出所二ヶ月前のこと、額面が変わっている。 一、十、百、千、万……… 1億円だ! 期日は一ヶ月後! 何だこれは! 私が貰えるのか?
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