B’sLOGに出したやつの結果です。
てか…
え?^ω^
さ……最終選考…作品…だと…?
ざわ…ざわ…
な、なんだってー!
というアレで、B’sLOGは初めてなのでどのくらい集まった中の最終選考なのか、はてまたDEAR+の一次通過と同じだと思うべきなのか、判然としませんが、これは素直に喜んじゃってもいいんでしょうか。 び、びっくりした^^^^;;;; しかしこうしてみると見事に中二病発症中のタイトルですね、私^^
つか、オリジナリティとかって、どこをDO直したらいいのか、一番困っちゃうところですよね。まあこの作品、他へは送れないんだが(枚数的な意味で)
そんなわけで今回は、冒頭ではあるけど出だしではなく、主役すら出ていないシーンを選んでばらして並べて晒してみた。ミクミクにしてやんよ(違)
------------------------
「邪魔するぞ」 「邪魔や、帰れ」 呼び鈴も鳴らさずノックもなしに入り込んできた男は、当然の拒絶を当然のように受け流して、許しも得ていないのに勝手にソファに腰を下ろした。読んでいた新聞をデスクに叩きつけた衣咲が嫌悪感も露な目で睨み付けるのも厭わずに、平然と煙草に火をつける。 「帰れて言うとんじゃ、このヤクザ。ここは喫煙所やないで」 「本庁のデカ捕まえて、よくそんな口が利けるな、岬?」 「名前で呼ぶなて何度言うたら分かんねん、このカボチャ頭。それで本庁勤務とは笑わせるわ」 「すまんな、間違えた、衣咲。とはいえこんな男前にかぼちゃといえるのは、お前くらいのもんだぜ」 「三十五にもなって何が男前や。ほんならとっとと所帯持ちぃ、ここには来んなボケェ」 「そりゃお前もだろうが、同級生」 切ったつもりが切り返された。衣咲が独身なのは出会いに恵まれないせいだが、本庁勤務の彼、八里恵警視が独り身なのは面倒だからというそれだけの理由だと、知っているだけに腹が立つ。暴力団関係者をも怯ませる凶悪な視線を持ちえながらも、異性からの秋波は絶えたことのない男だ。学生時代から。自信に満ちたオールバックの髪型から甘いマスクと立派な体躯、ついでに結構な貯金額と社会的地位まで、どれも衣咲にはないものだ。 もっともその中身はただのチンピラなのだけど。 「相変わらず暇そうな事務所、相変わらず汚い事務所、そして相変わらず小さいな伊咲岬」 「やかまし。ほっとき。仕事サボってこんなとこでヤニ吹かしとる奴に言われとうないわ」 「仕事だよ。つうか、いつになったらその関西弁、抜けるんだお前? だから背ぇ伸びないんだぞ」 「関係あれへんわ! 小さい小さい言うな!」 確かに都市に出てきて日は経つが、そもそも実家が関西なのだから今更抜ける方がどうかしているとは思わないのだろうか。出会った当初から変わっていないだけなのに。 「それで何しに来てん、不良警視。仕事でも恵んでくれるっちゅうんか、恵ちゃん」 雑誌と資料が一緒くたになって山積みされ土砂災害を起こした成れの果てを、今更遅いとは知りつつ火に油を注ぐ勢いで片付けながら、衣咲は狭い事務所で長い脚を持て余すように組んでいる八里の顔が苦々しく強張るのを見て内心ほくそ笑まずにはいられなかった。名前で呼ばれたくないのは彼とて同じだ。 「ああ…見た目中学生のお前にこんなこと頼むのも気が引けるんだが…」 「誰が中坊やねん」 「お前、まだアレやってんだろ。副業。この様子じゃ思わしくないみてえだけど」 「…やかましいわ、アホ。辛気臭いため息つくな。用件言いや」 わざとらしいため息の後で何を言い出すかと思えば、癇に障るこの物言い。愚弄しているようにしか聞こえないのは彼の場合デフォルトだ。それでも人当たりがいいと署内の女性に誤解という名の好印象を植え付けているのだから、詐欺だ。 「どうせそっちで食いつないでるようなもんだろ、フリーライター。探偵なんてやめちまえよ」 「やかまし、言うねん。なんでお前にそんなん指示されなあかんねん」 探偵とライター。どちらの同業者からも苦情を言われそうな職業を持つと言い張るのが、衣咲だ。とはいえ猫探しの傍らで情報収集して文章をこさえているだけなのだから、しかもどちらも食うや食わずで精一杯なのだから、睨まれるのは筋違いだ。 「探偵と警察は相性悪いって言うだろ。ライターのがよっぽど持ちつ持たれつな関係が持てるってもんだ」 「…行き詰ったらここ来んの、やめてくれへん?」 薄々そうではないかと疑っていたことだ。彼がこんな小汚い貧乏探偵事務所に足を運ぶのは、担当する事件に関わる情報が目的の時がほとんどなのだから。堂々と民間人を情報網に抱え込んで、職務違反にはならないのだろうか。 「だいたいお前が担当しとる事件も知らへんし、欲しいもん持っとるとも限らんで」 「『週刊日の丸』、お前が書いてるだろ」 「あ?」 それは、下劣で下世話な三流週刊誌の名前だった。確かに衣咲は、そこの編集部にちょっとしたコネがあり、内容次第で記事を載せてもらえることになっている。彼の記事を好んで読もうともしないはずの、しかも雑誌すら知らなさそう八里がなぜそんなことを知っているのか疑問ではあったが、大事な飯の種だ。よもや摘発されるような事態に陥っているのではとひやりとした衣咲に、八里は優位性に満ちた表情で告げる。 「切り裂きジャックのこと、どこまで知ってる?」 「切り裂きて…ロンドンの、やないよな」 「当然。そいつの捜査状況を教えてやるよ」 いとも簡単に情報漏洩を約束した刑事は、ぽかんとしている衣咲に交換条件を突きつけた。 「代わりに調べて欲しいことがある。最近女子高生の間で蔓延してる『痩せ薬』のことだ」 「ああ、あれ。って、なんで俺が調べなあかんねん。つか、関係ないやろ、管轄外やないの、薬は」 薬のことも聞いたことはあるが、今すぐ提示できるほどの明瞭な資料までは辿り着けない情報だ。つまり不的確な噂話程度。しかし巷を賑わす無差別殺人事件と女子高生に出回る薬との間に、接点があるようには思えない。 「知らねえよ。上からの指示だ、管轄外なのは百も承知だってんだ」 「それ、暗に事件から遠ざかれって言われてんのとちゃうの。またいらんとこ首突っ込んだんやろ」 勤務時間内に堂々とこんなこところへ一人で来てしまうことといい、安易に口外禁止のはずの情報を条件付とはいえ渡してしまうところといい、八里恵はどう考えても組織向きの人間ではない。動けばこれほど使える人材もないのに、動かせる上司に恵まれなければただの不穏分子だ。 「不憫やなあ」 「ああん? どういう意味だコラ。ブルマ穿かすぞ女子中学生」 「いたたっ、誰が女子やねんホンマしばくぞコラ」 ここに第三者がいれば大人気ない掴み合いを始めた二人を諌めてくれただろうが、残念ながらそれは空想上の産物にすぎなかった。衣咲探偵事務所にいるのは、社長兼従業員兼フリーライターの岬一人きり、二人で行動しなければならないはずの八里警視の相方は、彼自身がどこかに置き去りにしてきてここにはいない。
|