中央公論新社のC☆NOVELS大賞、一次選考が発表されまんた。
結果。 「異郷の魔法使い」 選外!ヽ(`Д´)ノ
(´・ω・`)
…もうそろそろ自分の才能(のなさ)に気づいてもいいと思うの。 (あきらめ、悪いです)
以下、いつものように冒頭。
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目を開けた時、視界に一番に飛び込んできたのは、緑色だった。 よく見るとそれは、どこにでも生えていそうな蔓草だった。自分はどこか地面に寝転がっているらしい。首を動かして状況を掴もうとしたが、なぜか意識は緩慢で首の筋は動こうとする意思を沸かせず、瞼を開けているのも億劫なほど、それは急速に休息を求めていた。そういえば頭も、熱でもあるかのようにひどく重いような気がする。 もう一眠り。 そう思ったところで絢斗は、ああこれは夢なのだと気付く。そして体のだるさは眠気が催しているせいなのだろうと。 地面に転がって空を眺める夢を、彼は幼い頃から幾度となく見てきた。その世界では大抵思うように体は動かせず、なす術もなく視界を空でいっぱいに埋める以外、鼻腔を土と草の匂いで満たす以外、できることはなかった。 同じ状況。だから、これはいつも見ている夢なのだと思った。 (けど、それにしては――) それにしては、頬に触れる冷気が、妙に刺さるようだった。否、刺さるのは頬だけではない。むき出しの二の腕は言うまでもなく、服を着ているのに全身が痺れるように冷たい。寒いではなく冷たいのだ。夢の中ではいつも決まって春先のような和やかで穏やかな陽気しか感じないのに、まるで水の中にでも沈められているかのようだ。 もしくは、真冬に薄着で放り出されたかのよう。 (……あれ?) そこで初めて絢斗は、違和感を感じた。まだ意識は麻痺したように機能を半分停止していたけれど、夢ならば絶対に自由にならない視界が、今はっきりと自分の意思で視界を閉ざしたのだ。 夢では瞬きなどしたことがないのに。 絢斗は重い瞼を無理やり押し上げて、もう一度、ぱちぱちと瞬いた。ちゃんと彼の意思に沿って動いた。 そして、同時に思い出した。確か自分は、夏祭りに行っていたはずだ。今は夏休みで、クラスメートの西河が、隣にいたはず。二人で何か、話をしていた記憶がある。そう、あれは……怖い話だ。それを神社の片隅で、待てどもこない友人を待ちながら、怖がる西河相手に披露していたはず。 だが。 絢斗は横にしていた首を上に持ち上げた。墨色の夜空に満天の星。その輝きの多さにまず、怪訝に眉を潜める。あの神社から果たして、こんなに星が見えただろうか。 月が見えた。星々の明かりを妨げないように、控え目に、けれどくっきりと切り取ったような半月が、視界の左上に見えた。 ――月は見えただろうか。 天文学に興味のない絢斗に夜空など見上げる用事はない。二三日前に見た新聞の端っこに乗っていたのは、けれど、新月に向かう細い三日月だったはず。 (どこだ、ここ…) 少なくとも神社ではないだろう。こんな風に電線すら入らずに視界いっぱいに空が広がるところなど、いくら片田舎の町とはいえ畑にでも寝転がらなければ見つかるまい。 ではどうして自分は、神社でないところにいるのだろう。 どうやって移動したのか。 一緒にいた西河はどうしたのか。 酒を飲んだわけでもないのに記憶がない。 突き刺すような冷気が、次第に内側に浸食してくるのが分かる。冷蔵庫にでも放り込まれたかのようだ。今は夏真っ盛りなのに、おかしな話だ。 やはり、夢なのか。 体は億劫さを抱えたまま動く気配はない。動かそうという気力すら沸かない。大の字になって上向けで寝ているらしいことは分かったが、それ以上を把握するのは今のままでは無理だった。しかし把握するためにはもう少し気力が戻ってこないと難しそうだ。今はただ、眠かった。 投げ出した指先に触れるものがある。再び眠りに落ちかけていた絢斗は、手慰みにそれを探る。どうやらそこには草は生えていないらしく、指先に伝わってきた感触は、砂だった。 (砂?) 砂と聞いて思い付くものといったら、公園の砂場か校庭の幅跳びの砂場しか思い付かない。しかしどちらも彼の全身を受け止められるほどの草は生えていない。長身というわけではないが、小柄でもないごく平均的な高校一年の体ほどの草となると、結構な面積になる。 ここは、どこだろう。 夢ならさっさと次の展開に持って行ってほしいのだが、そういえばいつもの夢も展開などなく同じ光景が延々と続くのだったと思い出す。星空がちかちかと瞬いた気がして、さっき瞬きをして違和感を感じたことなど忘れて、やけにリアルだななどと思った。瞼が重い。もはや思考することは困難以外の何者でもなくなっていた。呼吸の幅が長くなる。 眠い。
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