今から5年ほど前のことです。 インターネット上で、ネットショップを営む個人事業主をやっておりました。
楽天、アマゾン、ヤフーショッピングに仮想店舗を持ち、地元産品の食品を全国に発送するお仕事です。
カミさんの協力も得ながら、毎日、受注と発送作業に追われる毎日でした。
ある夏の終わりに、突如その話が舞い込みました。 北海道東部の農家で、とても広い畑に、2種類のジャガイモを混栽してしまった。 まもなく収穫なのだが、市場に出荷することができない。 普通に食べることはできるジャガイモだが、少しでも売ることはできないだろうか?
その2種類とは、馬鈴薯の代表品種である「男爵」と「キタアカリ」
外見の見た目はほとんど変わらないが、男爵の切り口断面は白色に対して、キタアカリは、黄色い。
畑から大型機械で掘り起こして収穫した混栽された2種類のジャガイモを手作業で分別することは全くをもって不可能。
では、ご理解をを頂ける消費者に直接、直販でお届けするほかはないと考えた私は、さっそく販売を開始した。
ジャガイモは、凍結すると、風味が落ちる。 だから、よく冷凍食品で売られている揚げるだけに加工されたポテトフライは、いったん加熱されたもの。
私が販売を決断したのは秋も深まる10月中旬。
そのの量たるや、およそ100トン。なんと10kg入りのダンボ-ル箱で10000箱である。
人生を賭けるほどの量だった。今思えば。
凍結させないで売り切るためには、年末前までに捌ききる必要がある。
私の気持ちは、その農家を助けたい一心である。 できるだけの量をさばいてあげたい。 そんな思いで軽い気持ちで引き受けた。
それが大きな間違いだった。 出荷作業をこちらがやるということは、私が在庫を抱えるということだ。 倉庫は確保した。物流大手の西濃運輸の協力を得て、西濃の大きな拠点で受け入れをしてくれた。そこから全国の家庭・消費者へ宅配発送できる体制ができた。西濃運輸には今でも足を向けては寝られない。たぶん、ヤマトや日本郵便、佐川では不可能であっただろう。毎日、外注の10トントラックが満載で馬鈴薯をプラットホームに入構するのだから、大変だったと思う。
私は、とにかく、数をこなすために、本当に利益度外視の価格で売り出した。10kg送料込みで、1250円だったと思う。 わかる方にはわかっていただけると思う。この価格の異常さを。
それでもいいと思っていた。利益なんかいらないから、その農家を助けたい。
その思いが全国に通じて、その案件は売れに売れた。
でもね、私に降りかかってきたのは、ショッピングモールからの販売手数料の重さと、送料無料分の送料支払い、そして何よりも、発送伝票の作成事務の労力でした 友人たちに手伝ってもらって発送伝票を作成する毎日。
あれは想定外でした。 1日当たりの発送件数が300箱を超え、うれしい悲鳴のはずが、その事務作業の過酷さに本当に悲鳴を上げる日々。
ついには腰痛で立てなくなり、健常者ではない私の限界が見えた出来事でした。
ずいぶんと人々に支えられた。その恩義は忘れてはいけないと、今も時々思い返します。
その商売の道を、結局は私の体調不良が原因で閉ざしてしまった今、恩義のある人々にきちんと恩を返すというのはどういうことなんだろうとしっかりと考えたい60歳の春なのです。
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