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繋いだ手と手はいつか離れてしまうなんてこと、足し算よりも先に知ってたし、大体自分が誰かと手を繋ぐなんてことは断じてないと思ってた。 なのに不意に腕を掴まれて走りだされて、振り返ったあの人は無愛想で何考えてんだか全くわからない。
手を繋ぎたくなんてなかった。
だって温度を分け合ってしまったら情が湧くのなんて目に見えるに決まってる。 そんな心中なんてお構いなしなあの人に、腕じゃなくてちゃんと手を繋がれて、仕方なく諦めた。 悪いのはあの人だから、自分に責任はないんだから。
暫く続いた日常は思ってたほど悪いものでもなくて、光が、見えた気がした。
でもやっぱりそれは気のせいで、発光物なんて何万光年先にだってありはしないのだ。
手は何の前触れもなくほどかれる。
言ってやりたい文句は山のようにあったけど、大丈夫、始めからわかってたこと。 女々しく泣いたりしないから。
でもただひとつ、さみしさでしんでしまいたい。
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