山本英夫原作の、いじめられっ子が殺し屋になり、人を殺していく話です。主人公は過去いじめられていた経験から、他人に対して恐怖があり他人におどおどしてしまう性格です。そしていじめられると泣きます。二十歳を越えても泣きます。 妄想が爆発し勝手に暴れるときがあり、それを利用しようと「通称ジジィ」がイチの味方になります。東京新宿のヤクザを殲滅する作戦に出るのですが、途中でイチが「この人たちは暴力を奮うけれども、ボクをいじめていた人たちとは違うじゃないか」ということに気づき、ジジィいわく「イチが大人になってしまった」状態に入ります。殺しに対するスランプです。 イチは今まで殺人を犯すとき、この相手はボクをいじめていた○○くんに似ている、こういうことをやった人に似ているという妄想を爆発させ殺害していってました。しかし、それが根本的に違うと気づいたのです。 そんなイチがスランプに陥り、人も殺せないちんこも勃起したまま収まらない状態でいるとき、ひとつの電話がかかってきます。相手は間違い電話でSMのM嬢です。絶対的な絶望を味わいたい、という女性です。なぜ絶望を味わいたいのかというと、過去自分はいじめられっ子を助けたせいでレイプされたことがあり、目の前で観ていたいじめられっ子は助けもしないし何もしない、ただ勃起させているだけ、そしていじめっ子が去ったあと、レイプされた自分に向かって「ごめんなさい」といったのだといいます。絶望したくてもいじめられっ子は絶望させてくれなかった、本当はいじめられっ子にもレイプされて絶望したかったのだといいます。どうやらその女性は、イチを昔庇ってくれた女性(だと思いこみ)で「あなたはそのいじめられっこにもレイプされたかったの?」と聞きます。女性は「そうではない、あんたがヤリたいからヤルんでしょ?」と言われ、久々に射精します。 自分がヤリたいからヤる、これがイチのスランプを脱出させます。 ヤクザにとらわれていたイチの仲間を殺しその場で射精し逃げます。イチに追われている立場のヤクザは「復活したな」と楽しそうな顔をします。 イチはそのまま任務を実行し、ヤクザの親玉も殺しにいきます。しかしそこで新宿にきた自分に優しくしてくれた人を見つけてしまい決意が鈍ります。優しくしてくれた人のことを「友達」のように思っていたのですが、彼が撃つと「友達だと思っていたのに」と泣きながら殺してしまいます。 やっと親玉と対峙するのですが、親玉は生まれて初めて痛みを感じます。「イチという人間に恐怖した」からです。痛みを楽しみに置き換えてきていた親玉ですが、痛みとはただの危険信号だと知らされ逃げます。それを追うイチ、追いかけっこの果て親玉は転落死します。 その後ジジィから電話がかかってきて、M嬢も殺すことになります。M嬢はジジィのセフレで正直邪魔に感じていました。 「ヤリたいからヤラれたくなかった」イチは彼女を殺し、勝手な妄想で彼女は最後ボクに「ありがとう」と伝えてきたと歪曲してしまいます。 数年して、新宿という街に馴らされてしまった、ただの人間になったイチがキャバ嬢とのデートをすっぽかされ缶を蹴飛ばします。それが偶然ヤクザに当たり、殴りかかられそうになるとき、イチが涙を流して終わる作品です。
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