最初に読んだのは漫画版の「魔王 JUVENILE REMIX」の方でした。伊坂幸太郎さん原作で漫画を大須賀めぐみさんが担当されているのが本作です。小説原作ということで、ベースとなっているのが原作者の「魔王」の物語を主人公の設定などを大幅に変更して
さらに「グラスホッパー」という作品も絡めたエンターテイメント性の高い作品になっています。週刊少年サンデーで07年〜09年の間
で連載されて、単行本は全10巻となっています。最初に読んだとき、久々のあたりの作品に心が踊ってしまったほどに興奮しました。
当時、私はたまたま青年漫画ばかり読んでいたのでそろそろ王道の少年漫画が読みたいと思い、たびたび本屋さんの新刊コーナーに
立ち寄る日々だったのですが、目に留まった表紙がこの作品でした。表紙も主人公の顔のアップに真ん中縦にタイトルが印刷されているもので、結構目立ったのとタイトルに惹かれて購入したのが最初でした。
内容は主人公の男子高校生・安藤と弟の潤也を中心に物語が展開されていきます。安藤は弟と二人暮らしのごく普通の高校生ですが、ある時、自分の思っている言葉を相手に言わせることのできる能力「腹話術」があることに気が付きます。その能力を使ってある男に戦いを挑んでいきます。それが犬養という青年です。犬養は世界を変えるために手段を選ばず自分の理想を実現してきます。人々は彼の放つ力強い言葉に圧倒され、そのカリスマ性に心酔していきます。ですが、安藤だけが疑問を持ち、間違っているのではないか、ということに気付いていきます。「腹話術」と知恵を武器に危機を乗り越えていきますが、犬養との最終局面で安藤は命を落とします・・・。
兄の死に疑問を持った弟の潤也が真相を探っていく中で犬養にたどり着き、敵討ちを計画します。数年の時をかけて下準備をした潤也は計画を実行しますが、最終的に安藤の望み通りになったかは読んでからの楽しみではないかと思います。
この作品、安藤がものすごく格好いいと思いました。悩んで答えが出なくて立ち止まってしまう時も、苦しくて痛くて泣き叫んでしまうことがあってもあきらめたり逃げたりしないんですよね、彼は。そんな彼をみて潤也は兄の力になりたいと思いつつ、兄のしていることを
黙って見守っているのも、いい弟だと思いました。二人の絆も作品の見どころだと思います。
最終的に「魔王」とはいったい誰の事だったのでしょうか。それはその時の状況で変わってくるのですが、それぞれの人物たちの中にそれぞれの「魔王」がいたと思います。安藤にとっては犬養がそうだったかもしれないし、犬養にとっては潤也がそうだったかもしれませ
ん。他の登場人物たちにも各自に戦わなければならない「魔王」がいたように感じます。それとどう対決してどういう答えを出したのかも考えさせられるものでした。そして忘れてはならないのが原作者さんの世界観を見事に絵で表現されている漫画家さんの画力の高さに感服
いたしました。迫力の戦闘シーンにページをめくる手が止まらない、止まらない。印象的なセリフにぴったりのシチュエーションで描かれていて、安藤の最後のシーンは何度も読み直しては号泣を繰り返していました。
「でたらめでも自分を信じて対決していけば世界は変わる」自分がちっぽけで何にもできないのではないかと自信が無くなった時、この作品を読み返してみれば安藤の姿に勇気づけられること間違いなしだと思います。
2015 11/29 16:00:18 | none | Comment(0)
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