いくえみ綾先生の作品は中学のころから大人になるまでずっと愛読しています。
大人になっても新刊を待ちわびて発売日に買うのはいくえみ作品だけです。
いくえみ作品の魅力は語りだしたらきりがないのですが、一番好きで何度も読み返しているのが「潔く柔く」です。
主人公を長澤まさみさんが演じて映画化もされたので、世間的にもたくさん読まれた作品だと思います。
この作品の一番の大きな特徴はオムニバス形式で展開されていること。
いろんな人たちの恋模様が数話完結で繰り広げられていくストーリーで、最終的に主人公の瀬戸カンナの物語に到達するのです。
登場人物たちが絶妙にかすったり絡み合いながら瀬戸カンナへ繋がっていく様は鳥肌が立ちました。
オムニバス形式の一つ一つの物語は華美でも甘美でもなく、日常のごく普通の恋愛を描いています。
いくえみ作品を読んだことがある方ならわかると思いますが、すべてにおいて「いくえみ男子」と呼ばれる地味なのに憎めない男子が登場します。
どの男子も全く完璧ではなくてどこか欠点もあるけどとても魅力的で、女性がほっておけないキャラクターばかりなのです。
中でも私は主人公の瀬戸カンナと最終的に運命的な出会いを果たす赤沢禄に、とても魅力を感じました。
出版社に勤めている編集者なのですが、その飾らない仕草や言動、たまに発する少し的を得た言葉はいくえみファンにはたまらないものです。
照れ隠しにおどけているように見えて実はとてもまじめなところは、どの女子もとりこになること間違いなしです。
さて少し物語の話に戻りますが、「潔く柔く」はよくある普通の恋愛漫画ではなく、「命」がキーワードになっています。
いくえみ作品にはよくあるのですが、少しファンタジーの要素も入っており作品に深みを持たせています。
瀬戸カンナと赤沢禄はそれぞれが昔に経験した出来事を背負って出会いました。
二人がそれぞれ社会人として働きながらその昔の出来事を自分たちなりに理解していく様が、最終章で描かれています。
お互いの心の動きや関係性の変化が美しく、物語同様読んだあと私も心が浄化されたような清々しさが残ります。
最後まで読み終えて、主人公瀬戸カンナのシンプルでキレイなキャラクターがくっきりと浮きたつ不思議な感覚も味わえます。
何度読み返しても新たな発見や感動に気付く「潔く柔く」、まだ読まれていない方は是非読んでみていただきたい作品です。
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