おすすめミステリー小説、おすすめミステリー本の紹介。 by ホーライ
子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。
一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。
いつわりの共同体が隠しているものとは―。

何も知らず育った子供たちに、悪夢が襲いかかる。


上下2巻で1000ページを超える作品だが、ページをめくる手を止めることが出来ない面白さだった。
長編にありがちな中だるみもほとんどなく、この奇妙でダークな新世界を巡る少年少女たちの冒険に引きずり込まれていった。

物質文明が滅んだ千年後の世界。人類はほんの僅か生き残り、小さな集落が広い日本列島に数箇所あるだけとなってしまった。
人類は「呪力」という超能力を得て、平和で貨幣経済もないユートピアにも似た共同体を作っていた。

しかし、新世界は管理教育、情報操作、洗脳、そして歴史の隠蔽、改ざんといった闇の部分ももっていた。
世界を維持するには、真実は隠されなければならなかった。
図書の分類と検閲。
新世界に生きる人々、特に子供達は徹底した管理のもとに置かれていた。

世界の秘密の全貌はしかし、なかなか明らかにはならなかったが、戦慄を覚えるほどの謎の輪郭がじわじわと読者に迫ってくる。
なにか腐臭を放つものがどこかに隠されているような、そんな感じを受けながら貴志祐介の描く「新世界」の謎に魅せられて物語の中にどんどん入り込んでしまった。

醜い奴隷として使役されるバケネズミ。
自爆して敵を倒す風船犬。
自走式図書館のミノシロモドキ。
そして、呪力を暴走させる悪鬼と業魔。

なんという世界だろう。

貴志祐介の脳髄から産み落とされたこの新世界は、悪と秘密と汚濁、そして謎に満ちている。


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2009 01/23 19:09:39 | none | Comment(0)
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