最近ちょっと旗色が悪いなと思っていた。 俺様の名前は信濃三郎だ。関西の県議会の議員様である。 最近 外村という若い議員が政務活費を異常に申告した為、日本中で騒がれた。 おまけにちょっと情緒不安定な奴だった為、その席で号泣するフリまでしたもんだからさあ大変だ。 マスコミが押し寄せて重箱の隅をつつくような取材を始めやがった。 何の為に議員をやっていると思っているんだ。バカ野郎!。 知り合いの業者に情報を流したり、議会で昼寝をするためだけじゃねえんだぞ。 貰える金をもらって何が悪い。前世紀からやっていることだ。 あの後、古い議員が集まって”何で若い議員に指導しなかったんだ”と話し合った。 それまで毎月通っていた滋賀の風俗や京都の料亭にも行けなくなったじゃないかと不満が噴出した。 ほぼ毎日出張などといくら馬鹿な国民とはいえ、あまりに酷すぎた。外村はヘタクソだった。
とはいえ貰うものは貰っとくのが俺の主義だ。 今日も手下を連れ、京都の料亭にいた。 ここははっきりいって高級、要は貧乏人には逆立ちしても入って来れまいということだ。 さすがにここの領収はそのままの額では提出できない。 只、出し方ってのは色々と方法があるものだ。勿論、それは秘密だが。
ここは安物の居酒屋とは違う。全てが個室になっている。 どんな悪い話や儲け話だって出来る。 俺は 手下どもに”何故、政治家が偉いのか””何故、成功者なのか”延々と教えてやった。 高い酒と美味い魚に舌鼓しながら、俺は上機嫌だった。 勘定を終え、外に出るまでは。
いい気分で店の者に見送られながら外に出た途端だった。 店の中に入ろうとしていた外人とぶつかってしまった。 黒服の男が3人、その奥に老夫婦らしい2人。その中の先に歩いてきた黒服の男にぶつかってしまったのだ。 奥の老夫婦の夫の方が何かニヤニヤして言っている。 俺様にぶつかっておいて何ニヤニヤしていやがる!。俺は議員様だぞ!。 と思うが早いか、昔から手の早いやんちゃな俺だ。手が出た。 生意気な老夫婦の旦那の方をくらわしていた。 「外人野郎!ここは日本だぞ!偉そうにするな!」と吠えた。
すると屈強そうな黒服3人が止めに入った。というより俺様に危害を加えそうな勢いである。 手下どもも加勢し止めようとするが、俺様は近くにあった看板を振り回し叫んだ。 ”俺様を誰だと思っているんだ!”
気分が悪い!飲み直しだ!俺は手下を引き連れ夜の闇に消えた。
次の日、俺は地元に帰ったんだが。 昼を議員会館近くのうなぎ屋で済まして、糞でもして帰ろうかなと思っていた。
うなぎ屋を出た所で黒塗りの大きな車が止まった。 中から昨日と同じような黒服を着た外人が二人飛び降りてきた。 いきなり俺を車に引きずり込んだ。 「何だお前ら!俺様を誰だと思っているんだ!!」と叫んだのだが。 いきなりの右フックで俺は沈んでしまった。 金目当ての誘拐か?俺の地位を利用した…?。
俺は拉致、誘拐されたのだが、その事件の報道は一切なかった。 まるで戸籍を消されたかのように。 元々、いなくても議会も別に困らないだろうが、家族からの捜索願も出たようには思えなかった。 外国人に拉致されたんだから、まして俺のような偉い議員様が消息を絶ったのである国際問題になってもいいはずである。
俺は外国船のハッチの底で縛られ、放置されていた。 今となっては遅いのだが、何故だか、ようやく分かった。 俺が殴った老人は中東の偉く地位の高い人だったらしい。宗教的にも政治的にも。 それこそ国際問題になるほどで、核を打ち込まれるんではないかという脅威さえあったらしい。 日本政府は”好きにして下さい。簀巻きにして沈める時は沖でお願いします。”だったらしい。 馬鹿な田舎議員の為に国民を危険に晒すわけにはいかない。 日本は俺を切り捨てた。
でも何でそんな要人が京都の料亭に?。 後の祭だった。
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