私の運転で主人の実家の両親と3人で出かけた。 銀行に用事があるという義父を銀行前で降ろし、私と義母で八百屋に向かう。この辺ではかなり野菜が安く買える店で、駐車場も比較的広く駐車下手な私もここなら大丈夫なのだ。
銀行から八百屋に向かう途中で急に義母が薬屋に寄りたいと言い出した。この薬屋は昔からの小さな薬屋で駐車スペースがない。しょうがないので反対車線の路肩に車を停める。 義母はひとりで「じゃ、買ってくる」と車を降りていった。
義母は車の行きかう中を向こう側に渡ろうとしている。何だか危なっかしい。付いていった方がよかったかも・・・。 やっと向こう側に渡った義母にホッとしたのもつかの間、義母は薬屋と反対方向へ歩き始めてしまった。 「げっ、薬屋はそっちじゃないって・・・」 車のエンジンを切り、テールランプをつけたまま急いで車を降りた。「お義母さ〜ん!」反対車線から一生懸命呼んだら、道路工事のおじさんが義母を呼び止めてくれた。
やっと義母のもとにたどり着いて「お義母さん、薬屋はこっちですよ」と教えたが、義母は何と薬屋に行く予定をすっかり忘れ八百屋に向かっていたという。 「八百屋なら車で行きましょう」 あまりに愕然として、私は義母の手を思わずしっかり握ってしまった。車に戻るまでその手が離せなかった。
そういえば以前車で買い物に来たときも、帰りにまた銀行前で義父を乗せて行くのを義母はすっかり忘れてたっけ。「アハハ、お父さん置いてくとこだったよ」と笑ってたけど。
多少のボケなら私にだって十分身に覚えがあるし、人のことは言えない。でも、こういう状況は確実に進行するのだろう。早いかゆっくりかの違いはあるかもしれないが。
祖母が生きていた頃もボケがひどくなりだして、時々実の娘の母のこともわからなくなることがあったようだ。 「ほら、時々来てる家政婦がいるだろ?あの、みったくない(醜い)顔した人。勝手に人のタンスを開けたりするんだよ」と祖母がいう。もちろん家政婦さんなど来ていない。 たぶん、パンツのゴムがきついからと次々ハサミで切り込みを入れてしまったりする祖母に母が怒ったりした時は、母ではなく家政婦さんだと思い込んでいたのかもしれない。実の娘とはいえうまくいくことばかりではない。
義母に比べ、年上の割りに義父はしっかりしている。やはり、毎日庭仕事をして体を動かし、几帳面に何でもノートに書き留める性格のせいかもしれない。
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