およそ25年ほど前のことだが、職場での昼休みに、カップ麺を食していた若者集団に一人の中年男性が近づいてきて、こんなことを言った。「おまえたち、そんな石油製蛋白は、体に毒だ。もっと他のものを食べなさい。」つまり、カップ麺には石油から化学的に製造されたたんぱく質成分が含まれるので有害だ、と言うのである。彼は旧社会党系の活動家だったので、その情報もその筋からのものだろうと推測できたのだが、今、そんなことを言う人はひとりもいない。10年ほど前には、遺伝子組み換えというバイオテクノロジーがほぼ確立されて、ダイズやとうもろこしに応用されていったが、やはり、ある一派が市民活動レベルではあるが、生命に有害な可能性があるとして反対運動を巻き起こしていった。
昨今、代替エネルギーの原料として穀物が引き合いに出され始め、世界的に需給が逼迫してきた。すでに、遺伝子組み換えが悪という構図は消え去りかけている。フィリピンでは、コメの需給率100パーセントを目指し、遺伝子組み換え種子を積極的に栽培に生かしはじめている。
これから10年後、わが国でも豆腐や納豆の原料摘要欄から、「遺伝子組み換え原料うんぬん」の表記が消えていることであろうことは容易に想像が付く。そうしなければ、食糧需給に大穴が開くことになるからだ。案ずるより産むが易しである。
そういえば、あのときのおやじ、今でもカップヌードルが石油からできてると思ってるんだろうか?
