失敗を自ら認められない組織は成長しない。それどころか、同格の別組織にその失敗を指摘され、諌められる形となってしまった。そんないい例の話。事業を推進し、実行した本人たちが一番わかっているはずなのに、その失敗を対外的に認めようとしない。官・民問わずわが国ではよくある話のようである。
諫早湾干拓は、確かにいい例である。しかし、公共事業だけとってもこうした例は多々あることを我々は知っておいた方がいい。
諫早湾干拓、「失敗百選」に 文科省の外郭団体選定
2007年11月20日17時04分(朝日新聞サイト)
国営諫早湾干拓事業(長崎)は、科学技術分野の歴史で重要な事故・失敗例として、文部科学省の外郭団体の科学技術振興機構(JST)がまとめた「失敗百選」に選ばれている。
JSTは、失敗から得られた知識や教訓を後世に生かすことを目的に「失敗知識データベース」を作成、インターネットで公開している。失敗百選は、そのなかでも特に「典型的な失敗例」とされる。
諫早については「ノリを始めとする漁獲高の減少など、水産業振興の大きな妨げにもなっている」と干拓による漁業被害を挙げ、「走り出したら止まらない公共事業という国民的批判と不信を生み出した」と指摘。諫早湾を分断した干拓堤防や調整池からの排水、干潟の消失などが原因と分析している。
さらに、将来のための教訓として、「国はある時期に実施決定した公共事業であっても、社会経済条件の変化について的確に再評価を行うべきである」とまとめた。
こうした評価について、農水省諫早湾干拓事務所は「農業面や防災面では高い評価を受けている」と反論する。
諫早のほかに失敗百選入りしたのは、タイタニック号の沈没(1912年)、日航ジャンボ機墜落事故(1985年)、スペースシャトル・コロンビア号の帰還失敗(2003年)など。
JSTの前身は科学技術振興事業団。失敗知識データベースは、5人の大学教授でつくる推進委員会(委員長=畑村洋太郎・東大名誉教授)が取り上げる事例を決定し、その指示を受けて専門の研究者らが執筆する。1136件の概要や経過、原因、死傷者数、社会的影響などが記載され、昨年度は国内外から約450万回の閲覧があった。