思索に耽る苦行の軌跡

――もしかすると……物体が存在するとその内部に特異点が隠されているのかも知れぬ……特異点を覆ひ包む形でしか《もの》皆全て存在出来ないとしたなら……因果律も自同律も絶えず破綻の危機に瀕してゐるのかもしれぬ……自同律の不快……これは《存在》の罠でもあり…《存在》を《存在》たらしめてゐる秘儀なのかも知れぬ……すると……中有へ出立した《死者》は自身を徹底的に……ふっ……それは底無しに違ひないが……弾劾する宿命を負ってゐるに違ひない……弾劾に弾劾を重ねた末に残った自身の残滓を更に鞭打って弾劾する宿命……此の世に《存在》してしまった《もの》全てが負ってゐるこの宿命を貫徹した《もの》のみ……未だ未出現の《存在》に出現を促す権利……其処に《魂》若しくは《精神》のRelay(リレー)が辛ふじて辛ふじて行はれるか? ……ふっ……《魂》若しくは《精神》のRelayは……しかし……必ず行はなければならぬのかもしれぬ……此の世にひと度《存在》してしまった《もの》は……先達の《魂》若しくは《精神》を受け取った上で辛ふじて……《存在》に堪へられるのかもしれぬ……未知なる《もの》への変容……此の世に存在してしまった《もの》は《死》を受容し……未来に出現する《もの》へその席を譲る……其処に因縁は生じるのか? ……《死》によって因果律は破綻するのか? ……しかし……破綻した因縁は再び別の此の世に出現してしまった《もの》に託されるのか? さうだとして……ふっ……不連続の連続性……矛盾は《存在》した《もの》には必然のものだが……矛盾を抱へ込まざるを得ない《存在》してしまった《もの》は……しかし……自己を責め苛むことで……もしかすると馬鹿げた自己慰撫をしてゐるだけかもしれぬではないか……自同律の不快と言ひながら実際のところ其処でこの上ない自己愛撫といふ悦楽を味はってゐるのかもしれぬ……自虐が快楽へと変容してしまったならば……最早その自己内部に引き籠って外界に一歩たりとも出ない……自己憎悪が最高の自慰行為……か……



――うぅぅぅぅあぁぁぁぁああああ〜〜



――彼の人も今中有で自己に対して弾劾に弾劾を重ねて倒錯した至高の悦楽の境地にゐるのか……この悦楽はまた……地獄の責苦に等しいか……極限……苦悩と快楽の堺に……《死者》は辛ふじて立し……其処で杳として知れぬ漠たる自身といふ茫洋なる面と全的に対峙するか……自身が自身によって滅び尽くされる懊悩を味はひ尽くす以外……《私》は《私》を脱皮出来ぬかもしれぬ……《私》以外の何かへの変容……幽冥への出立……は……《私》が《私》であってはならぬのか……解脱……か……《死》してのみ《私》が《私》を超克するこの《存在》め! ……《存在》よ……呪はれるがよい! ……へっ……へっへっへっ……《私》が《私》を呪縛だけじゃないか……だが……しかし……《存在》する《もの》……この《私》から遁れられぬ! 



――うぅぅぅぅあぁぁぁぁああああ〜〜



――それでも……《私》は《私》を超克しようともがき続ける……しか……ない……へっ……何とも不自由極まりない! ……そして《死》からも逃れられぬ……《存在》とは何と呪はれた《存在》なのだ! へっ! と自身の《存在》を嘲笑ったところで矢張り《私》は《存在》する……くっくっくっ……そもそも《私》は《私》であることを望んでゐるのか? ……《私》……この面妖なる《もの》……ちぇっ……心臓は相変はらず鼓動してゐるぜ! 



……ふむ……常に伸縮せずにはゐられぬ……否……鼓動するように命ぜられてゐるこの心臓は……真の自身を知ってゐるのか……へっ……真の自身て何だ? まあよい……しかし絶えずその姿を変容させるこの心臓は……その鼓動を停止した時に初めて己の何たるかを知るのか……それまでは絶えざる変容を強要される……哀れなる哉……吾が心の臓! ……動くことがそもそも《私》を《私》ならざる《もの》へと動かす原動力ではないか……若しくは時が移ろふことがそもそも《私》を《私》ならざる《もの》へと誘ふ魔手なのではないか……ちぇっ……下らぬ……そもそも《私》が《私》と呼んでゐる《もの》は《私》にはなり得るか……《私》は無数の異形の《私》の《存在》を前にして《私》に戸惑ふ……か……《私》の異形は無数に《存在》しやがる……けっけっけつ……例へばこの《私》が意識すればたちどころに全て実現する魔法を手にしたとして……満ち足りるのは最初の一瞬だけに決まってる……寝てゐるだけで全てが実現してしまふ世界なんぞ直に飽き飽きするに決まってゐる……謂はば《私》は《脳体》へと変容してしまふのさ……それは植物状態の人間と何も変はらぬ……すると《私》は《私》の《存在》を滅することを願ひたちどころに此の世から消える……意識の窮極の願ひは自ら滅することに行き着くのが道理さ……しかし……《脳体》は《存在》か……



(以降に続く)















2008 02/24 03:46:19 | 哲学 文学 科学 宗教 | Comment(0)
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