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フラクタル的に見ても地球と脳は自己相似を成してをり、仮に脳裡に浮かぶ仮象の一つ一つがこの世に存在する物の象徴としたならば、脳裡に浮かぶ仮象は異形の我の仮の姿なのかもしれない。深海に棲む生物の異様な姿は漆黒の闇の中で自らの姿を妄想し、棲む環境がさうさせたに違ひない。私の脳裡に浮かぶ仮象の海の奥底には私の知らない異形の私が必ず棲息してゐる筈である。中にはぬらりと仮象に現れてその異形を見せる奴もゐるだらうが、多分奴らの殆どは私が死んでもその姿を現さずに闇の中でひっそりとその登場の機会を窺ってゐる筈だ。
――お前は誰だ。
――ふっ、お前だぜ。
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