 知らず知らずのうちに きみを好きになって 知らず知らずのうちに 夢を見ていた 知らず知らずのうちに きみの名前覚えて 知らず知らずのうちに 街を歩いていた 知らず知らずのうちに きみの家を見つけて 知らず知らずのうちに 電話帳を開いた 知らず知らずのうちに 君と歩き始めて 知らず知らずのうちに 時を流れた 知らず知らずのうちに 君と暮らし始めて 知らず知らずのうちに 離れられなくなった 鍵を開けたドアの前で あかりもつけずほおづえついて 阿木耀子 知らず知らずのうちに きみをもっと好きになっていて 知らず知らずのうちに 夢も見れなくなって 知らず知らずのうちに 家を飛び出していた 知らず知らずのうちに 時の流れがとまり 知らず知らずのうちに 口づけさえ忘れ 知らず知らずのうちに きみの声さえも忘れた 知らず知らずのうちに きみと歩いた街をさまよい 知らず知らずのうちに 影さえ慕えなくなって 知らず知らずのうちに きみを思い出せなくなっていった 鍵を締めた部屋の隅で あかりもつけず壁にもたれて 煙草に火をつけ たゆたう紫煙のなかで ぽっかりあいた 胸をまさぐるように 切なさと遣る瀬無さと 虚しさと侘びしさを 肩をすぼめながら 刻みつける 遅すぎたなにもかも こおりついた恋のかけら 醒めたからだに突き刺さる
|