いまさらながらか、いまだからなのか、往年の塗色の電車たちがおおはやりだそうな。確かに、覚えている世代にとっては、懐かしの極みである。修学旅行、受験旅行・・・いろいろな場面が蘇る。あまり知られてはいないが、電車の寿命は意外に永い。JRが発足した後、元の国鉄時代の塗装から、JRイメージカラーなどに次々と衣替えしても、走り続けてきた車両は多く現存する。一部鉄オタ族は、そんな中、往年の国鉄カラーのまま走り続ける数少ない車両たちを追いかけ続けた。そして今、まだ、ブームというほどではないが、その希少性を社会が認め始めたようだ。
(写真は489系電車国鉄色の、急行能登)
国鉄の色再登場、団塊世代に郷愁…ローカル線で増収も
JRや私鉄で、引退が迫った車両を国鉄時代の色に塗り直す〈リバイバル・カラー〉が流行している。
往時を懐かしむ団塊世代の乗客などに好評で、テレビドラマや映画の撮影にも引っ張りだこ。地方まで足を運ぶ鉄道ファンもおり、ローカル線の増収に一役買っている。
海沿いの線路をのんびりと走るツートンカラーの車両。1980年代の福井県小浜市を舞台にしたNHK連続ドラマ「ちりとてちん」には、JR小浜線を走る2両編成のディーゼル車が登場する。クリーム色のボディーに窓周りなどを赤くした配色は、国鉄時代の急行の塗装だ。
この車両はJR西日本金沢支社の所属。3年前に60年代前半の製造時の色に再塗装され、各線に〈出張運転〉して人気を集めている。同支社では、60年代製造の大糸線(新潟、長野県)のディーゼル車や北陸線の一部電車もデビュー時の色に化粧直しして運転中で、休日には東京や大阪からもファンが訪れているという。
20年前の国鉄分割・民営化で誕生したJR7社は、独自性を打ち出すため車体をカラフルに塗りかえたが、近年の昭和懐古ブームを受け、国鉄時代の色を復活させている。
民営化後に塗装を社のイメージカラーの水色に統一したJR四国も、2年前に2両を再塗装して「懐かしの急行ツアー」を企画。今月20、21両日も、急行「よしの川」「むろと」を徳島県の徳島線などで臨時運転する。
こうした懐古色は私鉄にも波及し、長野電鉄(長野県)は特急の色を昭和30〜50年代に戻し、新旧カラーの車両のおもちゃや記念品を売り出している。
JR西日本広報部は「若いファンにはレトロな色がかえって新鮮に映るよう。旅に出かけるきっかけになれば」と期待する。
(2007年10月9日15時0分 読売新聞)