王子製紙経営陣が、アナリスト向け説明会で公表した経営方針の中に、本邦国内での生産縮小に関する内容があったとのこと。こうして、どこかの製紙工場の灯が消えるということだ。
海外への生産拠点移転は、単に産業空洞化を招くというだけでなく、場合によっては、水質・大気の汚染などの公害輸出にもつながることを忘れてはならない。国内に工場があるうちは、内部にも厳しい監視の目が届くので、利益追求ばかりしていられない。しかし、一旦海外に、それも、途上国に出てしまえば、環境教育をほとんど受けていない現地の従業員には何も見えない中で、粛々と利益一辺倒の経営がなされることのなるだろう。本邦国内からは雇用と共にではあるが公害の元凶も消えるわけだから、その工場があった地域では歓迎ムードさえ漂うであろう。
今回の方針決定をなした経営陣は、優秀な経営者ではあっても企業家ではありえない。企業家たる者、「木を見て森を見ず」であってはならない。
王子製紙 国内生産縮小か 中国から逆輸入検討
2007年11月23日01時14分(朝日新聞サイト)
製紙最大手の王子製紙は22日、中国で2010年に稼働する新工場から印刷用紙を逆輸入し、その分、国内生産を縮小する可能性を明らかにした。東南アジアでの一貫工場新設も検討する。原燃料の高騰に苦しむ同社は、国境を超えた生産体制の効率化を急ぐ。
同日のアナリスト向け経営説明会で、篠田和久社長が「市況次第では中国で造った紙を輸入する。(これを利用して国内設備の一部停止を探る考え方は)全く正しい」と話した。
王子は中国・上海近郊に約2200億円を投じ、年産80万トンの新工場を今月中に着工、10年に一部を稼働させる。生産性が高く、市況次第では日本へ逆輸入しても採算が合うという。
篠田社長は説明会後、主原料の木材チップを入手できる東南アジアでの一貫工場建設に意欲を示した。タイが最有力で環境が整えば10年代半ばにも着手する。国内で停止した設備を新工場で活用することも検討する。
王子は20日に三菱製紙との提携を発表し、伝票などに使うノーカーボン紙の国内生産の集約と、タイでの感熱記録紙の加工工程の合弁化に踏み切ることを明らかにしたばかり。昨夏に失敗した北越製紙への敵対的買収は、国内生産の集約も狙いの一つだった。