米サブプライム基金頓挫は当然の結果。
市場は、問題先送りを望んではいない。
該当金融機関は、損失をあきらかにするとともに、ただちに
償却せよ。
底なしサブプライム:米大手銀、基金構想断念 「次の一手」市場注視
【ワシントン斉藤信宏】低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)への対応を迫られていた米政府の呼び掛けで、米大手銀行が打ち出した「資産買い取り基金」は、構想発表からわずか2カ月半であっさり頓挫した。90年代に日本で用いられた手法にも似た損失先送りのスキームは、市場から歓迎されず、基金の出し手も集まらないまま計画倒れとなり、米政府が付け焼き刃の対策を民間に丸投げしたという印象だけが
残った。
基金構想は米財務省のポールソン長官が中心になって取りまとめた。
構想を発表した10月中旬は、夏の金融危機をひとまず脱して株価にも上昇基調が戻った時期だったが、銀行の連結対象外になっている投資目的会社(SIV)が大きな損失を抱えていることは誰の目にも明らかで、いずれ米国経済にとって重い足かせになると見られていた。
米財務省の取った手立ては、「一時的に買い取って、いずれ値が戻ったところで売る」という手法で、かつての日本の不良債権処理に近いものだった。日本の大手行グループが、こぞって基金への出資を断ったのも、かつての手痛い経験があったからだろう。米国でも大半の金融機関は、基金に頼らず自らの力で不良資産の処理に動いた。
既にシティグループは最大110億ドルの評価損を公表、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁から75億ドルの出資を受け入れると発表した。今月中旬にはSIVの連結対象化を公表。
10〜12月期決算で巨額損失を計上し、さらなる出資者を探す
方針と見られる。欧州では英HSBCが同じくSIVを連結対象に加えると発表。いち早くサブプライムローン問題に伴う信用不安の解消に向けて動き始めている。
ただ、すべての金融機関が産油国や新興国からの出資を期待できるわけではない。今後、価格下落の激しい証券化商品を抱えた中小金融機関の中には資金繰りに窮するところが出てくると見られる。
その際、米政府が対応を誤れば再び金融危機の懸念が強まることになる。
米政府は今回の基金とは異なる抜本的な対策を取れるのか。
市場がその対応を注視している。
(毎日新聞サイト)