年末までの食品偽装事件が沈静化したかと思ったら、今度は、製紙各社による古紙配合再生紙の古紙率偽装が表面化。良心ある内部告発による問題表面化という構図は食品偽装のときと変わらない。 ところで、今回の製法偽装の原因とはいったいなんだろう。今のところ、公表のあった各社によると、技術力不足だというが本当だろうか。では、どのような技術があれば、この問題をクリアできるのか。 製紙産業は装置産業の名だたるものであるが、機械的技術の改良でのりきれるのか、それとも人的技能が求められるのか、定かではない。そこで、次のような仮説を立ててみた。 製紙は、その工程上、抄紙機と呼ばれるプラントでの生産力にほとんどを依存する。水に溶けたパルプ繊維を急速に乾燥させて紙の形を作り上げる工程である。紙は微細なパルプ繊維が絡み合ってその形を成す。再生パルプは、文字通り、一度紙になったパルプ繊維をもう一度分解したものである。したがって、バージンパルプに比して繊維の長さが短く、紙にしたときの強度が弱い。物質は無限循環などしないのである。 抄紙機からは、秒速3〜5mほどのスピードで紙がはきだされ、それを大きなロール状に仕上げていくのだが、このときに吐き出す側と巻き取る側に微妙な速度変化が生じると紙は簡単に切れる。そのたびに工程は一時中断され、生産単位が落ち込む。繊維強度の弱い再生紙はことのほか切れやすい。 技術不足というものがこの点にあるとすれば、単純なようで、解決はよほど難しい。最も簡単な解決法は、抄紙スピードを下げてやればいいのだが、そうすると利益の逸失につながる。または、再生紙製品の価格が上昇する可能性もある。 再生紙の更なる品質向上、普及のためにはわれわれ消費者の認識の変革−再生紙だからといって価格が安価でなければ、という意識の変革−も必要なのではないか。需要家側が、価格上昇しても再生紙という品質を求めるとすれば、おのずとして、今回の問題は解決するのである。製紙各社はそうした観点も考慮して、消費側への理解を求める行動を起こすことも必要なのではないか。
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