日本時間で昨夜突如発表された米FF金利の0.75%下げ。
株式市場ではあまり、サプライズとしては捉えられなかったようだが為替市場には即効性があったようで、大幅な円安に振れた。
今後の焦点は、日欧の協調利下げともいえる、ECBによる利下げや日銀による利下げがあるかどうかに移ってくる。
米FRB、0.75%利下げ 世界株安で緊急措置
米連邦準備制度理事会(FRB)は22日、深刻化する低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題に対応するため、緊急に政策金利を0.75%幅引き下げ、年3.50%に緩和したと発表した。
米国発のサブプライム危機が世界市場に急ピッチで波及。アジアも含め世界同時株安が本格化したため、大幅な利下げで潤沢な資金を市場に供給し、先行き不透明感による金融不安を防ぐ狙いだ。
金融政策を決める臨時の公開市場委員会(FOMC)を開き、政策金利のフェデラルファンド(FF)レートの誘導目標を緩和した。緊急利下げは米同時多発テロ直後の01年9月以来で、FFレートを主要政策金利にしてきた90年以降では最大の下げ幅となる。
声明では「経済見通しは弱くなっており、成長の下ぶれ懸念が増している。金融市場の状況は悪化しており、企業や個人への貸し出しは一層厳しくなっている。住宅市場の縮小も続いている」と危機感を表明。「成長へのリスクは残っており、必要に応じタイムリーに行動する」と、今月29、30日の定期FOMCでも緩和を検討する考えだ。
米大手金融機関は1月中旬までに発表した決算でサブプライム関連の巨額損失を相次いで計上。累計損失は1000億ドル(約11兆円)を超えているが、さらに数千億ドルに膨らむ危険性も金融当局者から示されていた。
サブプライム危機が表面化した昨年8月以来、4回にわたる計1.75ポイントの大幅緩和で、米国発の景気後退や世界同時株安を阻止する姿勢を鮮明にした。資金繰りに困った金融機関への大量の資金供給を続ける方針だ。
(朝日新聞サイト)
気をもむ輸出企業 同時株安、利下げどうなる
米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した世界同時株安を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は22日午前(日本時間同日夜)、緊急利下げに踏み切った。先進国に加えて中国やインドなど新興国にも広がる同時株安は、外需に支えられた輸出型企業が引っ張る日本経済にとって、米景気減速に続く新たな懸念材料に浮上している。米利下げがその流れを変えるか、注目される。
自動車業界関係者は今回の米緊急利下げについて、「長い目でみると自動車、電機業界などの輸出型産業では業績向上が期待できる」と利点を強調。その一方で「日米金利差が縮まり、短期的には為替が円高にふれやすくなる可能性がある」とも指摘する。日本企業にとっては、金利低下の景気下支え効果に伴う輸出増と、円高で生じるマイナス面とのはざまで、動向を注視する事態がしばらく続くとの解説だ。
三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長は「全般的に不安定な世界経済が安定に向かうことを期待する」と緊急利下げを歓迎したうえで、「日本政府、日銀も利下げの影響を注視しながら日本経済の安定化のため、適宜、適切な政策判断を行い、実行してほしい」と注文する。大手商社幹部は「想像以上の大幅利下げだが、カンフル剤になるか見守りたい」。
日本企業にとって、同時株安の悪影響をどう克服するかが当面の課題だ。
日本を代表する優良銘柄のトヨタ自動車。22日の株価は前日終値から380円下げ、株式時価総額は1日で1兆3700億円余り減って17兆6千億円余りにしぼんだ。30兆円を突破した昨年2月と比べて「半減」すら視野に入ってきた。
トヨタなど自動車メーカーにとって、中印などの新興国市場は北米とともに、前年比マイナス基調が続く国内を補う「頼みの綱」だ。中国での新車販売はトヨタが前年比7割増、ホンダや日産自動車も同2割以上の伸びで推移。各社は先行きの需要拡大を見込み、インドを含めて新工場建設など設備投資を加速させている。
そんな矢先の世界同時株安は、市場が冷や水を浴びせた格好だ。「株安が新興国の消費に影響することはないだろう」(自動車大手)としつつ、「株価下落の長期化が心配」(別の自動車大手)と気をもむ。
電機メーカーでは強気と弱気が交錯する。日立製作所の古川一夫社長は「中国をはじめとするアジア経済は高い成長力を維持しており、一喜一憂する必要はない」。ソニーは、エレクトロニクス製品の売り上げで中国や中南米などが約3割を占め、二けた成長を続けている。「世界的に株安が進むと手元資金が減る人も出てくる。販売の冷え込みが心配」という。
勝俣恒久・東京電力社長は22日の記者会見で、「株価の下落は実体経済(に基づく)というより心理的なものが大きい。先行きが怪しいから投資を控えようか、という企業マインドの低下が重なることが一番危険では」と指摘していた。
市場の変調は、経営者の心理だけでなく、個人消費も冷え込ませかねない。昨年12月の小売業界の統計では、百貨店、スーパー、コンビニの3業態とも売り上げが前年同月を下回った。
2カ月ぶりのマイナスだった百貨店業界は、海外ブランドの宝飾品や時計など高額品の動きが昨年末から目立って鈍くなっている。各社が声をそろえて指摘するのが、個人が保有する株式の価格下落に伴う「逆資産効果」だ。「家計を支える主婦も財布のひもを固くしている」(大手百貨店幹部)という。
(朝日新聞サイト)