ウルトラマン第二十話「恐怖のルート87」です。
たいへん記憶に残っているお話でした。
伊豆大室山公園のある深夜、園内の動物達が騒ぎ出しました。 何かにおびえているように、落ち着かないのです。
そしてその時山頂が光ったのでした。
この異変は科学特捜隊にも報告され、ムラマツ隊長、ハヤタ、アラシの三人が大室山公園に向かいました。
またその頃科学特捜隊の基地にいたアキコの前に一人の小学生ぐらいの少年が現れました。
「ホシノ君のお友達?」と訝るアキコに少年はこう言ったのです。
「大室山公園の高原竜ヒドラが暴れるよ。早くしないと大変なことになるよ」と。 そう言うと少年は部屋の外に出ていましたが、すぐ後に入ってきたイデは誰にも会っていなかったのでした。 イデが警備室に電話すると、やはり誰も通っていないというのです。
アキコはムラマツにこの事を報告しました。
ムラマツが公園の警備員にこのことを話すと警備員は笑いました。
「大室山公園には確かに『高原竜ヒドラ』という石像はありますが、当然これが暴れだすわけはない」と言うのです。
ただこのヒドラはデザインを全国の子供達から募集したのでした。 そして当選したのは、東京のアケボノホームという養護施設に住むムトウアキラという小学生だったのです。
ムラマツはこの施設にイデ、アキコの両隊員を向かわせました。
二人はアケボノホームでムトウアキラ少年の他の怪獣の絵を見ます。 ただアキラ少年は、半年前の夏休みに、好きな山鳥を見に山へ出かけたのですが、その帰り、国道87号線でトラックにひき逃げされ亡くなっていたのです。 そのうえ犯人もまだ捕まっていないということでした。
部屋の中にはアキラ少年の遺影が飾ってありましたが、それを見たアキコは驚きます。 それは基地を訪ねてきたあの不思議な少年だったのです。
その夜大室山を監視していた、科学特捜隊の眼前でまた大室山が光ります。
そして山肌が割れ、中から一匹の怪獣が飛び出しました。
怪獣は本物のヒドラだったのでした。
科学特捜隊が攻撃すると、ヒドラはどこかへ飛んでいきました。 ヒドラは飛翔能力もあったのです。
そしてヒドラは国道87号線に現れ、そこを走行するトラックを遅い始めました。
科学特捜隊は二機のビートルで出動しましたが、ハヤタもアラシも妙に引っかかるものがありました。 ヒドラとアキラ少年のひき逃げ事件は何か関係があるのでは?と思ったのです。
しかしムラマツは二人のそのような考えをたしなめるのでした。
二機のビートルはヒドラを攻撃しますが、ハヤタとアラシの乗った小型ビートルの方がヒドラに撃墜されてしまいます。 アラシは無事でしたが、ハヤタが腕に負傷しました。
ハヤタは救難所で手当てを受けます。
アラシは単独で、ガソリンをたっぷり積んだタンクローリーに乗り、ヒドラの方へ向かいました。 ヒドラが襲ってきて、タンクローリーを捕まえました。 アラシはその前に飛び降りて、ヒドラが両手で掴んでいるタンクローリーをスパイダーで破壊しました。
この攻撃によりヒドラは負傷しますが、倒すまでには到らず逆にアラシを追ってきました。 アラシ、危ない!
このアラシの危機に、ハヤタは救難所を抜け出してウルトラマンに変身しました。
ウルトラマンがヒドラの眼前に立ちふさがりました。
ヒドラは鋭い嘴と前足でウルトラマンに襲いかかります。
そのパワーあふれる攻撃にウルトラマンも苦戦しますが、チョップで反撃します。
ウルトラマンがスペシウム光線を発射すると、ヒドラは空へ飛び上がりこれをかわしました。 すかさずウルトラマンが二の矢を放とうと構えました。
その時ビートルの中のアキコには見えたのです。 ヒドラの背にまたがっているアキラ少年の姿が・・・。
「ウルトラマン、ヒドラを殺してはいけないわ」アキコは言いました。
するとウルトラマンもスペシウム光線を撃つのをやめたのです。 ウルトラマンはヒドラを逃がすと、自分も空に帰っていきました。
「ウルトラマン、ありがとう」アキコはそうつぶやきました。
ヒドラが去ったことで事件は解決しました。
またアキラ少年をひき逃げした犯人も自首して、警察に逮捕されました。
ムラマツ隊長以下、科学特捜隊員は改めてヒドラの石像を見上げ、自動車事故で不幸な死を遂げた少年達の守り神であったのかもしれないと感慨深く考えるのでした。
またアキコだけに、アキラ少年が見えたということについては 「純真ということでしょう」と彼女に言われてしまいました。
そしてアキラ少年の魂も天国へ行ったことでしょう。
ただけっこう無実の人が命を落としているのですがね・・・。 本当はあまりよくないのかな?
ヒドラも本当にアキラ少年の魂が乗り移ったような、鬼気迫る迫力のようなものがありましたね。 そしてこのヒドラの造型は素晴らしいですが、伊豆シャボテン公園には本当にこの石像があります。
ラスト前のヒドラにアキラ少年がまたがっているシーンでは「ウルトラQ」の「鳥を見た!」で使われたBGMが流れましたね。 これがなかなか効いていました・・・。
というか「鳥を見た!」との共通点や関連性があるみたいです。
少年と怪鳥の交流。 こちらはやはり少年の霊が怪獣に乗り移った?
この少年は確かにもう亡くなっているのでした。 亡くなった少年が現れるというのは同じく金城哲夫作品の「ウルトラセブン」の「ノンマルトの使者」に通じるものがありますね。
そして本作品も金城哲夫氏が脚本を担当されていらっしゃいます。
脚本 金城哲夫 特殊技術 高野宏一 監督 樋口祐三 撮影(本編)内海正治 (特撮)佐川和夫
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