ウルトラマン第三十話「まぼろしの雪山」です。
都会から遠く離れた山奥にあるスキー場で事件は起こりました。
そしてこの山奥にあるスキー場は開設されたばかりでしたが、雪の量が多いので人気があり、大勢のスキーヤーで賑わっていました。
そのスキー場で一人の少女が遊んでいましたが、一人の遭難者が担架で運ばれてくるのを観ると、そちらの方へ注意を払いました。
遭難者は地元の猟師の町村という者で、飯田山のふもとで倒れていたのでした。 ロッジで介抱された、町村はようやく気がつくと遭難の理由を話し始めました。
町村は何と伝説の怪獣ウーにあったというのです。
猟師の町村は熊の母子を追っているうちに、鬼門の飯田山に迷い込んでいました。 そしてまた彼はもう三日も獲物を追っていたので、気があせっていました。 とうとう雪の中に動く物を見つけて、彼は喜びました。
でもそれは、うさぎを抱えたゆきんこと呼ばれていた、先ほどのスキー場で一人で遊んでいた少女だったのです。
ゆきんこはこの時はともかくとして、度々猟師達の仕事の邪魔をしていたので、町村は腹が立ちました。 獲物に追いつかないイライラ、八つ当たりのようなものもあったのでしょうが、彼は銃を一発空に向けて派なったのでした。
ゆきんこはこれに驚いてウサギを放し、雪の中を逃げ出しました。 追いかける町村。
ゆきんこが雪の中に倒れ、飯田山の方向に向かって叫びました。 「ウーッ。ウーよう、助けてぇ。ウーッ、助けてぇ。ウーッ、ウーようっ!」
すると山の向こうに真っ白な毛に覆われた大きな怪獣が現れたのです。
怪獣はその目を細め、やさしくゆきんこに手を差し伸べたのでした。
町村は 「あれは間違いなく昔ばあ様から聞いた伝説の怪獣ウーだ」と言い張ります。
人々はそれでもなかなかこの話を本当だとは思えなかったのですが、スキー客達も大勢いるので、科学特捜隊に調査を依頼することにしました。 この話をロッジの外でゆきんこが聞いていました。
そして科学特捜隊のハヤタ、アラシ、イデの三人がビートルで調査に向かったのです。
その頃ゆきんこは村の子供達が作った落とし穴に落とされていじめられていました。 子供達の中に先日ウーのために遭難した猟師町村の弟がいました。
彼は上空を通過するビートルを見てゆきんこに 「科学特捜隊が、ウーを退治するために来たんだ!」と告げます。
ゆきんこも不安そうに空を見上げるのでした。
ハヤタ、アラシ、イデの三人は村の世話役秋田から、事情を説明したもらいました。
まぼろしの雪山と言われている飯田山は夏でも雪が消えない、気象学者もサジを投げたミステリーサークルなのでした。 そこにウーがいるというのです。 この光景をまたゆきんこが見ていました。
ハヤタ達三人は、スキーを駆って飯田山へ向かいますが、なかなか目的地へ着きません。
誰かが標識を細工して三人を妨害しているようです。
三人は今度は山の頂上を目標に進もうとしましたが、ハヤタが穴に足を引っ掛けてねんざをしてしまいました。
現場から逃げるゆきんこをイデが追いかけて、捕まえました。
イデが 「なぜこのようなことをするんだ」と怒ると ゆきんこは 「ウーを殺しに来た」と逆に食って掛かりました。
「ウーは怪獣じゃないわ!」と叫ぶとゆきんこは雪をイデにぶつけて、逃げていきました。
ハヤタが負傷したため、ロッジに戻った三人は秋田にゆきんこの話を聞きました。
15年前のある大雪の夜、この村に行き倒れの母娘がいた。 飢えと寒さで母親はもう亡くなっていたが、まだ赤ん坊だった娘は元気だった。
でもそのことが却って村人から雪女の娘と恐れられることになり、誰も引き取り手がいなかったのです。
ところが一人暮らしをしていた炭焼きの老人がゆきんこを引き取って育てました。 でもその老人も二年前に亡くなり、今はまた一人暮らしだというのでした。
事情がわからぬまま、また今度のウーの騒ぎで村の人かたはますます嫌われてしまったのです。
イデはそのような彼女に同情しました。 彼もまた早くに母を亡くしていたのです。
そこへ突然ウーがスキー場にまで現れたのです。
スキー場は大騒ぎになり、イデとアラシが攻撃しようとします。
そこへゆきんこが立ちふさがりました。
ゆきんこはまたウーに向かって叫びました。 「ウーッ。乱暴してはだめよ。人間に乱暴を働くと仲間に入れてもらえなくなるわ。さあ山へお帰り。私のことは心配しなくてもいいの。早く山へお帰り」 ウーはゆきんこの声を聞くと肩を落としたような姿で山の方へ帰っていきました。
しかし先日村の子供達がゆきんこを落とした穴に、村の老人が落ちた後そのまま眠り込んでしまい凍死するという事件が起こってしまいました。
村人達はこれはゆきんこのせいだと誤解して、ゆきんこを追い出すのだと言い合います。
スキー客は今回のウー騒ぎで、われ先にと帰り始めました。
村人達の懇願を受けて、イデとアラシはウー攻撃のためにビートルで出撃します。
ゆきんこは村人達に追いかけられていました。
イデは複雑でした。 「ゆきんこの母親が、ウーに乗り移っているのではないか」とさえ言い始めました。
アラシがそのようなイデを叱咤します。
ウーを退治することは本部命令だったのです。 感傷に浸っている場合ではありません。
イデもやっと気を取り直します。
追われるゆきんこもついにウーを再び呼びました。
谷間にウーが現れ、ビートルが攻撃を開始しました。
ウーは低空飛行で近づくビートルを叩き落すと、スキー場の方に現れました。 そしてウーはゆきんこの仇のつもりかスキー場の破壊行為を開始しました。
人々が逃げる中、部屋に一人で休んでいたハヤタがついにウルトラマンに変身しました。
眼前に現れたウルトラマンを見て、さらに怒り狂うウー!
両者は雪の中で、激しく闘います。
ゆきんこは追われ続けついに、雪の中に倒れ伏すのでした。
そして彼女の叫び声が山の中に響き渡りました。
ウルトラマンはしだいにウーを追い詰めていました。 スペシウム光線を発射しようとするウルトラマン。
がそこへ 「ウーッ。ウーよう・・・」 とゆきんこの声が聞こえてきたのです。
するとウーは答えるように叫ぶと、その姿は幻のように消えていきました。
雪の中に倒れているゆきんこ。 その体はぴくりとも動きません。 側ではウサギが遊んでいました。
ウーに叩き落されたビートルのアラシとイデはハヤタに介抱されて、気がつきました。
ハヤタ 「ウーは幻のように消え、ゆきんこも山へ帰ったそうだ」 イデ 「俺はこんなことを考えていたんだ。ゆきんこっていう女の子は実際にはいなかったんじゃないかって。俺達が会っていたのは雪山の幻だったんじゃないのかってね」 アラシ 「そうかもしれん。可愛い娘だった。あんな清らかな心の持ち主には二度と再び会うことはないような気がするな・・・」
雪山という大自然はきょうも人間界を見つめているのです。
けっこう長くなってしまいましたね。 登場した怪獣は一匹ですが、本当に深い作品でした。
ラストのハヤタ、イデ、アラシの三隊員のセリフは劇中のままです。
事件の舞台であり、題名でもある「雪山」が幻想的な雰囲気を醸し出しているのでしょう。
そしてゆきんこ・・・。 ラストの科学特捜隊員達の言葉にもある、幻のような汚れのない存在でした。
「鳥を見た!」「育てよカメ」「恐怖のルート87」「怪獣殿下」「恐怖の宇宙線」「ノンマルトの使者」というような少年を主人公の作品は度々出てくるウルトラですが、少女が主人公というのは珍しいですね。 そして彼女もまた心に残る登場人物でしたね。
最後はハッピーエンドであったのか、悲劇であったのでしょうか・・・。 そしてゆきんこは死んだのでしょうか・・・。
いえゆきんこは山に帰ったのです。
いえそうでもありません。 ゆきんこは始めからいなかったのでしたよね。
ウーのキャラもなかなかよかったです。 力技ではウルトラマンには勝てないと思いましたけど・・・。
作品中では、ウーの正体は明らかにはされませんでしたが、それもまたいいでしょう。
科学特捜隊の三人がスキーを滑るシーンはやはり吹き替えだそうです。 ただ隊員服はそのまま滑走する人に貸したそうです。
そしてこの作品、ハヤタ、アラシ、イデの三隊員だけで、ムラマツ隊長とアキコ隊員が登場しません。 この意味でも異色作品であるのかもしれないですね。
脚本 金城哲夫 特殊技術 高野宏一 監督 樋口祐三 撮影(本編)福沢康道 (特撮)佐川和夫
ゲスト 富永幸子(ゆきんこ) 近衛敏明(秋田)
これもやはり金城作品でした。
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