かつて題名のなかったBLOG

2006年 11月 の記事 (5件)

ショート・ショートですが、
また結末までは書き切れませんでした。
前・中・後編の3回ということでひとつ。

ちなみに前編はこちらです。
では、中編をどうぞ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「脅かしてしまってごめんなさい。
 私、きのせいです。」

思い切って目を開けると、
そこには、手のひらぐらいの大きさの
背中に羽が生えた女の子が空中に浮かんでいた。


数刻後、
私は、泉のほとりである人がここを訪れるのを待っていた。
私の頭の後ろに隠れている木の精、ドライアードに
どうしてもと頼み込まれたからだ。

彼女の頼みはこうだった。
毎日、決まった時間に馬に水を飲ませにくる青年がいる。
彼女はもう何回かそれを木の陰から見ていて、
どうやら一目惚れをしてしまったらしい。
何とかしてその青年と話をしてみたいと思うのだが、
先ほどの私のように、青年が驚いて
逃げてしまうかもしれない。
そうなったら最悪だ。
彼はもうここには来てくれないだろう。
そこで、私に代わりをして欲しい、と。


もうすぐ来るからと言われて待っていると、
遠くから馬のひづめの音が聞こえてきた。
そして、森の奥から馬に乗った人が現れた。

確かに、かっこいい青年だ。うん。
この妖精が惚れてしまったのも分かる気がする。
それに、何と言うか気品がある。
どこかの王子様と言われてもうなずけるような
高貴な雰囲気を漂わせている。この人は只者じゃない。

しかし、急に後頭部に痛みを感じたので、
私はその青年に声をかけに向かうことにした。
分かったから、髪の毛を引っ張らないで!

「やあ、珍しいな、この森で他の人に出会うなんて。」

青年が先に私に気づいてしまった。
だから髪の毛を引っ張るなって言ったのに!

「あ、こ、こんにちは!」
「あ、ごめんなさい。驚かせてしまったかな?」
「い、いえそんなことは‥‥痛ッ!」
「勝手にしゃべらないで!」
また後ろのやつに髪の毛を引っ張られた。
全く、もし毛が抜けてたらどうしてくれよう。

「素敵ですね」
「は?」
妖精が小声で変なことを言う。
「だから、『素敵ですね』って彼に言って!」
唐突に‥‥? 会話にならないんじゃないの?
分かったってば、髪の毛痛いって!

「? 何かいるのかい?」
「い、いやぁ、ちょっと虫が‥‥。
それより素敵ですねぇ。」
「え? 何が?」
やっぱり。

「いや、あなたがです。
私、ずっとあなたのことを見てたんです。」
変質者だと思われるじゃん。

「ほ、本当?
全然気が付かなかったな‥‥。
僕は馬を走らせて遊んだときは
必ずここに水を飲ませにくるように
してるんだけど、君は?」
「わ、私は薬草を摘みに来てるんです‥‥。」

その後も、私は頭の後ろにいる妖精が
ささやいてくる言葉を機械的に繰り返した。
青年と私、いや妖精はこうしてしばらくお話をした。

青年はとある諸侯の息子さんで、
お父さんの仕事にくっついてきて、
この森の近くの別荘に滞在しているのだとか。
で、休みの日になると趣味の乗馬を楽しんで、
最後に泉の水を馬に飲ませて帰るんだそうだ。

妖精の言葉は冷静さを欠いていて、
会話として噛み合っているとはとても言い難かったが、
青年は、今の環境では同年代の人間が
周りに誰もいないとのことで、
私と話ができたことをとても喜んでくれていた。

最後に私と青年は、
今後もこの泉で私と時々会って話をすることを約束して
その日は別れた。

妖精は、異常に興奮していた。
小躍りする、という言葉がぴったり当てはまるように、
凄いスピードで空中を駆け回り、
しまいには目を回していた。

私も、髪の毛が痛かったけど、
こんなに喜んでくれるのなら悪い気はしない。

私が帰ろうとすると、妖精はお礼に、
と私に大量の魔法の治療薬をくれた。
私が欲しくても、手に入れられなかったものだ。
その代わりに、また今日のように
自分の代弁役になってほしいと頼まれた。

私は聞いた。
この魔法の治療薬はまだあるのか、と。
すると、材料も製法も知っており、
簡単に作ることができるとのこと。
さすがは妖精。

こうして、私と妖精と青年の思惑は見事に一致した。

その後、私と妖精、そして青年は
何度かこの泉のほとりで楽しい時を過ごした。
妖精は青年と会話を交わすこと、
青年は私と会話を交わすことでそれぞれ心を満たし、
私は妖精からの報酬としてもらう治療薬で満足した。

青年は容姿が端正なだけでなく、
性格もとてもいい人で、頭もよくて、品もよく、
私の村には絶対に存在しないタイプの男性だった。
そして、私の村では知りえないような面白い話を
たくさん聞かせてくれた。

私は、いつしか治療薬という報酬以上に、
彼の話を聞くこと自体が楽しみになっていた。

そして、少しずつ、私だけが満足できなくなっていた。


私はこの好青年と
本当の意味での会話をすることはできない。
私がこの青年の前に立つとき、
必ず例の妖精が私の頭の後ろにくっついている。
そして、私はその木の精がささやいてくるままの言葉を
繰り返さなくてはならない。
私は、このルールを破るわけにはいかない。
それはこの関係の破綻を意味するから。

しかし、私はそれに反し、
この青年の人柄に徐々に魅かれている。
夜寝る前、仕事の合間、
ふとした時に青年の笑顔が頭に浮かぶ。
私がこう言ったら、彼はどんな反応を返すだろう。
時々そんなシミュレーションをしてみたりするが、
実際に行うことはできない。

もどかしい。非常にもどかしいのだ。
手に届く位置に、目の前にあるものが手に入らない。
向こうからは積極的に手を伸ばしてくるのに。
彼は私に好意を持ってくれている。
それは明らかなのに‥‥。


ある日、私はある決意を胸に、
もう何十回と通った森へ向かった。


(続く)
2006 11/30 18:43:14 | ショート・ショート | Comment(0)
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ええと、長らく更新をサボっておりました。

サボタージュでした。サバチーニではありませんでした。

な〜んでか? いや、なんでだろう〜?

1:ネタがなかった
2:体調が悪かった
3:頭が悪かった

正解は‥‥


越後製菓!!


‥‥ええと、久しぶりなんで壊れてみました。

いかがですか?

いや、いかがですか言われてもなあ‥‥。


というわけで久々の更新です。

上の問題の答えですか?
それはね‥‥


教えてあげないよ、ジャン!!

そろそろリハビリも終わりにしますか‥‥。

いや〜
ショートショートの続きを書こうと思ってたんですが、
体調が悪くて少しあいたら、
書く気力を失ってしまいましてね‥‥。
さらに他に書くネタもないためにズルズルと。

今日はネタが出来たんで、戻ってきました。
というかネタを作ってきたよ。


かねてから行きたかった「ヒトカラ」に行ってきたんです。
ワクワクさんに行った帰りに。

楽しいか、楽しくないかでいったら
間違いなく楽しかったですよ。
やっぱたまには大声を出さなきゃだめだね。
充実した2時間でした。



ところで、今回は自分にある課題を出していました。
いまけんさんとかシルバさんは「苦行」というと
思い出すのではないでしょうか。

なんせ1人なんで、
他人が歌ってる間に自分の歌を選ぶという行為が
できないわけですよ。
そこで、「苦行」です。
「苦行」とは、あいうえお順などのあらかじめ決めた順番で
ひたすらストイックに選曲する方法です。
元々は、選曲に迷ってしょうがないときに
仕方なくとった方法ですが、今回は
「曲名順の『あ』から順番に見て行って、
歌えそうな歌を片っ端から入れる」
と決めていきました。

また、これは
「自分にカラオケのレパートリーが何曲あるのか?」
という疑問の答えを出そうと言う試みでもあります。

皆さんは、はっきりと分かります?
自分のレパートリー数。
いつか見たテレビで、眞鍋かをりが「200〜300くらい」
って言ってて、
「この歳まで生きて、人並みに歌謡曲を聴いてたら
普通でしょ?」って言ってるのを見て、
はて、自分は何曲くらいあるんだろう‥‥。
と考えてから、ずっと自分の中で疑問だったんですよね。

で、いよいよ開始です。
さすがに、見慣れたはずのカラオケボックスに
自分一人しかいないという状況は、かなり「ヘン」な状態。
最初はかなり、挙動不審気味だったんですが‥‥。

さてさて。
「苦行」ルールによって
自分が歌えそうな歌のうち、曲名のあいうえお順で
最初にくるのは‥‥?

「アーウーオジャママン」

(゚Д゚ いきなりコレか!!


まだペースがつかめないうちに、いきなりアニソン‥‥。
しかし、これもヒトカラの醍醐味(?)
まあ、ある意味歌いなれた曲でよかったのかな‥‥。

 〜 熱唱中 〜

さて、2曲目は?

「嗚呼! 逆転王」

(゚□゚; またかい!!
しかもタイムボカンつながり!!


因果ですなあ‥‥。
でも、おかげで(?)
もはや人の目とか何とかは気にしないで
以降はノリノリで熱唱!!
多人数の時以上に熱唱!!


以下、歌った順にざっと紹介。
3曲目「あヽ人生に涙あり
これは曲名ではピンとこないかもしれませんが
「水戸黄門」の主題歌ですね。
でも今回歌って、初めて3番まであるって知りました。

4曲目「EARTH 〜木の上の方舟〜」
これは「シティーハンター」の挿入歌だったんで
微妙にアニソンかな。アニソン多いね。

5曲目「嗚呼 青春の日々」
ゆずの曲ですが、ちょっとうろ覚えでした。
この曲は自分のレパートリーではないという結果でした。
ボックスに入ってから、
「単にレパートリー数を確認したいだけだったら
JOYSOUNDのホームページで曲名一覧を見て
数えたらいいんじゃね?」
という思いがちらっと浮かんだんですが、
あやしい曲はこうして実際に歌ってみないと
分からなかったんで、結果オーライですね(ホントか?)。

6曲目「ああ電子戦隊デンジマン
今度は特撮(´∀`;)
さすがに恥ずかしくなってきたが、
やっぱり熱唱。

7曲目「あー夏休み」
これもちょっと微妙だったんでレパートリー外。

8曲目「愛がひとりぼっち
「タッチ」のオープニングです。
またアニソンですね。
この曲から女性ボーカルの曲には
「ボイスチェンジャー」を使用することに。
だって、のどが疲れるんだもん。

9曲目「愛がもう少し欲しいよ」
TRFですね。

10曲目「愛されるより愛したい」
キンキキッズですな。
この辺ですでに疲れてきた。

11曲目「愛してもいいですか」
これは光GENJIが全盛期を過ぎた後に発売された曲です。
この曲を初めて歌った時に、元夜のヒトさんに
「いい歌だ」と褒めてもらったのを何故か覚えてます。

12曲目「哀愁の黒乳首」
嘉門達夫です。
コミックソングを一人で歌うというのは
端から見るとかなり恥ずかしいと思いますが、
この時の自分は既にノリノリで、怖いものなしです。
メラメラニンニンメラニンニ〜ン♪

13曲目「愛情AGAIN」
クリスタルキングの曲です。
一発屋LOVEなヤーロウぐらいしか
知らない曲だと思われます。
でもみんなと行ったカラオケでも数回歌っております。
でも謝ったりはしません。

14曲目「哀戦士
またアニソン‥‥。

15曲目「会いたい
沢田知可子です。
懐かしすぎてほとんど忘れてましたw
発売当時はラジオとかで聞いて確実に歌えてたと
思ったんだけどなー。

16曲目「会いたくて -Lover soul-
LINDBERGの曲です。

17曲目「あいにきて I NEED YOU
懐かしパート2。
やっぱり歌えなかった。

18曲目「愛のうた
ピクミンの歌ね。
今となってはこれも懐かしいなー。

19曲目「愛の言霊
20曲目「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」
ろくに知らない曲が続いてたんで、この2曲で少し復活。

21曲目「愛は勝つ
せっかく熱唱復活したのに、ここでタイムアップ。


というわけで、21曲も歌ってしまいました。

こうして見るとアニソンとイロモノが多いなー、
俺のレパートリー。予想どおりですか、そうですか。

しかし、21曲でまだ「あい」すらも脱出してないとは。
「ん」までいくまでに何年かかるんだろうか‥‥。

次回は12/1の予定(またワクワクに行くんで)。
お楽しみに!(?)
2006 11/27 22:46:18 | ヒトカラ | Comment(0)
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すみません‥‥。
ショートショートの続きとか書いてはいるんですが、
数日前に2ヶ月ぶりの閃輝暗点→偏頭痛発症に加えて、
どうやら風邪もひいてしまい、
ダブルパンチで完全にノックアウトされておりました‥‥。

もう少ししたら、復活すると思いますので、
気長にお待ちくださいませ‥‥。
2006 11/09 16:31:10 | 近況報告 | Comment(0)
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日付的にはおとといとなってしまいましたが、
Nintendo 「Wii」の体験会に行ってきました。

触ってきましたよー、Wiiリモコン!
振り回してきましたよ、Wiiリモコン!

今回は無料イベントなので、
会場めちゃめちゃな人手になってるんじゃないかと
心配したんですが、思ってたよりは少なかったです。
でも、一つのゲームやるのに最低30分、最高で1時間以上
並ばないと遊べなかったんで、
最近お外に出ていなくて、体力パラメータの
レベルが著しくダウン気味のヤーロウとしては
2つのゲームを触るのが精一杯でした。

触ってきたのは、セガの
「スーパーモンキーボール
ウキウキパーティー大集合」
と、任天堂の
「Wii やわらかあたま塾(仮称)」
の2つ。

やってみた感想としてはですね‥‥。

お も ろ い

はっきり言って、操作に慣れるまでが
めちゃくちゃ大変です。
上のどちらのゲームでも、合わせようと思ったところへ
カーソルがうまくいかずに、もどかしいことが
何度もありました。
しかし、徐々にコツをつかんでくると
「Wii」の強調してる「直感操作」ができるように
なってくるんです。
これが新しくて、面白い!

「スーパーモンキー‥‥」のミニゲームの
「ディスクゴルフ」をやったんですが、
本当にフリスビーを投げるのと同じように、
Wiiリモコンを手前から奥に振ると同時に
タイミングよくボタンを押すと
ディスクが飛んでいくんです。

今までのゲームだと投げる方向を矢印で決めて、
強さをゲージかなんかでタイミングよく押して、
自動的に飛んでいく、という感じでしたが、
今度は投げる角度と大まかな方向は矢印で決めるものの、
投げる強さと、投げた後の軌道は
自分の動作で調節することになります。

この今までになかった操作によって、
「うああー、何でそっちに行くのー!?」
「ゲエエー、飛びすぎて池におちたー!!」
とかが、イライラするんじゃなくて楽しいんだ、これが。

NintendoDSのタッチペンという新しい遊び方が
最初に出てきたとき
各メーカーとも頑張ってこの機能を取り入れようとするも
何となく空回りだったという印象を
勝手に抱いているのですが、
今回はどうもそんなことはなさそうで、
初めからリモコンを生かしたゲームが
たくさん出てきそうな気がしました。

ただ、「やわらかあたま塾」の方は、
今までカーソルやタッチペンで選んでいた問題の答え方が、
リモコンでカーソルを選ぶのに置き換わっただけで、
あんまりリモコンを生かせていないと思いました。
まあ、こちらは来年の春発売予定ということなので、
いろいろ追加されるかもしれませんが。

他、「牧場物語 Wii」なんてのもありましたが、
並んでたんで、やれずじまい。
でもまあ、画面を見てた感じでは、「やわらか‥‥」と
同様、タッチペンがリモコンに置き換わっただけで、
やってることは今までのと
何ら変わりないという代物のようでした。
ということはバグも同じということか!?
‥‥くわばら、くわばら。

あと、もう一つ懸念と言えば、
今回、観夏さんに誘ってもらって、2人でプレイしたため
対戦が白熱したりもしたんですが、
1人でリモコン振り回してるのは、
何だか虚しくなるような気も‥‥。
RPGのような、のめり込めるようなジャンルじゃなくて
テニスだとかゴルフだとかのスポーツゲームや
「おどるメイドインワリオ」なんかのミニゲームだと
特に‥‥。

というわけで、友達が少なくて
家に引きこもっているニートな諸君は
買ってもあんまり楽しめないかも。
‥‥そりゃ俺だ。

だけど、もしかしたら買うことになるかもしれません。
というのも、
俺じゃなくて、親が買う気マンマンなのね(笑)。
とりあえず、普段あまりゲームに興味がない層への
アピールはものすごい成功しているらしい、Wii。

発売日は12月2日、価格は25000円です。
2006 11/05 15:04:57 | 近況報告 | Comment(0)
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久々にショートショートを書こうと思ったのですが‥‥
うまくまとまりませんでして。

数エントリに分けて書きます。
そのほうが、更新数を稼げるしね!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

私は時々、近くの森に出かける。
自生している薬草を摘みに行くためだ。
なにせ辺境の村だから、
物も人もごくまれにしか行き来しない。
よって、欲しい物は自分で取りに行くしかない。
本当は城下町で売られているという、
魔法の治療薬が手に入ればいいのだけれど、
そもそもお金がないから、
私には買うことができないだろう。

村の人のなかには、
「外に出ると怪物が襲ってくる」などと
脅かしてくる人もいるが、
それは多分、子供を躾けるための迷信のようなものだろう。
もしかしたら私が女だから、
心配してくれているのかもしれないけれど、
私だってもう17歳になったんだし、
いつまでも子ども扱いするのはやめて欲しいものだ。


森はいつものように静かだった。
鬱蒼と生い茂る木々は、太陽の光をほぼ遮断し、
時間の感覚を狂わせる。
奥へ進んでいくと、程なく小さな泉が現れる。
薬草はそのほとりに生えているのだ。
私は持参したかごがいっぱいになるまで薬草を摘んだ。

泉の水がわずかな木漏れ日を反射してキラキラ輝いていた。
私は、時々そうするように
靴を脱いで泉に足先を浸してみた。
ひんやりして、すごく気持ちいい。
私はそのまましばらく、
何も考えずにぼんやりとしていた。

しかし、ふと、誰かの視線を感じた気がした。

息をのみ、動きを止める。
森はいつものようにしーんとしていた。

「誰かいるんですか?」

視線は森のさらに奥から感じた。
私も、この泉より奥へはさすがに入ったことはない。
辺りを伺いながら薬草の入ったかごを手元に引き寄せる。

「だ、誰かいるなら返事をして下さい!」

返事はなかった。
当然だ。今まで何回もこの森に来ているが、
私以外の人に出会ったことはなかった。
静かに泉から足を抜いて、濡れた足のまま靴を履いた。

ふいに、「怪物」という単語が頭をよぎった。

まさかね‥‥。

「な、なんだ‥‥気のせいかしら?」

立ち上がりながら、強がってそう言ってみせた。
頭によぎった思いを打ち消したかった。
村の人の言う迷信を信じたくなかった。

しかし、そのとき私の思いもよらないことが起こった。

「‥‥そ、そうです。きのせいです。」

返事が返ってきた‥‥。
しかし、言いたいことの意味が分からない‥‥。
私の頭はうまく回らなくなってきた。
とにかく、逃げよう。
返事をしてきたのが、誰かは分からないが、
これは係わり合いにならないほうがいい。
私は相手を刺激しないように
ゆっくりと振り向こうとした。

「あ、待って! 逃げないで!
 私の話を聞いてください!」

そう聞こえると同時に、
私の目の前に何かが飛んできた!

「ヒッ!!」

思わず目を閉じて顔を背けてしまう。
怖い、怖い、怖い!
怖くて目が開けられない。

「脅かしてしまってごめんなさい。
 私、きのせいです。」

思い切って目を開けると、
そこには、手のひらぐらいの大きさの
背中に羽が生えた女の子が空中に浮かんでいた。


(続く)
2006 11/01 15:57:16 | ショート・ショート | Comment(0)
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