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日本は正直困っていた。 集団的自衛権だの憲法改正だのしてみたもののアジアの隣国は領地を侵害し、右翼化をかたって強がってみたもののすでに世界が争いの出来ない腰抜けであることを知っていた。 抑止力というきわどい言葉を首相の多部自らが吐いたものの、アメリカの黒人大統領のネルソンは争いの出来ないチキン野郎で助けることはないということは世界が分かっていた。 経済的力の無くなった日本などアジアの隣国にとってお世辞一つ言う価値もなかった。 デフレ脱却、景気回復とマスコミとグルになり煽っては見たものの、元々張り子の虎である。ハッピーで馬鹿だと思ってほっといた日本国民が気付き始めた。 まずい!ちょ〜久々に一揆が起きるかも知れない。
ところがひろう神がいたのである。抑止力以上の力を持つ経済力を復活させる神が。 元々、日本にはオナニーをするか絵を描くかの引きこもりの妄想ガキが多数存在した。自ら絵を描かずともそれら精神世界に没頭出来るお坊ちゃん、お譲ちゃんだった。 彼らの消費力は半端でなかったのだが、今度は自分たちをアピールしたいという欲求にかられた。そしてその特異な世界観や価値観を一挙にネット上に拡散した。 2000年以降ヨーロッパを中心にアニメを媒体とした日本のキャラクターは受けた時期はあった。ところがそれとは違ったのが、まず異様なまでの平和観だった。 領土が侵略されようとしている国の若者は奇跡的なほど平和で明るい。何かあるに違いないと世界は勘違いした。 日本の若者たちはアタックされれば即座に白旗を振ろうと考えていたので争う事は始めから想定外だったのだが。 放映されるドラマはヒーローが出てきて地球侵略を狙う宇宙人とは華々しく戦うのだが、一番問題の隣国とは助け合うのだ。 東洋の神秘と全世界が絶賛した。
以前から日本のアニメは吹き替えをされ世界各国で放映されていた。だから日本人はアニメのような人々ではないかという妄想があったらしい。 アニメでは国は救われないのだが、思わぬ方向に進展していく。 その後 実写版として登場した日本のアイドル、つまり女の子たちが国を救う事になる。
キッカケは些細な事だった。海外のアニメ特集番組に小さくて可愛い日本の女の子が登場した。 アニメのコスプレで出てきたその子は18歳だという。白色人種の18歳の娘と言えばすでに牛のように逞しい。 それがどうだ!この可憐な小さな無垢の子は!!!ED化の進みつつあった全世界の男性がその可愛さに狂喜した。 そうか日本はこんな天使がいるから平和でハッピーでいられるんだと勝手に誤解した。 男たちが熱愛する東洋の小娘たちをついには白人女もリスペクトしだした。
それから世界を巻き込んだアイドル狂騒劇が幕をあけた。 個人というより40人位のグループが乱立し、全世界をコンサートで飛び回る。 彼女達は「命をかけてライブをしていきます!!」まさに命がけで働いた。 ”可愛い”が世界の共通語になった。可愛いと言われることは彼女らにとって命以上の意味があった。 私は可愛いと言われる為に生まれてきた。もって生まれた女の業は彼女らを無敵の戦士に仕立てた。 彼女達は自分が”神”になれると思い込んでいた。 「夢は叶います」だった。
すでに国家プロジェクトとして動いていた。電化製品や車に次ぐ外貨獲得の商品となっていた。 多少ブスでも愛想よく元気で明るければ、アフリカ辺りで踊らせれば分からない。 着々と外貨を稼ぐ娘たちに政府も大喜びだった。
ところが儲かる商売には必ず模倣犯が現れる。 中国と韓国だ。全くのコピー商品を当ててきた。 日本の多部首相は「いいじゃないですか、可愛い女の子達が世界に平和をもたらすから」等と善人をアピールした。 ところがマスコミとは政府結成当時から結託できており、即座に中国と韓国をぶっ潰せとの号令が飛んだ。 マスコミは即座に韓国の整形疑惑を全世界に向け報道した、イムジン河を泳いで渡る大量の脱北整形美女といったパロディーまで登場した。 中国人アイドルには現金を渡す現場を捏造隠し撮り、泡踊りまでさせた。 なりふり構わない日本のマスコミに敵なしだった。中国と韓国のコピーアイドルは駆逐された。
ところが困ったことに今度は内部から問題が起こった。 中国と韓国を駆逐し、日本人アイドルは犬や猫の血統書と同じで日本人であるということに守られていたのだが。 数百人にも膨れ上がったアイドルの中には、信じられないくらい馬鹿な子やだらしない子も含まれていた。 まず淫行が世界中でパパラッチされはじめ、隠し子のいる17歳の子、総選挙3位の子は男の子というスキャンダルまで発覚。 オランダやタイの浜辺でマリファナを吸う子、挙句の果てには総選挙がらみで上位の子を殺そうとする事件まで起きた。 それでもグループ代表の子は「私達は負けません。みんなの笑顔や勇気のために!」と訴えた。 しかし、アイドル崩壊は他の理由で訪れる。
元々世界的に見ても美的水準から言えば不思議な位置付けのアイドルだった。 バラエティで天下を取ったアイドルの横にハーフタレントの並ぶ画が増え始めた。
彼女達、彼らはモデル出身者が多かった。スタイルだけでなく瞳の大きさ、美しさだけでなくボケることが上手かった。 時によっては言葉の不自由なフリも出来、アイドルのように競争に勝ちます等と愚かな事は口にしなかった。 アイドルと並ぶと益々その差が歴然としてくる。アイドルの存在は日増しにくすんでいった。
政府は度重なる試練に立ち向かっていた。 方向転換は早かった。アイドルを切り捨てハーフを招集し始めた。 ハーフの子が主人公のアニメも多数作られた。 しかし政策は失敗した。似たような子が世界にはたくさんいたのだ。 役人は口を揃えた、「ブスだったから良かったんだ…と。」
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