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文男は眠たくてしょうがなかった。 広告代理店で働き、フリーペーパーを作っている。 最近ではデータを送れば一日で4万部位その日のうちに印刷できる時代だ。 ところがその反面弱ったことに、締め切りを設けたところで客は平気で寸前に修正を言ってくる。 断れないところが小さな広告代理店の弱いところだ。 ということでほぼ3日徹夜状態にあった。
イラストレーターでデータ画像を修正していたのだが、キーボードを打ちながら気を失いそうだった。 このまま横になればどんなに気持ちいいだろう。
終わった。午前3時である。 データは送った。 「終わった」 ディスクの向こうのソファに倒れこんだ。 射精しそうな位気持よかった。
目が覚めたのは…、 飛び立ったばかりのジェット機の翼の上だった。
うわっ!! 風に吹かれ落ちた。このまま眼下に見える街に叩きつけられて死ぬのだと確信した。
ところが落ちた先は、アマゾンの川だった。 ワニやらピラニアやら毒蛇やらいそうな場所だ。鼻から入った水が脳を突き抜けた。 何に襲われても仕方なかった。
覚悟した矢先、ドン!という衝撃で目の覚めた場所は、今から合戦が起きようという時代の戦場の野原だった。 槍やら刀を持った武将が左右から走ってくる。 文男は串刺しにされる自分の姿を想像した。
次は共存しなかったはずの恐竜が闊歩する時代だった。 その次はインディアンに襲われた。 次は見知らぬ星から地球を見た。
文男は時代や空間をスリップし続けた。 何か神からの使命を帯びたのだろうか?それにしては脈略がない。 まるで意味の分からない旅に文男は疲れ果てた。
いくら疲れても脳がイライラして現実と夢の間を彷徨ったことはないだろうか? 文男は疲れすぎて リミットを振り切ってしまった。 最後は何も考えなくて良いトカゲになっていた。目の前のハエを追いながら。
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