2010年 01月 23日 の記事 (1件)








  昔のこと。
 ある国の王様が、
 千里の馬を手に入れようとしていました。
 千里の馬とは、
 一日に千里(約400km)走れる、
 名馬中の名馬のことです。
 王様は金に糸目をつけず、
 八方手を尽くして探し求めました。
 ですが、三年探し求めても手に入れられません。
 半ば諦めかけていたあるとき、
 宮殿内の清掃をしていた卑しい身分の者が、
 王様に進言しました。
 「どうか私にその役目をお命じください、
 必ず千里の馬を探し求めてまいります」
 卑賎な者には似つかわしくない、
 あまりにも自信ありげな風韻を感じた王様は、
 その者に千金をもたせて名馬探しの任務を授けました。
 三月ののち、
 卑賎の者は千里の馬を見つけました。
 ですが、その名馬は既に死んでいたのです。
 「死んでいようが名馬に変わりはない、
 その首を私に売ってくれ」
 なんと卑賎の者は五百金という大金を投じて、
 死んだ千里の馬の首を買い取り帰国しました。
 復命したその者はもちろん王様の逆鱗に触れました。
 「欲しいのは生きている馬だ、どうして死んだ馬を
 五百金もだして買い取ったのだ!」
 罵倒されてもその者はひるまず、
 「王様は千里の馬であれば死んでいても五百金で
 お買いになったのです、
 生きた馬ではいったいいくらで買うのだ?
 と世間では必ず取り沙汰されます。
 そののち王様は
 馬の値打ちが判る君主だと噂されるに至るでしょう。
 まもなく千里の馬を売りに来る者があらわれるでしょう」
 こう平然と応えました。
 果たして、
 1年もたたぬうちに千里の馬が三頭もやってきたのです。

 さてさて、
 こうして卑賎の者は、
 一躍宰相に抜擢され、
 改革に辣腕をふるい
 王様は「覇者」と讃えられたのだとさ。 

 
 
2010 01/23 23:28:42 | none
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