思索に耽る苦行の軌跡
時空がカルマン渦を巻いてゐる光景は誰しも目にしてゐる筈で、それは主体が動くと時空のカルマン渦は必ず発生してゐるのである。一番それが解るのは電車から見える外界の光景でそれが無限遠を中心に渦を巻く時空のカルマン渦である。

すると主体は左右の時空のカルマン渦の間に生じた「現在」といふ狭間にしか存在できない哀しい宿命を背負ってゐる存在で、例へばそれを「個時空」と名付けるとこの世の存在物は皆「個時空」といふことができる。

さて、そこで「個時空」は主体だけの現象で主体が客体に転換すると客体と化した私は何物かが出現させた時空のカルマン渦に巻き込まれてしまふのである。

――二つの『個時空』が同時に同じ場所に存在できる『超越』を、さて、人間は成し遂げることが未来の何時か成し遂げることが出来るのだらうか……

――お互ひ同士波と言ふ音を使って会話が出来るではないか。

――ふむ。しかし、人間は同一空間に二つのものが同時に存在する様を夢想する生き物なのだよ。

――はっは。お前はこの世の全生物になり同一空間に二人の人間が存在とてゐた時期を忘れてしまったのかね。つまり『個時空』が全く同じ二人の人物がこの世に存在する奇跡の時間を……

――……

――よおく考へてごらん。きっとお前なら思ひ当た.る筈だから……

――ふむ……

――お前は宇宙の始まりからずっとこの世に存在してゐたのかね、ふっ。

――はっは。そうか母体の中だね。受精卵といふ一つの球体からこの世に存在するあらゆる生物に変態し、全生物史を十月十日で体験する胎児の時代か……

――そうさ、お前の母親と胎児のお前は同一の『個時空』に存在してゐたんだぜ。

――つまり、誕生は『楽園』といふ胎内からの追放か……。存在の悲哀、汝其は我に何を与へ給ふたのか……

――生老病死さ……
2007 05/01 07:19:30 | 哲学 文学 科学 宗教 | Comment(0)
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