思索に耽る苦行の軌跡
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

ニュートリノ

ニュートリノ (Neutrino) は、素粒子のうちの中性レプトンの名称。中性微子とも書く。 ヴォルフガング・パウリが中性子のβ崩壊でエネルギー保存則が成り立つようにその存在仮説を提唱した。「ニュートリノ」の名はβ崩壊の研究を進めたエンリコ・フェルミが名づけた。フレデリック・ライネスらの実験によりその存在が証明された。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%8E)を参照

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

ニュートリノ振動

ニュートリノ振動(ニュートリノしんどう)は、ニュートリノが質量をもつことでニュートリノの種類(フレーバー)が変わる現象。スーパーカミオカンデが1998年に大気から降り注ぐニュートリノを観測することによって、この現象が実証された。現在日本では人工的にニュートリノを発生させスーパーカミオカンデで振動現象を観測する実験が行われている。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%8E%E6%8C%AF%E5%8B%95)を参照

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埴谷雄高・小川国夫『隠された無限 往復書簡〈終末〉の彼方に』【岩波書店:1988年10月28日 第一刷発行】より抜粋(第七信「非在とのっぺらほう 埴谷雄高」152〜153頁)

 宇宙内のすへての物体を透過するニュートリノは、ひたすら無限の空間と永劫の時間へ向って、飛びゆきつづけます。恐らく、ニュートリノに向かって、そうかな、と訊き質したら、そうさ、無限と永劫へ向って「実際」に自己を投げいれる現実的超越者なるものは、俺をおいてほかに何もいないさ、と、ニュートリノのなかの或る異端者、もしくは、或る愚昧者は得意げに答えるかもしれません。しかしまた、ニュートリノはいまだはっきりとは解明されていませんけれども、超微小な質量をもっていることですから、あらゆる物体を透過するとき――例えば、神岡鉱山の直径十五・六メートル、高さ十六メートルの円筒形の三千トンに及ぶ水をたたえた大水槽内部一面に取りつけられている光電子倍増管に、水中の素粒子と衝突したニュートリノが「光」を放つことによって確かめられた「数」を「十三秒内に十一個」と検出されたとき、この光の「数」こそは、絶望とも悲哀とも歓喜とも諦念とも放心ともつかぬ、「心の痛み」の悲痛な呻きの或る前駆症状を提示していると言えるのです。自由無碍に無限永劫へ向って飛びいっていると見えるニュートリノとても、かくのごとくして、つぎつぎと、その「質量」を失いつくした果て、無限永劫の何処か手前で、星の死から発足したニュートリノ自体の死に直面せざるを得なくなることになります。そしてそのとき、ファウストの「憂い」に似たところの或る種の薄暗い原言語が、死を前にしたニュートリノのこれまた薄暗い内部をさっと掠めゆく筈です。さらになお――無限永劫の手前でついに衰滅してしまったこのニュートリノの死骸は、宇宙の未知の蟻群によって何処かの薄暗い巣へ牽かれゆくことになるでしょう。

――略

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『物体』をほぼ全て透過してしまふNeutrino(ニュートリノ)の『孤独』の深さは多分底無しであらう。

『他』にぶち当たって『衝突』や『反射』しない『他』の存在しないNeutrinoの『自己認識』の術は、さて、何であらうか。果たしてNeutrinoは自己が此の世に存在してゐることを『認識』してゐるのであらうか……

――……吾、果たしてこの吾、此の世に《存在》してゐるの……か……

――お前は今、お前を《吾》と言ったが……お前が己を《吾》といふその存在根拠は何かな ?

――……《吾》たる根拠は……何も……無い……

――それではお前に尋ねるが……お前の仲間の極々少数の者が『素粒子』に打つかって微小な微小な仄かな蒼白き『光』を発光して『死んで』いくが……さて……その時以外お前が《吾》が《吾》であったと『自己認識』出来る瞬間は……無いのではないかな……するとだ、お前は『死』以外……己の存在を『認識』することが出来ない……此の世で最も『哀れ』な存在……

――否 !! Neutrino振動を知ってゐるな。《吾》は《吾》であるといふ『自同律の不快』によって《吾》は《吾》とは《異種》の《吾》に変容する……

――はっ。お前でさへ……《吾》なることを……《吾》なることの《底無しの苦悩》を知ってゐるとすると……『自己変容』のみ此の世に『存在』させられた『もの』全ての此の世での慰めか……

――はっ、馬鹿が。『自己変容』 ? 何を甘っちょろいことをぬかしてをるか……『死』のみ此の世に『存在』させられた『もの』全ての慰めさ、はっ。
2007 08/06 07:12:54 | 哲学 文学 科学 宗教 | Comment(0)
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