|
眞白の月
君が誰とましろの月を観たかなんて、野暮な事は訊かないよ。 刃渡り2寸の小さなナイフ、 君はなんども、なんどもこの胸を刺した。 おなじところを、おなじちからで刺した。 血は出ぬその小さな傷跡に、 いつかしら咲いた黒い花、 摘んで君に捧げるとしたら、 それは君にどう見える? 君はニベも無くこう言うよ、 そんなきみわるい花、要らないわ、って。 君が刺した傷跡に咲いた黒い花、 ぼくはそれを胸にかくしたまま、 君の無邪気な想い出に相づちを打っている。 ぐさり、ぐさりと、 脂だらけの肉が裂ける沈んだ音を耳にしながら。
夜空には、 ましろの月が、 映えかえる。
あぁ、うつくしの夜や。
|