眞白の月

    

      君が誰とましろの月を観たかなんて、野暮な事は訊かないよ。    
      
      刃渡り2寸の小さなナイフ、
      君はなんども、なんどもこの胸を刺した。
      おなじところを、おなじちからで刺した。
      
      血は出ぬその小さな傷跡に、
      いつかしら咲いた黒い花、
      摘んで君に捧げるとしたら、
      それは君にどう見える?
      
      君はニベも無くこう言うよ、
      そんなきみわるい花、要らないわ、って。
      
      君が刺した傷跡に咲いた黒い花、
      ぼくはそれを胸にかくしたまま、
      君の無邪気な想い出に相づちを打っている。
      
      ぐさり、ぐさりと、
      脂だらけの肉が裂ける沈んだ音を耳にしながら。

      夜空には、
      ましろの月が、
      映えかえる。

      あぁ、うつくしの夜や。
2006 07/13 22:33:06 | none | Comment(0)
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