かつて題名のなかったBLOG
「昨日の夜は寝苦しくてですね、
夜中に起きて、風を入れようと窓を開けたんですよ。」
「それで?」
「でね、星空があまりにも綺麗だったんで、
しばらく見とれちゃって。
ほら、僕ってフェミニストですから。」
「それを言うならロマンチストな。それから?」
「しばらく見ていたら、急に、
すごい高速で移動する光が現れたんですよ!」
「ほうほう。」
「これは、ユーフォーだ、
異星人に間違いないと思ったんで、
カメラを持ってきて写真を写そうとしたんです。」
「うん。それで?」
「しかし、僕はカメラを持っていませんでしたので、
親から借りようとしたんですね。」
「カメラぐらいは持っていてもいいと思うがな。それで?」
「でも、夜中だから親は既に寝ていますよね?
起こさないように、ゆっくり静かに行動したために
カメラを入手するのに、すごく時間がかかりまして‥‥。」
「続けて。」
「再び窓の外を見たときは、
既にユーフォーはいなくなっていました。」
「ん? じゃあどうしたんだ?」
「でも、あきらめきれないんで、
しばらくカメラを構えたまま星空を見つめて、
再びユーフォーが現れないかどうか監視していたんです。」
「で?」
「そしたら、いつの間にか疲れて寝てしまって、
気が付いたら朝になっていたというわけです。」
「‥‥なるほど。」
「‥‥どうでしょう。」
「それが、お前の遅刻の言い訳ということだな。」
「はい。」
「だめだ、しばらく廊下に立っていなさい。」
「ひえ〜っ。」

「‥‥いいか、今のは全然理由になっていないぞ!
なぜだか分かる者はいるか?
安部、答えてみろ。」
「はい。地球にはユーフォーは存在しないと
考えられているからです。」
「うん。確かにそうだが、ここでの問題はそこじゃない。
いいか、このように目的地に定められた時間に
到着できなかった場合は、
その理由が、遅れた者の責任外にあることを
説明しなくてはならん。
つまり、さっきの矢口の答え方では、
遅れた者自身が気をつけていれば防げることなので
理由としては成立しないということだ。
このような場合、例えば目的地までの移動手段に何らかの
通常とは異なる事象が発生したと説明するのが一般的だ。
では、その移動手段にどんなものがあったか‥‥。
先週の授業の内容を覚えているか? 辻!」
「はい、ええと‥‥乗用車、バス、電車です。」
「その通り!
これらの移動手段に妨げが出たとして
『道が混んでいた』『電車が混んでいた』
などと言うのが正しいのだ。
いいか、これは入試でもよく出てくる項目だからな、
ちゃんと復習しておくように!」
「はーい。」

「じゃあ、今日は地球人の食事についてだったな。
教科書124ページ‥‥下から6行目だ。
今は一部の研究者しか実際に行くことができないが
徐々に研究は進んでいるから、近い将来、
我々一般人でも地球に行くことができるようになるはずだ。
そのときのために、今のうちから地球人の生態を
正確に理解しておかないといかんぞ!
よし、じゃあ加護、教科書を読んでくれ。
「はい。
『地球人は我々とは異なり、
エネルギー源を外部から吸入することによって、
生命を維持しています‥‥。』」


おわり。
2006 06/16 16:00:00 | ショート・ショート | Comment(0)
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