エジプトを旅行した時の事です。
この旅行でとても印象に残っている人がいます。
現地ガイドのホッサムさんです。
彼はカイロ大学を卒業したインテリです。
大学では日本語を専攻し、日本の古典も学び「源氏物語」を読んだそうです。
また、奨学金を得る為の試験に2番で合格したので、日本に1ヶ月程滞在でき、東京・京都・九州等に行った由です。
凄い事に彼は日本語が豊富、堪能で「入れ子」、「早瀬」、「厨子」等と言う言葉を流暢に使っていました。
電子辞書を愛用しておりましたのでその成果かしらと思います。
自己紹介で元横綱・武蔵丸にそっくりと言われると言っていましたが、正しく、元横綱を一回り小さくしたらホッサムさんです。
彼は小柄、1.6m位でしょうか、そしてかなり色黒で丸顔です。本人によると、典型的なエジプト人の顔だそうです。
ナセルやムバラクのようなアラブ系を思わせる彫りの深い顔立ちとは少し違っていました。
エジプトは観光立国ですので、観光関係に関わる仕事が高収入のようです。
彼の言葉の端々から、彼がかなりリッチであることが解りました。
イスラム教で5つの教え中のひとつ、「メッカへの巡礼」を奥様と実行したそうです。
この巡礼は費用がかかるのでお金持ちだけがすればよいそうです。
公務員の月収が2〜5万円位ということでしたから、いくら物価の安い国でもそう簡単には実行できないようです。
また彼は敬虔なイスラム教徒でした。
イスラム教では1日に5回お祈りをすることになっていますので、仕事中も、時間が取れる時にお祈りをしていました。
ファルーカ(帆船)の中では絨毯が無いので、Tシャツを敷いてのお祈りでした。
数年前のハトシェプスト葬祭殿での惨劇の後、ホッサムさんは奥様から、ガイドの仕事をやめて下さい、と泣いて頼まれたそうです。
私は奥様の気持ちが良く解りました。
先日のハン・ハリーリ市場のテロでムバラクは頭を悩ませているようですが、ホッサムさんも悩みが尽きない事と思います。
彼はエジプトの遺跡とガイドの仕事にとても誇りを持っているように感じられました。
また頭の良い魅力のある人でしたので、いつまでも元気でガイドをしていて欲しいと思います。