
5月は色々とやることが多すぎて,完璧に飽和しまくっとりました.
しかし,一昨日をもって,その全てが一区切りし(まだ完了ではない),ちょっとのんびりモードです.
そんなのんびりとした昼下がり,2週間くらい止まっていた腕時計の電池交換に行ってきました.
大学の構内に確かあったなぁと思い,半地下のお店へ.
そこにいたのは,よぼよぼのおじいちゃん一人.
大丈夫か?と半信半疑で,「すんません,電池交換お願いしたいんですが...」
「まぁ,座れ」
電池交換なんて,預けといて本屋に立ち読み行こうと思っていた僕は,渋々着席.
そこからはまさに異空間だった.
電池交換の過程を全て見せてくれ,なぜそうするのか説明してくれるのだ.
まず,蓋を外し,入ってた電池を見せてくれた.
「2004年の11月に変えたんだな」
「へっ?」
「電池に書いてあるんだよ,こういう風にしとくと,この時計の燃費がわかるだろ」
「ほぉおおお」
「あと,これ文字盤は大きいけど,中の機械は小さいだろ」
「へぇ」(確かに,半分くらいしかない)
「ここだけ女性用と同じものを使ってるんだよ.安くあげるためにな.」
「ほぉぉぉぉぉおおおおおお」
そしておもむろに引き出しから取り出した,古びた電圧計.
「なっ,電池ないだろう.針がほとんど動かねぇ.これじゃぁ駄目だ.」
「だめっすね」
「この型は,今日仕入れたから大丈夫だ.よし,動いてるな」
「はい」
そして,電池を再び取り出し,電池表面に日付を入れていく.
「手が震えてちゃ,こりゃかけねえんだよ.おれぁ,あと2年で90だがよ,震えねぇんだよ」
「あと,この蓋のところとか掃除するから,ちょっと待ってくれよ.こんなとこ,時計屋がしなかったら,だれもしねぇよな.よし,綺麗になった.そんで,あと,電池に日付入れとくんだよ,そしたら次替える時に,どれくいらい,電池もったかわかるだろ.」
「いぁ,それさっき書いてもらいましたけど...」
「あっほんとだ.年とると駄目だな.俺ぁ16のときから73年もここでやってるからねぇ.あと2年で90だよ」
最後に,時刻合わせ.
「俺の時計は,1ヶ月で2秒ずれるんだ.けど,毎日時報と合わせてるよ.まぁ,合わせる必要はほとんどねえがな.」
と,ご自分の腕時計と時刻を合わせてくれる.
「俺ぁ,16の時から73年間ここにいるが,ずっとこうやって作業をみてもらってんだよ.そしたら,お客さんも信用してくれるだろう.そんな,陰に隠れてこそこそやってたら駄目だよ.20の時に,兵隊行ったけど,南方行ってたら,死んでたかもしれなぇな.俺ぁ,満州で,毛沢東の...あれ,,,ほれ...」
「共産党っすね」
「そうそう,共産党と戦ったんだよ.最後は曹長で帰ってきたよ.星2つだ.」
そして,支払いを済ませて立ち去る,おいら.
外に出ると,天気は曇り.
普段見慣れた,どんよりした感じの空模様.
73年も,一つのことをやり続けることが出来るだろうか...
その仕事に誇りを持ち続けることが出来るだろうか...