マイビューティフルライフ

2014年 07月 の記事 (5件)

日本は正直困っていた。
集団的自衛権だの憲法改正だのしてみたもののアジアの隣国は領地を侵害し、右翼化をかたって強がってみたもののすでに世界が争いの出来ない腰抜けであることを知っていた。
抑止力というきわどい言葉を首相の多部自らが吐いたものの、アメリカの黒人大統領のネルソンは争いの出来ないチキン野郎で助けることはないということは世界が分かっていた。
経済的力の無くなった日本などアジアの隣国にとってお世辞一つ言う価値もなかった。
デフレ脱却、景気回復とマスコミとグルになり煽っては見たものの、元々張り子の虎である。ハッピーで馬鹿だと思ってほっといた日本国民が気付き始めた。
まずい!ちょ〜久々に一揆が起きるかも知れない。

ところがひろう神がいたのである。抑止力以上の力を持つ経済力を復活させる神が。
元々、日本にはオナニーをするか絵を描くかの引きこもりの妄想ガキが多数存在した。自ら絵を描かずともそれら精神世界に没頭出来るお坊ちゃん、お譲ちゃんだった。
彼らの消費力は半端でなかったのだが、今度は自分たちをアピールしたいという欲求にかられた。そしてその特異な世界観や価値観を一挙にネット上に拡散した。
2000年以降ヨーロッパを中心にアニメを媒体とした日本のキャラクターは受けた時期はあった。ところがそれとは違ったのが、まず異様なまでの平和観だった。
領土が侵略されようとしている国の若者は奇跡的なほど平和で明るい。何かあるに違いないと世界は勘違いした。
日本の若者たちはアタックされれば即座に白旗を振ろうと考えていたので争う事は始めから想定外だったのだが。
放映されるドラマはヒーローが出てきて地球侵略を狙う宇宙人とは華々しく戦うのだが、一番問題の隣国とは助け合うのだ。
東洋の神秘と全世界が絶賛した。

以前から日本のアニメは吹き替えをされ世界各国で放映されていた。だから日本人はアニメのような人々ではないかという妄想があったらしい。
アニメでは国は救われないのだが、思わぬ方向に進展していく。
その後 実写版として登場した日本のアイドル、つまり女の子たちが国を救う事になる。

キッカケは些細な事だった。海外のアニメ特集番組に小さくて可愛い日本の女の子が登場した。
アニメのコスプレで出てきたその子は18歳だという。白色人種の18歳の娘と言えばすでに牛のように逞しい。
それがどうだ!この可憐な小さな無垢の子は!!!ED化の進みつつあった全世界の男性がその可愛さに狂喜した。
そうか日本はこんな天使がいるから平和でハッピーでいられるんだと勝手に誤解した。
男たちが熱愛する東洋の小娘たちをついには白人女もリスペクトしだした。

それから世界を巻き込んだアイドル狂騒劇が幕をあけた。
個人というより40人位のグループが乱立し、全世界をコンサートで飛び回る。
彼女達は「命をかけてライブをしていきます!!」まさに命がけで働いた。
”可愛い”が世界の共通語になった。可愛いと言われることは彼女らにとって命以上の意味があった。
私は可愛いと言われる為に生まれてきた。もって生まれた女の業は彼女らを無敵の戦士に仕立てた。
彼女達は自分が”神”になれると思い込んでいた。
「夢は叶います」だった。

すでに国家プロジェクトとして動いていた。電化製品や車に次ぐ外貨獲得の商品となっていた。
多少ブスでも愛想よく元気で明るければ、アフリカ辺りで踊らせれば分からない。
着々と外貨を稼ぐ娘たちに政府も大喜びだった。

ところが儲かる商売には必ず模倣犯が現れる。
中国と韓国だ。全くのコピー商品を当ててきた。
日本の多部首相は「いいじゃないですか、可愛い女の子達が世界に平和をもたらすから」等と善人をアピールした。
ところがマスコミとは政府結成当時から結託できており、即座に中国と韓国をぶっ潰せとの号令が飛んだ。
マスコミは即座に韓国の整形疑惑を全世界に向け報道した、イムジン河を泳いで渡る大量の脱北整形美女といったパロディーまで登場した。
中国人アイドルには現金を渡す現場を捏造隠し撮り、泡踊りまでさせた。
なりふり構わない日本のマスコミに敵なしだった。中国と韓国のコピーアイドルは駆逐された。

ところが困ったことに今度は内部から問題が起こった。
中国と韓国を駆逐し、日本人アイドルは犬や猫の血統書と同じで日本人であるということに守られていたのだが。
数百人にも膨れ上がったアイドルの中には、信じられないくらい馬鹿な子やだらしない子も含まれていた。
まず淫行が世界中でパパラッチされはじめ、隠し子のいる17歳の子、総選挙3位の子は男の子というスキャンダルまで発覚。
オランダやタイの浜辺でマリファナを吸う子、挙句の果てには総選挙がらみで上位の子を殺そうとする事件まで起きた。
それでもグループ代表の子は「私達は負けません。みんなの笑顔や勇気のために!」と訴えた。
しかし、アイドル崩壊は他の理由で訪れる。

元々世界的に見ても美的水準から言えば不思議な位置付けのアイドルだった。
バラエティで天下を取ったアイドルの横にハーフタレントの並ぶ画が増え始めた。

彼女達、彼らはモデル出身者が多かった。スタイルだけでなく瞳の大きさ、美しさだけでなくボケることが上手かった。
時によっては言葉の不自由なフリも出来、アイドルのように競争に勝ちます等と愚かな事は口にしなかった。
アイドルと並ぶと益々その差が歴然としてくる。アイドルの存在は日増しにくすんでいった。

政府は度重なる試練に立ち向かっていた。
方向転換は早かった。アイドルを切り捨てハーフを招集し始めた。
ハーフの子が主人公のアニメも多数作られた。
しかし政策は失敗した。似たような子が世界にはたくさんいたのだ。
役人は口を揃えた、「ブスだったから良かったんだ…と。」
2014 07/31 15:37:56 | | Comment(0)
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狭い路地を走り抜けて、海が見える丘に登り、遠い夢を見ていた。
瀬戸内の海は今日もとっぷりとゆっくり流れている。

あの忌まわしい日から10年経った。そう10年前、私の5歳の娘が殺された。
犯され殺され岸壁から捨てられた。随分流された所で釣り人が発見した時は岩に当たったのだろうか、首の骨は折れ全身ボロボロの状態だった。
痛みと苦痛の果てに叩きつけられて息絶えたと見られた。
TVはセンセーショナルに報道し、葬儀も訳のわからない者まで多数参列した。
「かわいそうに」、「なんて残酷な」、という言葉に加え、「お父さんしっかりして下さいね。」
中でも一番怒りを覚えたのが、「罪を憎んで人を憎まずですよ」、お前の子が殺されたらそんなことが平気で言えるのか?
とにかくそれからは偽善者のオンパレードであった。
妻も精神を病んだ。自分の責任だと自分を責め続けた。真っ暗な部屋で「へへへっ」と不気味の笑っている姿に話しかけても反応がない。
仕方なく入院させる事にした。

とりあえず犯人の早期逮捕を願った。全国に知られた殺人事件である、岡山県警のみならず警察の威信をかけ解決すると豪語した。
ところが今だに手がかりさえない。初動調査の不手際だの田舎警察が無能だからだの批判も上がったが、とにかく手がかりがない。
街灯もなければ釣り客もこない場所ではあった。
娘が一人で来るような場所でもないのだが。なぜ?。

完全に座礁に乗上げたかに思えた。
もう10年である、誰もがダメかなと思い始めていた。

ところが奇跡がおきたのだ。



私はアメリカやカナダ、中国といった海外から建築材料を輸入する商社で働いている。
顧客は日本全国にある大手のハウスメーカーやビルダーだ。
年商20億円位の小さな会社ではあるが、私は営業として1ヶ月の半分以上は出張といった日々を送っていた。
主に担当は西日本地区なので九州、特に福岡には以前からよく行っていたのだが…。

ある日、私は福岡でカナダの領事館のよく行うセミナーに出席していた。内容はカナダの製品をブランド化し、お客様に薦めましょうという勝手でつまらない内容だったのだが、建設会社の現場や営業の管理職クラスがそれぞれの会社の命令で大勢出席していた。
2時間もすればお開きになる。腹が減っていたので下の階の食堂で食事をすることにした。

セミナーに参加していた人たちが何名か同じように食事をしようとしている。

実はこれは絶好の営業チャンスなのだ。参加者はまず建築業者の管理職であり、発注権を持つ人たちだ。
営業はいつも数字に追われるが、新規客を開拓しないと売上は萎んでいくものだ。まずは現場責任者風の2人組のテーブルに挨拶した。

「私、輸入建材を扱っています岡山インターナショナルの松尾と申します。」と名刺を差し出す。
「ああ、シングルルーフィングやペイントをやってる岡山さんね。」
どうも会社を知っているようだ。
「ありがとうございます。よろしかったら同席させて頂いてよろしいですか?」
「どうぞ。」
早速 挨拶代わりに自社カタログを渡し、同席させてもらう。

いきなり飯を食うのにしつこい勧誘も無粋である、会社を知ってもらっているのなら尚更、これからは引きトークとばかり世間話。

中洲のあそこが良かっただの、箱崎ふ頭の話だの。
するといかにも現場監督といった風体の男の方が話しだした。
「そう言えば岡山の下津井って言えば、昔、女の子が殺されたって事件あったよね。」
「あの左右色違いのソックス履いてた女の子が殺されたって話。」

私の身体に稲妻が走った!。その事実は公表されていないはず?。というのが面白がって娘が色違いのソックスを履くのを見て、「まるでエースフユーレーだな。」と言った覚えがあるのだ。
エースフユーレーとはアメリカのキッスというバンドのギタリストでよく左右違う色のスニーカーを履いていたという話しからだ。
妻も娘も「何それ?」と笑っていたが。
事件当時、左右違うソックスを履いていたかは定かではない。片方もしくは両方脱げて発見されたかもしれない。
しかし、面白がってよく左右違うソックスを履いていたのは確かなのだ。

名刺を見直す。名前は谷口文男。

こいつが…?。とにかく調べよう。そのためには。

私は谷口に「無垢とホローコアのドアで安いのがあるんですよ、もし良かったら検討ください。見積りは名刺の番号に、谷口さん宛にFAXしときます」
とりあえずそれでその場を離れた。

その夜、私は出張先のホテルから谷口宛に見積りをFAXした。通常売価の半値である。恐らく原価割れかギリギリなのだが、実はある会社の発注ミスで戻ってきたもので在庫にはなっていない商品である。
棚にのっていない商品をいくつかストックしておき新規の営業で使うのは常套手段なのだ。
それ以上に谷口と接点を持つことが重要だった。

案の定である。翌日、電話があり、谷口から検討したいから会社に来てくれとのこと。

早速、私は南区までレンタカーを飛ばし向かった。4階建てのガラス張りの本社ビルである。着工戸数が年間100棟くらいだろうか、まあまあの棟数である。
各現場監督が仕入れを行う仕組みらしく谷口もその一人のようだ。
予定物件の図面を見ながら搬入予定日、サイズ、本数のチェック、搬入方法、搬入住所そして支払い条件、などの確認を終えた。
しかし本懐はそれではなかった。
私は「明日には岡山に帰ります、今日は近くで泊まりますからお近づきの印に一杯行きませんか?」
接待慣れしているのだろうあっさりOKした谷口と別れ、私は次なるシナリオに向け動き出した。

小奇麗な料理屋だった。大きな店ではないがちゃんとした料理を出しそうだ。剣菱を飲み交わしながら谷口の顔色を伺った。
賢い男ではないが自己顕示欲の強そうな自信家みたいだ。とにかく褒めておだてて飲ませた。
「谷口さん、岡山には来られた事があるんですか?」
「ああ、あるよ。岡山の武藤建設さんとは社長同士が仲が良くて勉強会や交流会をやっていてね、アメリカのNAABにも一緒に行ったんだ」
「そうですか、岡山の大手の武藤さんですね。」

結構呑んだだろうか、辛口とはいえ日本酒は胃に残る。谷口もそれほど呑める男ではないようだ。
「谷口さん、博多の女の子は綺麗な子が多いから中洲辺りも楽しいんでしょうね?」
「俺は飲み屋の女は嫌いだ。なんか、こう純粋さがないよね。少女のような可愛さというか…。」
私はドキッとした。なおも谷口は続けた。
「人形みたいな子がいいよな、小さい…。」
疑惑がなければ何ともない会話だったのかもしれない。しかし、この酔っぱらいから漏れた言葉は間違いなかった。

こいつだ!!犯人は。

谷口は独身で現在45歳、母親と会社近くの南区で住んでいる。結婚したことはないようだ。
専門学校を出て25年ずっとここで働いているらしい。
頭はきれる男ではなかったが真面目に勤務は続けてきたらしい。
女子社員と話をすることはなく、同僚や後輩には強がったり虚勢をはったりするようだがあまり相手にされていないようだ。

10年過ぎようが私の恨みは日々膨張し続けている。いつ爆発してもおかしくない。
しかし、今ではダメだ。殺すだけでは復讐し足りない。

私は復讐計画を練った。最終的には殺す。その前に捕まるわけにはいかない。
凄惨な死には意味がない。精神的に追い詰め悲しみと後悔と恐怖の中で処刑しなければならない。
私には体力がない。恐らく谷口と争えば返り討ちにあう恐れもある。
私はまず足がつかないように ネットを通じスタンガンや催涙スプレーといった道具の他に近くの病院の産廃置き場から注射器まで集めた。
目的に向かいまっしぐらに走り始めていた。

準備が完了すると私は会社を辞め、社会とのつながりをすべて切った。

谷口は会社から歩いて帰宅する。歩いても10分位の場所に自宅がある。
見積りや予算計画などで深夜まで残業することもあるが、建築屋の業務としては早く帰ることが多い。
付き合いが少ないというのも原因だろうが。そして週に2〜3回は近所の一杯飲み屋に寄りひっかけて帰るようだ。
そこを狙った。

酔っ払って出てきた谷口を背後から追った。人影も少ない通りにさしかかった時、背後からスタンガン一発。
崩れ落ちる谷口。即座に酔っぱらいを介護するふりをして車に詰め込む。
テレビカメラもない駐車場で身ぐるみ剥ぎ取り素っ裸にした。
行く先は博多駅前である。中洲の真ん中に捨てるとすぐ車から足がつく。博多駅前は裏通りに入ると人がほとんどいない空間がある。
人影が消えた所で谷口を捨てた。1枚だけ素っ裸で放置された写真を取り。

きゃあ!女性の悲鳴に谷口は飛び起きた。ここはどこだ?!。走って逃げたが逃げた先は人だかりの繁華街である。
すぐ警察官が飛んできて、身柄を確保された。
警察から母親に電話があり、結局、酔っ払った末の愚行だとされた。

それから数日後、次に谷口が目覚めたのは西区の生の松原だった。
いくら脳天気な谷口でも これほどまでに悪質ないたずらに恐怖を覚えないわけがなかった。
呑んで帰るのを控えることを決めた。

しかし、呑んでないにも関わらず、3たび襲われることになる。
次に捨てられたのは拉致された場所とほぼ同じ近所だった。又、素っ裸で。
これには困り果てた。近所中で話題になった。あの年で独身なのも頭がおかしいからだと噂された。
母親も近所に恥ずかしいと泣き続けた。

私は子供がするような事をするために復讐を決意した訳ではないのだが、子供がいじめを面白がる感覚と殺意が入り混じり狂い始めていた。

谷口の全裸を撮ったデジカメの画像を引き伸ばし百枚近くプリントアウトした。
それを新聞配達も人もいない僅かな時間帯を狙い、自宅の周辺や会社の壁に貼りまくった。
これには谷口も打ちのめされたようだ。元々、隠れるように生きてきた独身中年男である。
会社にも素っ裸での愚行がバレてしまった。取り敢えず謹慎ということで自宅に引きこもったのだが、谷口には誰がやったのか全く検討もつかない。
母親は絶望した。間違いなくこのバカ息子は首になり職を失うだろうと罵った。
警察もさすがにおかしいということで調べ始めたようだ。怨恨の線から。

そろそろ締めにかかろうと私は決意した。

息苦しさから家を出た谷口の姿を確認後、母親一人を残す家に火炎瓶を数本、投げ入れた。
本当はダイナマイトか手榴弾を用意したかったのだが、そんなもの容易に手に入るはずがない。
しかし、予想に反し炎は瞬く間に広がり、母親もろとも焼きつくした。

谷口は燃え広がる自宅を前に呆然とした。
世界でたった一人の味方であり、唯一愛してくれる人を失くした。
涙も出なかった。

意識のないまま、トボトボと谷口は歩き出した。火事の周りは野次馬でごった返しつつあった。サイレンが響き、消防車もやってきた。
すでに火はすべてを覆い尽くし取り付く島もない状態だった。
数百メートルも歩いていなかっただろう。
谷口は何も感じていなかった。
私は思いっきり背後から谷口を車で轢いた。
ドンという音と共に何メートルだろう?谷口ははじけ飛んだ。私はぐったりとした谷口の上をもう一度轢いた。

当然ではあるが、やがて私は逮捕され拘置された。
理由を聞かれ私は答えた。
「娘を殺した犯人が谷口だと分かったので復讐しました」と。

私は吠えた。
犯罪者は反省しない。その事実をほとんどの人が誤解している。
被害者家族は怨念と後悔に一生苛まれる。
犯罪者は刑期を終え、のうのうと社会に戻ってくる。
それを今度は守るかのように、警察は口を閉ざす。
犯罪者の人権は守れても被害者の無念は関知しない。
恨んだ方が不幸になっていく。
健全でありたいなら報復すべきである。当然の権利だ!。
2014 07/30 19:17:04 | | Comment(0)
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21世紀もすでに半ばになろうとしている。
相変わらずパレスチナ問題はおさまらず、親を殺された子孫たちが敵相手を殺戮する繰り返しだった。
貧しさからの北朝鮮やロシアの崩壊消失後、世界は変わったかに思えた。
しかし、個はマスには変わらず、各々の宗教は価値観の統一、精神的な団結の道具とされ、世界の区分は宗教の区分となった。

谷口文男はボ〜ッと空を見ていた。一度は結婚したが、無類のギャンブル好きと天井天下唯我独尊、
というより傍若無人(喧嘩は弱かったので強がるだけだが)だったのですぐ逃げられた。
そんな文男は周りから見ても決して賢い男ではなかった。だから惑わされなかったのかもしれない。

あれっ?何だあの光は?
港南病院の建物ごしに変な光が見える。やがてその光は大きさを増したように感じた。
しかし、眩しくはない、太陽が2つになったようだが暑くも眩しくもない。
文男にはただの光だった。

しかし周囲の人々の反応は違った。皆、何か神々しいものを見るかのように瞳を輝かせた。
ある老夫婦は涙を流しながら今までの生を感謝し、これからの人生の希望を確信した。
子供は生まれてきた喜びや開放感を身体全体に感じ、生命が弾ける興奮を得た。
妊婦とそれに同行していた老婆は生まれ来る子の神秘と感謝、永遠に続くであろう愛と生命の存続に言葉を失い手を合わせた。
その光は争いや葛藤とは正反対の感情を一気に起こさせた。

まず日本に現れた光は全世界で注目され放映された。

翌日にはLAの上空に現れた。
日本でもすぐ自衛隊の航空機が出動したが、アメリカではテロではないかという警戒から領空侵犯、即、攻撃という手段に出た。
しかしいくら攻撃しようと暖簾に腕押し状態だった。相手も反撃してこない。
業を煮やしたのか、とうとう一機の戦闘機が光の中に突っ込んでしまった。
光は戦闘機もろとも消失した。

その翌日である。LAの大きなホームデポの駐車場。開店前の朝、突然 消失したはずの戦闘機とパイロットが無傷で現れた。
即座に現場は軍の車両、人で包囲されマスコミもシャットアウトされた。
何が起きたのか尋問調査があったはずなのだが異例中の異例の早さで翌日マスコミに公表された。

パイロットへの公開質問が全世界へ配信された。
その内容はこうだ。

私は近づきすぎたと思ったんです。一瞬だったと思います。
気がつくと私は光の中に浮いていました。
そして目の前には私達と同じ姿をした人々。とても美しい男女でした。みた瞬間、天使だと思いました。
彼らは言いました。よく来てくれましたと。
それから色々話してくれました。
元々 自分たちと地球人は祖先は同じだと。
只、彼らの星は平和と愛で歴史が繰り返されたそうです、争いを繰り返す同じ子孫の星があることを後に知り全ての人が心痛め、悲しんだそうです。
何故、自分が生まれなければならなかったか、何故生まれてきたか。そして死んだらどこへ行くか。
何故、キリストや釈迦が生まれてきたか。
それは今までの30年の人生を根本から覆す奇跡でした。わたしはもう流せないほど涙を流しました。
間違いない事は彼らは平和の使者であり、愚かな地球人の人智を超えた存在であるということです。
その証拠に彼らはこちらが危害を加えても何も報復しません。
そして何故光をもたらすか?その答えはこれです。

彼は左手をカメラにかざした。
私は幼い頃、ある事故から薬指の第一関節から先を切断してしまいました。
ところがあの光の源光らしいのですが、数秒ほど当ててもらいました。
その結果がこれです!
おおっ!というざわめきが起こった。
指が再生されている!!。

この報道は数少なく残っている共産国を除いて大々的に放映された。
その後もこの光は全世界に現れ、人々は熱狂した。
そして…この光は数々の奇跡を起こし始めた。

歩けなかった人々が突然歩き出した。
心筋梗塞や脳梗塞で蘇るはずのない心臓の筋肉、脳組織が再生、復活した。
なんといってもガン細胞が消えていった。
病が治るだけではなかった。
少子化に頭を抱える日本で出産が相次いだ。
身体が元気になるだけでなく生殖機能も活発化した。
男も女も発情した。不思議なことに出産適齢期を過ぎた女性が発情することはなかったが。
男は自慰をするとまるで思春期に罪悪感に囚われるあの感覚に襲われる。
子孫繁栄の為の射精である。世界中の若者はまるで産めよ増やせよとハッピーな感覚に包まれながら励んだ。

世界中で我が宗教の神のおかげで光がもたされたと言い続けた。
光は正義と愛国心の象徴となった。

ところが日本だけはオウムや政党と結びつく宗教団体、宗教=カルトという概念もあり、宗教的意味合いが増すことにより批判的な意見がネットを中心に広がった。

するとどうだ。光が定期的な進路を変え、日本に現れなくなった。
光を失った日本は暴動や略奪、犯罪、猟奇的な事件が相次いだ。
普通、そのような状況に陥れば光の反動が原因だと依存性など疑うものであるが、世界はバチがあたったんだと口を揃えた。
もはや光は神の象徴であった。なんといっても平和な気分になり健康になり、どう研究しても依存性を立証できないのだ。
あの大災害でも略奪も起こらず、もしもの時は日本のように振る舞えとさえ言われた日本の醜態に全世界がそれ見たことかと批判した。
日本は神の摂理から外れた国と蔑まれ、ますます廃れていった。
何故か 中国にも現れなくなった。中国の崩壊は早かった。上空の空気が澄み渡るのに月日はかからないぐらいに。

文男にとってはちょっと前の日本も今の日本も変わらなかった。
略奪が増えれば、自分も加わるだけだ。元々薄っぺらな正義などないわい!って光がなくとも脳天気だった。
何とかなる。俺には生命力がある。

すべてがうまくいっているようだった。
若者は1年中発情した。
10月10日かかる出産が7ヶ月もすれば生まれてくる。身体の大きさは通常の出産と変わらぬ大きさで産まれ、産まれた子は驚く成長を遂げた。5ヶ月で歩き始め言葉を発し始める。脳の成長も順調で皆、健康優良児であった。
死産もまず事故以外に起きないほど光の恩恵を受けていた。

当然の事ながら 子供も増え続け、年寄りも死ななければ問題も起きてくるわけだ。

言葉を発しないはずの光が突然言葉を発した。
それぞれの国でそれぞれの民族の姿で。

私達の星はこの美しい地球と同じように同じ肌の人種が存在します。
姿や形は祖先が同じなので全くかわりません。
私達の星は平和しか知りません。私達の星は愛や繋がり合うことしか知らない星です。
自然も生き物もこの星と変わりません。
私達の星は地球の数万倍の大きさです。
私達はもしあなた達が望むなら、あなた達が幸せに暮らせるように場所を提供します。
使い道は自由です。環境をお見せします。
空がスクリーンになった。

そこは楽園だった。
人々の姿も出たが、皆、美しい人々だ。
見ていた女性からも男性からも驚嘆の声が上がった。
水も野菜もフルーツも地球と同じだ。
食料は生命維持を保証する為、星が提供し続けるらしい。
身体一つで旅立てるなんてどこかのCMみたいだが。

深く考えるなよ…って光が言っているようだった。

第一陣の方舟が出発する日。文男はいた。
どうせ地球にいたってたかがしれている人生だ。
美味いもん食って女が抱けるなら、パラダイスだ。
只、他の希望者と違うのは光の効力が文男には無かったということだけだ。

光の方舟は数百人の地球人を載せ飛び立った。
あっという間に宇宙の真ん中にいた。その時、あの光といつもと違う光がさした。
地球人は眠りについた。
文男を除いては。
文男は寝転がる地球人の中にいて 小窓から覗く奇妙な生き物を見つけた。
何だあれ?

その奇妙な生き物達はガサガサと節足動物が発するような音の中、会話なのかテレパシーなのか分からない会話をしていた。

思ったより早くかたがついたな。
種肉も積み込んだし、帰ってあの星と併用して飼育すれば任務完了だ。
しかし俺達に似た生き物をあの星で見かけたんだ。
なんでもあの肉達はゴキブリと呼んでいたな。
えらく小さくて原始的な生き物で知能はないんだが食い意地は俺達そっくりだったよ。

この星の肉は年中発情し繁殖できるってのは食料としては最適だ。
年取ったのはちょっと臭みがあるが若いのは美味いぞ。
年寄りも繁殖可能に出来ないことはないんだがやっぱりいい肉は無理なんだな。
それから 環境や空気も大事なので中国には消えてもらった。
手は下す必要はない、光を当てなければすぐ闇になり勝手に崩壊する。
予想以上に早かったが。
健康でハッピーにすれば美味しい肉になる。本当に。

文男は不思議そうに見つめていた。
大きなゴキブリか?
2014 07/29 16:45:26 | | Comment(0)
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日本ではまだあまり一般的ではないがアメリカに行くと、メラトニンといった睡眠導入剤が容易に買える。
脳内物質に近い物質なので副作用も少なく、依存性も低いらしい。値段も安い。
2014年以降、日本では脱法ハーブと呼ばれる合成薬物が社会問題になり取り締まりも厳しくなった。
知恵のない警察は危険ハーブと呼び名を変えて見たものの解決には至らなかった。

そしてそれから3年、相次ぐ政府の政策ミス、失敗、腐敗、不況と重なり、
国民の間では癒しやストレス解消といった言葉から、快楽主義や快感実感といった言葉がもてはやされる事となった。
貧富の差は顕著となり、景気回復、デフレ脱却といった嘘をやっとハッピーな国民も気づくことになった。

俺の名前は谷口文男。今年でもう50になる。
サラリーマンをしながら細々と生きている、多分?そうだったと思う。
あれっ?どうしたんだろう?
ナンダッタッケ?

なんか凄く毎日幸せな気分なんだ。
愛や平和がいっぱいで、お腹もいっぱいで、みんな愛してくれて。
あれっ?どうしたんだろう?

日本中が騒いでいる。何だろう?
自然至上主義?自然が一番?危険ハーブをやると頭が馬鹿になるぞ。馬鹿になるぞ〜!。
それ以上に規制により価格は高騰。貧乏人の俺が買える訳がないではないか。ふん!。

2014 07/28 19:57:52 | ブログ日記  | Comment(0)
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俺はちょっと小洒落たカウンターでカクテルなど嗜んでいる。
俺の名前は谷口文男、平凡といえば平凡極まりない名ではあるが。
俺には天性の才能がある。それは話術である。俺の巧みな話術で落ちない女はほぼいないという自信がある。
小銭のある時は出会いを求め、女が寄ってくる店をチョイスしては出かける。
そしてそういう店には一人ぐらいは寂しそうに飲んでる女がいるものだ。
そして今日も絶好のターゲット発見。
髪の長いその女はこざっぱりとしたスーツ姿。どこか大きな会社のセールスレディってところか?
スリムだがスタイルの良さがスーツの上からでも伺える。
お一人ですか?(俺が敬語を使うのは最初だけだ)
えっ?ちょっと警戒している様子だが想定内のこと。俺は例のごとく陽気に明るく振る舞った。
どうもOLなのは間違いないらしい。(元々そんなことはどうでもいいことなのだが)
話も順調に進んでいる。今日は久々?にありつけるかもしれない。
君って食べてみたい位可愛いね!いつもの調子で軽く言った。
食べて?彼女の反応は少し不自然に思えたんだが、まあ軽い?恥じらいだろうと思った。
瞳の大きな子だ。多分10人が10人美人だと答えるだろう。子猫のような?
いやちょっと違う気がする。猫ではないな。
彼女は真っ赤な血のようなワインを飲んでいる。それがなぜか性的である。理由は分からない。
何か食べない?いえ私はあんまりお腹空いてないから大丈夫です。
何が好き? …肉。彼女は咄嗟にしまったという表情を見せたが その時本当の意味を俺は分からなかった。
1時間は経っただろうか?ほぼお得意の会話は語りつくそうとしていた。そろそろ連れ出さないと…。
場所を変えない?えっ?いいわよ。あっさりと返事。
うまくいく時は簡単なものだ。そうだ、俺には才能がある。
そしてすぐ店を出た。
俺は今、生ぬるい湿気を感じる夏の夜道を絶品の女と歩いている。
繁華街が少し寂しくなる路地の先はホテル街。いよいよである。
ちょっと休んでいこうか?半世紀以上昔の陳腐なセリフだな…。
そうね。…うまくいく時は簡単なのだ。現実はシンプルなのだ。
まあ男としての俺の魅力に違いないが。小躍りしたくなる衝動を抑え、一番手前のホテルにかけ込む。
そして少々かび臭い廊下を抜け、部屋に入ると精一杯のかっこをつけ抱き寄せた。
先にシャワーを浴びるね。それから唇を引き寄せようとした。
2014 07/28 17:37:12 | ブログ日記  | Comment(0)
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