どんなスポーツでもこの三者の関係はほとんどの場合複雑で単純なものではありません。レベルを問わず、それぞれに思いや言い分はつねにあり、しかもそれは時間の経過や成績、また選手の進歩の過程や度合いにおいても変化し続けます。

言い分とは価値観を反映するものであり、価値観とはその人の「物事に対する優先順位の付け方」なので、時間の経過に伴う身の回りの状況の変化とともに変わっていくものだと思います。「変わっていく」。ここが難しいわけですが、時間が経てば三者それぞれの言い分に違いが出てくるのは当たり前。立場が違う訳ですから何時までも一致する訳がない。これを三者が受け入れ、(三者といってもこの辺はコーチと親ですが)譲り合い、尊重し合い、力を合わせればすべて上手くいくだろうと思う方もいらっしゃると思いますが、そんな事はめったにない。あったとしてもそれですべてが永遠にうまくいったなんて話聞いた事がありますか?でもまずそこを乗り越えなければ先に進む事は難しくなる。

映画「Rocky The Final」でロッキーが親の最後の挑戦を理解できない息子に言いました。

“お前が生まれた時、俺は母さんにこの子は世界一の子どもになると言った。時は流れ、お前は成長して自分で生きるようになったがどこかで間違いを犯した。自分のふがいなさを他人や社会のせいにするようになった。人の陰に指を指してコイツのせいだ、アイツが悪いんだと。それは卑怯者がする事だ。お前はそうじゃない。

人生はサンシャインレインボーばかりではない。人生はリングより厳しいんだ。人生ほど厳しい戦いはない。油断すれば足下をすくわれ地獄の果てまで落ちていくぞ。それでもそんな時、大事なのは立ち上がる事だ。どんなに強く打ちのめされても立ち上がり、前に進み続ける事だ!勝者は皆そうしてきたんだ!”

そもそも私にとってフロア(体育館や選手権会場)は選手達の聖域。主役はあくまでも選手です。コーチは選手に選ばれたからそこにいるのであり、そこにいる以上、選手の親はそのコーチを信頼しているはずです。かなり前にCOレターで書きましたが、選手の親に求められる最低限の事とは「選手とコーチを困らせない」。選手の親としての役割は数えきれないほど沢山ありますが、たとえば親が多くを望まず、何もやらなくてもこれだけを守っていればコーチと選手は文句を言うべきではありません。ただしそのクラブ(クラス)にほかの選手達がいる場合は同じメンバーの親としてやるべき事はその他保護者達と平等にやっていただく。「困らせない」とはそういう事です。

選手はコーチを選ぶ権利がある。とすれば親はクラブを選ぶ権利があります。現在のクラブに納得できない場合は気持ちを抑え、考えを整理してからコーチと話し合い、それでも納得できない場合はなぜ納得できないのかを選手(娘)に話し、親子で合意すればクラブを移ればいいだけの事。お金を払い、娘を預けているのに文句ばかり言う親ほど見苦しいものはありません。「よそのクラブは遠くて送り迎えが出来ない」なんて言う親はここでは論外。

コーチの立場では選手の親に文句を言わせないほど練習を充実させ、結果も出せばいいだけの話ですが、(それでも文句を言う親はいますが)スポーツはそんなに甘くはない。そのクラブに何人も選手がいる事を前提にすれば全員に勝たせるのは不可能。他団体の選手達も大勢いる訳で、自分の選手達だけがいつもそんな簡単に勝ち続ける事なんてありえません。コーチは選手が勝つために全力を尽くす義務はありますがスポーツである以上、優勝させる責任はありません。

選手権では他にも沢山がんばっている選手達がいるのに、それも含めて大きな挑戦となるのに、「娘を1位にして下さい!」なんて言う親には「ハイハイ」と答えるしかないでしょう。

コーチであれば誰でも必ず経験する問題と言えば「練習に口を挟む親」。どんなコーチでもそんな親に対して一度は「だったら自分がやれ」っと思った事があるでしょう。そう思ったのならその場で言えばいいんですよ。言わないからストレスになる。(ここは親も同じ)「ここの指導者は私であり、練習中は他の選手達もいるので一保護者の自分の娘に対するご指示、ご指導はご遠慮下さい」と。まずは黙っていただいてからその行為が何故いけないのかを冷静に親に説明する必要がある。時間がなければその日のうちに自分の考えを手紙に書き、後日手渡しすればいい。大事なのは親本人ではなく、その行為をはっきりと否定する事。これがまだ出来ないコーチ(資格は持ってるけど能力が足りない)はその時点では泣き寝入りするしかないでしょう。

大きな課題だと思うので長々と書きましたが、コーチと親の問題を解決するいい方法なんてありません。一人一人、その時その時ですから。唯一確かな事は子どもに罪はないという事。親の意見とコーチの方針が摩擦を起こしている間、子どもの未来は置き去りにされている事を自覚しましょう。そして子どもはその大人同士の摩擦に気づいている事も知っておいて下さい。

大会会場で早朝からカメラ席の場所取りで並ぶ方達はコーチを撮りに来たのでしょうか?スタンドを埋めるお客さんは選手の親を観に来たのでしょうか?これを読むあなたがコーチであれば、選手の親の問題を簡単に他人に話すのは止めましょう。あなたが親なら娘は団体に所属している事、組織の一員であることを理解し、その団体はどこであってもあなたの娘だけに対してあなたが願うような指導が出来ない事を受け入れて下さい。他の保護者達が全員あなたと同じ事をやったらその団体がどうなるか想像してみて下さい。周りが見えなくなっていて、自分だけは何をやっても許されると誤解していませんか?そんなあなたの娘がたとえ選手権でいい結果を出せたとしても、日本一になったとしても、あなたを知っている周りの方達から娘が心から祝福されると思いますか?いい結果さえ出ればあなたと娘は幸せですか?

もし子ども(選手)がいなかったらあなたは親でもコーチでもありません。
2008 09/22 10:22:18 | none | Comment(0)
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