通説にとらわれない新しい歴史解釈

2009年 06月 の記事 (1件)

 太平洋戦争勃発に先立つこと5年前の昭和11年2月26日早暁、目睫(もくしょう)に迫った日本の破滅を座視するに忍びず焦慮した安藤輝三大尉と野中四郎大尉を中心とする青年将校の一団は千四百名余りの兵を動員し、日本を救うべく当時の内閣総理大臣岡田啓介を始めとする重臣達を襲撃して一挙に昭和維新を実現して外交と内政を改革しようとした。
 この襲撃により岡田首相の義弟であった松尾伝蔵秘書官が首相の身代わりとなって殺害され、大蔵大臣の高橋是清、教育総監の渡辺錠太郎大将、内大臣の斎藤実と警護の警官五人が惨殺された。彼らは昭和維新という困難な大改革を実現するには自分達があまりに微力であることを良く認識していたからこそ、内閣の重臣達を皆殺しにするという極端な方法ー言い換えれば恐怖の威力を利用して絶対多数を占める反対勢力(現状追認派)を押さえ込み一気に国家の改造を実現しようとしたに違いない。
そして青年将校達は隆車に斧を振り上げ打ちかかった蟷螂(とうろう)のごとく踏み潰された。

 老臣達を惨殺された昭和天皇の怒りは激しく、青年将校達の言い分には耳を貸さず「朕が股肱の老臣を殺戮す、此の如き兇暴の将校等其の精神に於いても何の恕すべきものありや」「朕が最も信頼せる老臣を悉く倒すは、真綿にて朕の首を締むるに等しき行為」と最初から青年将校達を叛徒と断定し、自ら近衛師団を率いて鎮圧されようとしたため、彼等の運命はここに極まった。全面的な敗北である。軍事裁判の結果は北一輝等の事件に関係した民間人を含めて死刑十九人、無期七人という青年将校側の惨敗であった。

 では、処刑された青年将校達や殺害された重臣たちの死は犬死であったのだろうか?私は否と答えたい。その理由は莫大な犠牲を払った敗戦の結果という実に不幸な形ではあったが、2・26事件は日本の戦後の民主化改革の原動力になった可能性が高いからである。終戦後最初の内閣であった東久邇宮内閣では二・二六事件には直接関係していなかったが皇道派の将軍として予備役に回された小畑敏四郎中将が国務大臣として入閣していたが、小畑は青年将校の重鎮であった大岸頼好大尉をブレーンの一人に加え度々その意見を聞くことがあったそうである。
戦後、GHQでは2・26事件を日本の民主化運動と評価したそうである。実際、すでに指摘されていることであるが、戦後GHQによって行われた日本の民主化政策は青年将校達が聖典とした北一輝著の「日本改造法案大綱」の内容と酷似しているのである。
 具体的には農地解放の実行、華族制度、貴族院、枢密院の廃止、天皇家の財産の国有化、財閥解体、私有財産の制限、五歳から十五歳までの無償の義務教育等である。
しかし、農地解放一つとっても、あのような大改革は日本軍が武装解除されて解体された状況下で初めて可能であったろう。
 
 2・26事件が分かりにくい原因の一つは決起趣意書が難解な言葉を用いて書かれていることと具体的な政策が掲げられていないことと関係があるだろう。彼らがクーデター成功後の具体的な青写真を公にしなかったことは軍人の政治関与を禁止した軍人勅諭を彼らも公然と無視することができなかったこともあるだろうが(軍人の政治意見公表は陸軍刑法に違反し、禁固三年)、もっと明確な理由について首相官邸襲撃に参加して終身禁固の判決を受けた池田俊彦元少尉が貴重な証言を残している。
(「生きている2・26事件」池田俊彦著 文芸春秋社刊)
「我々の同志首脳は機会を捉えて、裁判の打ち合わせをひそひそと行っていた。それはこの法廷闘争で何を眼目とするかということであった。農民の救済、農地解放、財閥解体ということを強く主張すると、左翼革命のように受け取られるので、第一の眼目としては統帥権干犯の賊を討ったのだということでなければならないということであった。
そうでなければ陛下の軍隊を率いて起った根拠が無くなるのだ。
このことは裁判開始以前からひそかに連絡をとって打ち合わせしていたようである。当時の世相からして、社会主義的主張などは赤化思想として当局から厳しく糾弾されていたからである。決起の趣意書もこの配慮を以って書かれている。現在これを不満とする一部の社会学者や歴史家がいるが、それは歴史に隠された事実というものがあることが解らないからだ。歴史には何時の時代でも当時は言うことができなかった隠された事実があるということを忘れてはならないと思う」

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2009 06/23 20:26:25 | none | Comment(0)
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