5月の夜の雨は激しい。
  荒れた海が、
  暗紫紺色の夜空を幾層にも覆い、
  落ちてくる。
  雷雲のうねりは高波のようだ。
  非常階段の途中、
  佇みながら、
  なつかしい詞を想い出す。

    25階の非常口で
    風に吹かれて爪を切る
    たそがれの街 ソリテュード

    だから好きとか嫌いの問題じゃなくて
    いつか馴れ合う気安さがいやなの
    うまく云えなくてごめんね ソリテュード

    捜さないでね
    醒めちゃいないわ
    だれよりも愛している 
    そう云いきれるわ
    だからなおさら
    ままごと遊び
    男ならやめなさい
    そんな感じね
    Let's play in solitude

    まるで巨大な怪獣のように
    闇にそびえたホテルに泊まる
    目の下にはシティーライツ ソリテュード
    決められたレイル・ロード走ってゆくように
    色褪せた夢を見て流されるなんて
    
    だれもみなストレンジャー
    初めは他人
    想い出はいらないわ
    バックひとつで

    捜さないでね
    醒めちゃいないわ
    だれよりも愛している
    でも
    捜さないでね
    そして
    少し憎んでね

  夜空が青磁色の光の輪をひろげた。
  霹靂だ。
  今宵、
  あたしは、
  別れを告げよう。
  歌詞の気分、
  そのままをあなたに伝えたい。
  捜さないでね、少し憎んでね、
  そうして、
  いつか、
  忘れてね。
2009 09/16 20:05:38 | none
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     ゆうべはさみしさにふるえて
     眠って夢を見た
     もつれた糸のように
     あなたとわたしとだれかと
     過ぎ去れば思い出になる
     今をちょっと耐えれば
     わたしはここにいるわ
     いるわ

     終わりのない歌を
     うたっているのは
     わたしです
     ときには声かすれ
     ひとには聞こえぬ歌です
     でもいまがいちばん好きよ
     すこし曇り空でも
     だれかわたしを抱いて
     抱いて

                       惣領智子
 
           



   ツンデレとは、ツンツンデレデレのことらしい。
  ツンツンは、高慢・冷酷な態度をとる行為で、
  デレデレとは動作・態度・服装などに締まりがなく、だらしないさま、
  もしくは異性に心を奪われたり愛情におぼれたりして
  毅然とした態度がとれず締まりがないさまをあらわすのですが、
  東京秋葉原には、ツンデレ喫茶なるものがあり、
  その意味はうねり狂う波にあらわれて擬態を表するにいたります。
  珈琲だけではなく会話(でしょう、きっと)も楽しめるという空間概念は、
  懐かしいなぁ、
  ウッドアートカフェがそうでしたね。
  

   さて、前置きはこの辺にして、本編にとりかかりましょう。


   10歳まで育つ環境、親との関係などが、
  人格形成に多大な影響を及ぼすのは多くの学者が説くところでしょうし、
  完全否定しうる逆説がもっかのところ発表されていない以上、
  全てではないが、限りなく全てに近い影響は受けるものと考えられるでしょう。
  南原は某国立大学文学部の教授です。
  厳しい父母・祖父母に育てられました。
  好奇心旺盛な幼児期を厳格なる完全管理の基に行われた教育の集積が
  彼の人格形成をどのようにととのえたのか、
  彼のその後の人生に必ず相応するでしょう。
  南原は53歳の現在まで、独身でした。
  年に数回依頼される講演が秋葉原の文化スクールで開催されます。
  今回は「現代フランス文学」について、日仏文化財団主催で2時間講演します。
  午後18時、南原はオタクの街と化した秋葉原を散策しました。
  講演後の熱を冷ましたかったのかもしれません。
  途中咽の渇きを覚え喫茶を探しました。
  どこでもよかったのですが、なんとなく惹かれたロゴは、
  メイドカフェ白山。
  雑居ビルの2階にあがり店の扉を押し開くと、
  「いらっしゃいませ!」
  若い女性の輪唱に迎えられます。
  ウエイトレスとおぼしき数人の女性が60度の角度で辞儀。
  そろいのメイド服に身を包み華やいでいます。
  異次元に迷い込んだような不安と動揺が
  瞬時に理性を喪失させ
  四肢を膠着させました。
  席に案内されメニューを渡されます。
  「コースはどうなさいますか?」
  丁寧な言葉遣いです。
  南原は感心しながらメニューをのぞきました。
  各コースが1000円で、
  お姉さまとコーヒーとかツンデレどぇすとか、
  でれでれメイドとか書かれてありますが、
  さっぱり理解できません。
  困惑しながら「お奨めはどれですか?」
  問うと、
  「当店のお奨めはツンデレどぇすコースです」
  とメイド服のウエイトレスは微笑みながら応えます。
  金髪でした。
  幼く見えますが、
  目鼻立ちはすっきりしていて一重の目が澄んでいます。
  短い何重にも重なったように見えるフリルだらけのスカートからのぞく脚は、
  白磁器のような質感でスラリと長い。
  「それでお願いします」
  南原はオーダーしながら観察していました。
  数分後、
  ガチャンという陶器音とともに珈琲がテーブルに置かれます。
  テーブル一面に黒琥珀色の滴が散りました。
  「ほら、持ってきてやったよコーヒー」
  豹変です、
  「は…」
  「は、じゃねぇよ、ありがとう、だろ?」
  「あ…ありがとう」
  「ミルクは入れるの?砂糖はどうなの?早く言えよ!」
  えらい剣幕です。
  「ミ、ミルクを…」
  「まったく愚図なんだから、こっちは忙しいんだからね」
  「…申し訳ない」
  「コ難しい本ばかり読んでるとドンドン白髪が増えるよ。
   おじさん、煙草吸うの?」
  大事なランボー詩集の原書に珈琲こぼしたのは君じゃないか、
  などと南原は、独白しながら、
  「吸いません」
  「あ、そう。なにか追加あったら声かけて」
  少女は去っていった。
  珈琲は正直美味しくはなかったはずですが、
  たとえ美味しいとしても味わうことはできません。
  繊細な味覚が麻痺するほど鼓動の高鳴りがやまなかったからです。
  読書にも集中できなくなりました。
  ドン!という衝撃とは違う、
  これまで体験したことのない
  鋭利な日本刀で身を裂かれたあとに噴き出す血のような感情が、
  みるみる南原を支配しはじめていましたが、
  彼にはそれがどういう情念に根ざすのか解かりません。
  味気ない珈琲を休みなく啜り飲み干しただけでした。
  「どうしたの元気ないわよ」
  少女がいつの間にか傍に立っていました。
  「あ、いや、も、もう帰るから」
  狼狽して舌がもつれてしまいます。
  「さっきはひどいこと言ってごめんなさい。
  ほんとは素敵な人だなと思ってたんだけど、
  つい汚い言葉を投げかけてしまったの」
  いくぶん首をかしげて満面の笑みには謝罪と慈愛が見えました。
  「わたしミューって言うの。また来ていただけたら嬉しいわ」
  頬に紅がさしています。
  「いってらっしゃいませご主人様!」
  南原は照れながら優しい声を背に店をあとにした。

  購入総額がきっちり1億円だった地上12階のマンション、
  リビングで、ワイングラスにブリジッドボルドーをなみなみと注ぎ、
  英国から取り寄せたカウチソファーに横たわり、咽を潤す。
  カマンベールチーズをかじりながら、
  南原は惚けるように夜空をながめていました。
  夜空はどこまでも深く紫紺になずみ、
  ちりばめられた星のきらめきが馳走でした。

  電話のベルで仮寝を破られます。
  受話器を取り上げて耳にあてると、
  「もしもし南原さんのお宅ですか?」
  若い女性の声、
  「はい、そうです」
  「あ、先生ですか?あたしですミュー、メイドカフェ白山の」
  「はい、覚えていますよ」
  「先生、手帳と免許証なくなってない?」
  「あ、待ってください確かめます」
  南原は寝室のクローゼットに吊り下げられた背広の内ポケットを調べます。
  ありません、スケジュールを書き込んだ手帳と運転免許証が。
  「はい、どこかに落としたようです」
  「ここにあるもの、今から持っていこうか?」
  「いえ、明日、お店に伺いますからその時にでも」
  「ベランダに出て下を覗いてみてよ」
  言われた通りベランダから見下ろすと、
  「おーい!!」
  金髪の彼女が玄関ポーチの両脇に花壇に座り手を振っています。

  「大学の先生だったんだね、あ、ごめん、手帳の中見ちゃったんだ」
  「かまいませんよ、それよりも、わざわざ届けてくれてありがとう」
  「うーん、この珈琲美味しい」
  ガーナ産のモカ・マタリでした。
  「どうしてあんな店に来たの?」
  「いや、あんなコンセプトの店だと知らなかったんです」
  「楽しかった?」
  「い、いや、パフォーマンスはともかく、君と話せて楽しかった…」
  素に戻る彼女。
  「あ、別にそういう意味じゃなくて、とにかく、君のことが印象に残った…」
  彼女が立ち上がり、食卓にのぼり猫のように這いながら、
  南原の肩をつかんで降りると脚を開いて膝の上に坐りました。
  「あたしも先生のこと好きになっちゃったんだ、ホントよ、オタクの若い客
   ばっかでウンザリしてたの、だから先生がとても新鮮だった」
  汗が止まりません。
  鼓動は高鳴り声も出ませんでした。
  「あたしと寝てみる?」
  返事は彼女の口唇に奪われてしまいました。

  その夜からひと月が過ぎました。
  ミューは毎週土曜日に南原の家を訪れ日曜の朝帰っていきます。
  南原にとって初めての女性でした。
  これが恋なのか、曾て経験したことのない世の中の事象すべてが
  鋭敏に反応してしまう感性がありました。
  月を見ても、雨を見ても、雑踏に咲く花でさえ、
  はかなげで愛おしく思えてしまいます。
  吹きつける風に彼女の匂いをかぎ、
  目をつぶると裸になった彼女の放恣な影が明滅します。
  南原は物思いに耽るようになっていました。
  そのさまを比喩する美しい字句がありますね、
  そう、南原は、惚(ほう)けていた、のです。

  そんな或る日、マンションの一階ロビーにある郵便ポストに、
  宛名と差出人のない茶封筒が投函されていました。
  部屋で開封すると、たくさんの写真が入っています。
  南原とミューとが全裸で抱き合い愛し合う生々しい画像でした。
  「いったい、誰が…」
  4つ折りの紙片にメッセージが印刷されていました。
   ”ネガを200万で買ってください。金は3日後までに用意し
   4日後渋谷のハチ公前午後9時に持ってきてください。
   警察へ報せればどうなるかは言うまでもないですね”

  南原は定期預金を解約し、
  4日後、渋谷のハチ公前で背中から振り向かないようにと指示する男に、
  金を渡し、ネガとCDを貰いました。
  これで大丈夫、南原は安堵して渋谷を離れました。

  ですが、翌日大学の正門掲示板に南原とミューの写真が
  掲げられていたのです。
  数十人の学生がそれを面白可笑しく批判する騒めきは、
  南原には最早聞こえませんでした。
  理事会に呼ばれ、真偽と仔細を尋問されます。
  南原は謝罪、辞表を提出し、受理されました。
  学長室を後にする南原に後悔の念は感じられませんでした。

  その日の夜、南原はミューに出来事のあらましを説明し、
  「ごめんね、全部私が悪かったのです」
  と深々と頭を下げた。
  「大学やめちゃったの?」
  「私にも恥の観念はあります。でもねそんなことはどうでもいいことです、
   私だけならまだしも、君を傷つけてしまったことが残念でなりません」
  「ちょっと待って、それってどういう意味なの?」
  「君の裸体が学生たちとはいえ公衆の目にさらされてしまった。
   どんなことでも償いますから、叱ってください」
  「何言ってんのよ、あたしなんかどうでもいいじゃんか、何、償うって」
  「若い君の将来を傷つけてしまった罪は重い。
   許されることじゃない」
  「信じらんない、あたしがグルだってこと疑わなかったの?」
  「え?」
  「あなたはバカよ、そんなのあたしが協力しなきゃ写せる訳ないじゃない、
   そんなことも疑わなかったの?」
  「はい、疑いませんでした。いいえ、それを知ったとしても、君に罪はない、
   君を傷つけてしまったことにかわりはありません、悪いのは全て私です」

  血相を変えてミューは部屋を飛び出していきました。
  口を付けていないコーヒーカップから幽かに湯気がたゆたっていました。

  その翌日、警察からの呼び出しがありました。
  ミューが自首し脅迫事件が明るみに出、犯人はすべて逮捕されたとのこと。
  「彼女は、服役しなければならないのでしょうか?」
  刑事もあきれる質問を南原はしました。
  「あなたには被害者意識がないのですか?」
  刑事が問います。
  「正直ありません、私には当然の罰だと思っています、しかし、彼女に
   罪はありません、悪いのは彼女を誘惑した私です」
  ますますあきれた刑事は、
  「自首ですし、捜査に協力してくれましたことと深く反省していることを
   考えますと、すぐに釈放されると思いますよ」
  そう親切に予測を教えてくれました。

  数日後、警察署の前に、ミューと警察官の姿がありました。
  膝まではねかえるような激しい雨がふっていました。
  「傘貸してやろうか?」
  警察官が訊きました。
  「いいえ、濡れて帰ります」
  そういってミューはお辞儀して警察署の入り口まで
  濡れながらとぼとぼ歩きます。
  水の中を泳ぐような雨の滴が、視界を薄紫色に霞めてゆくその先、
  黒い影がひとつ佇んでいました。
  「待っていましたよ、お帰りなさい」
  「せ、先生!」
  「よければ、私のところにしばらく居てくれませんか?」
  涙が視界をいよいよ晦ませ、からだの底から押しよせる激情がミューの声を
  消し去りました。
  「傘もってきました、はいどうぞ」
  差し出す南原の右腕をすりぬけたミューは南原に抱きつきました。
  「要らない、一緒に入るから」
  「はい、帰りましょうね、しばらく私の家に居てくれますか?」
  「しばらくなんて、ずっと居ていい?」
  「はい、ずっと一緒にいてください」
  「もうー、ホントに鈍いんだから、先生、アタシプロポーズしてるんですよ」
  「え?そ、そういうことは、いや、ということは…」
  狼狽する南原の声はミューのくちずけに消されました。
  ながいベーゼが続き、
  「ミューさん、私と結婚してください」
  返事は書くまでもないですね。
  

 
         もうひとつの心が
         わたしのなかにある
         それは人恋しさに
         いつでもふるえている
         心にしまい込む
         悲しみの数を
         数え疲れたときは
         ただたちすくむだけ
         こんな日はいますぐに
         あなたに会いたい

         もうひとつの季節が
         わたしの中にある
         それはひととの出逢いや別れを
         かわりゆく
         わけもなく疲れて
         町の騒めきに通りすがりの優しさ
         求めるわたし
         こんな日はいますぐに
         あなたに会いたい

                         ティナ

                弘兼憲史 黄昏流星群より



  
  
  
  
  
2009 08/30 18:55:06 | none
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金曜の夜帰る

   白い長椅子で横になり
   BlondieのMariaを聴きながら
   大沢在昌の天使の牙を読んでいたら
   ヒロインの神崎はつみがどうしても
   だれかに似ている気がしてきて
   気になって気になって
   どうしても思い出せない時に
   ふと窓辺の
   うすくれないに小さな花をつけた木瓜の小鉢を見つけたら
   約束を思い出したんだ
   小説は
   まだ2章しか書けていなかったけど
   ひょんなことで思い出しちゃって
   まったりもしてられなくなってさ
   ヒロインがだれに似ているかなんて
   すっかり忘れちゃって
   煙草をくわえながら
   メールボックスをくまなく探したよ
   どこかにあったはずさ
   見逃さないようにひとつひとつ件名を読みながら
   見つけた時には日が暮れていた
   そうだったね
   君だったんだね
   似てたんだ
   はつみがもっていた容姿ではなく
   あらがえなかった彼女の月日が
   君に似てたんだ
   だから
   君と
   そんなにはっきり
   約束したわけじゃないけど
   スターリングZippoで火をつけて
   深く吸いこんだ紫煙がまどろむと
   肩の力が抜けたみたいにさ
   なんだか無性に逢いたくなってきて
   胸がうすくれないに満ちあふれ
   マフラー巻かなきゃね
   外は今夜も冷えている
   煙草とライターと鍵と皮の手袋
   ステューシーのダッフルコートを羽織って
   あわてない
   ゆっくりとゆっくりと
   満ちてく月でも見上げながら
   金曜の夜帰る

    だいじょうぶだよ   
     ふところのナイフは研いでないから
2009 08/16 11:48:18 | none
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  「花岡ジッ太、14歳、5月13日生まれ、B型、独身、何故か子供がふたり」

  中学1年の春、
 初めての生徒会立候補立ち会い演説会は、
 春光ふりそそぐ運動場で、
 3学年36クラスのべ1620名の生徒の前、
 壇上にのぼった2年生の第一声がこれでした。
 失笑と痙笑が揺れながら波状に伝染し、
 絶笑へと変ずるのに、
 数秒も要しませんでした。
 立候補者はそれから公約らしきものを論じたと推測しますが、
 記憶にのこっていません。
 彼は、勇躍、当選し、
 2年生にして生徒会長に選出されました。

 翌年、再び彼は生徒会選挙に立候補しました。
 昨年同様生徒会長候補でした。
 2年生になっていた私もふくめ全生徒は、
 恍惚とした期待にふるえていたでしょう。

 「花岡ジッ太です、ぼくの持ち時間は5分です。諸君、隣同士で私語雑談してください、
  僕は何もしゃべりません」

 彼は宣言どおりまったくなにも喋りません。
 最初の1分は、
 多量の溜息が広い運動場に湧き、
 大気を歪めるうめき声となりました。
 次の1分以後、
 彼の目的に気付いた生徒たちが目笑に感嘆を帯びさせ、
 絶笑にはぜました。
 冗談やない、立候補してなにも喋らんとはなにごとか、
 そう注意する教師もいず、
 陶然とした笑いをうかべる始末で、
 ながい3分間、
 3300の瞳が彼を見守っていました。
 彼は記録的票数を得て再選しました。

 漫画のように思えるでしょうけど、
 実際に起こった風景です。
 彼がどのように生徒会長を2年つとめたのか、
 覚えていません。
 ソツのない無難な所業ほど、
 印象に残らないものですから、
 彼は申し分のない生徒会運営をつづけたのでしょう。

 今思い出せば、
 彼の風貌は小泉元首相に似ていました。
 そう、
 あの系統の顔は、
 こういう人の度肝を抜くような発想に秀でているのでしょう。

 何かやってくれる、
 何か驚かせてくれる、
 そういう期待は、
 政治に関係なく
 私たちの日常的な内からふくらんでくるものです。

 さて、3年の春、
 彼のいない生徒会選挙が行われました。
 開票後、
 選挙管理委員会から36名の担任教師に
 緊急の文書が渡されます。
 「今回の選挙は無効となりました。
 無効票の数が1000を超えています。
 立候補者の名前をきちんと筆記するよう宜しくご指導下さい。」
 中学校創設以来、
 未曾有のできごとでした。
 学校側としても座視できず、
 指導者としての能力が試されているかのようでもありました。

 教壇に仁王立ちする担任は私たちに下問しました。
 「『バットで頭を殴るのは危険だ』これ書いたん誰や!?」
 「僕です」
 ひとりの生徒が立ち上がりました。
 「『すけべえと変態は違う』これ書いたん誰や?」
 「僕です」
 「『ジュリー』これ書いたん誰や?」
 「わたしです」

 この調子で、担任はクラスの無効票の筆記者を特定していきます。
 私も立ち上がり、
 ジロリの一瞥をいただきました。
 人の怒気というものは、
 その表情から読み取り伝わるのか、
 表情を読んだあとの内なる状況分析によって生じるのか、
 そのころの私には解っていませんでしたが、
 一瞥から投げつけられた余韻は重く冷たいものでした。
 私が投票用紙に書いたのは「なし」です。
 選ぶ候補がいないから、なし、と書きました。
 興味深いことに、
 白紙の無効票はほとんどなかったようです。
 要するに、
 皆、投票用紙を無駄にはしなかった、
 何かを書いて意識的に無効票としたのでした。

 45名中、38人の無効票の投票者を特定し終えた担任の憤りは、
 南東に面した教室の窓ガラスをふるわせるくらいでした。
 「先生、どうして無効票がいけないのでしょうか?」
 こういう素直な疑問を呈せなかった私は、
 他の生徒同様に不服ながら、
 担任の説教をだまって聴きました。

 1週間後、投票がやり直されます。
 今度の無効票は300。
 有効票が過半数を超えたという判断が選管でなされ、
 生徒会長と生徒会役員が選出されました。

 生徒である以上、投票するのは義務である。
 拒否は許されない。
 無効票を投ずる事は校則違反である。

 そこらじゅうで今も耳にする理論ですね。
 本当にそうなのでしょうか?
 腑に落ちなかった私は生徒手帳にある校則をくまなく探しました。
 ですが、無効票を投じてはならない、という規定はありません。

 花岡ジッ太が立候補していれば、
 このような椿事は起こらなかったでしょう。
 彼がいるのといないとのどこが違うのか。
 それは生徒たちがいかに彼に魅力を感じたかによるでしょう。

 真面目が悪いのではありません。
 公約が悪いわけでもありません。
 では何が悪いのか?
 魅力がないことが罪だったのです。

 小泉が安倍に首相の座を譲り、
 福田を経て麻生が総理大臣となりました。
 さて、
 皆様、
 14歳の私が感じた空虚な飽和感を感じませんでしたかここ数年?
 私は感じているのです。
 魅力のない者を選出するのは辛い事です。
 小泉の政策が悪いとか、
 どこそこがいけない、
 とかの批判は簡単です。
 文句があるのなら、自民党に投票しなければいい。
 投票しなければ、
 自民党がしでかす数々の失政失策に責任を感じることはありません。

 投票という行為は、
 責任を持つということを自覚し、覚悟しなければならない、
 と私はつねづね考えています。
 国政に参加するという行為は、
 投票する行為だけで果たされるものではなく、
 選出した政党や政治家に対しても責任を持つということでなければなりません。
 
 国民の義務だからという、
 しかつめらしい優しい論理に耳を貸さないでくださいね。
 そう言う人たちは憲法を理解してはいません。
 それこそ、
 国は国民によって成り立っているという絶対的論理を
 ねじ曲げて解釈する佞論です。
 投票する政党も議員候補もいないのに、
 無理に意中ではない者に投票する行為を、
 国民の義務だと平気でのたまう頭脳構造を信じないようにしましょう。

 選ぶべき人がいないのだから投票しない。
 それは、
 当然の権利であるべきであり、
 何と言われようが誤ったことではありません。
 絶対的真理は、
 いかなる利便や事情に左右されてはならぬものです。

 投票率が50%に満たない選挙は無効です。
 しかし、
 現実はそれでも当選者が出ている。
 過半数の国民が選出しなかった候補者に、
 国民代表の任を与えるわけにはいきますまい。

 選挙で議員が選ばれないと、
 国会が成り立たなく、
 緊急の立法が行えない、
 と発言する議員がいました。

 そうでしょうか?

 一度も選挙が無効になった経験のないあなたに、
 どうしてそうなると断言できるのでしょうか?

 私は一度は、このような未曾有の混乱があってもいいと考えています。
 そうしなければ、
 日本の政治は変わりはしないとずっと思案していました。

 しかし、今回の選挙でも、
 無効票や投票しなかった有権者の意思は無視されるでしょう。
 そして投票した有権者たちも、
 撰んだ議員に責任をもちはしないでしょう。

 何故、責任をもとうとしないのか、
 何事かを選るという行為には、
 何度でも書きます、
 大変な責任が生じます。
 責任が嫌なら、撰ばなければいいのです。
 撰んでしまった以上、
 選んだ人には、重い責任を担わなければなりません。
 それが国政参加であり、
 屁理屈論者が謂うところの、
 国家への意識でしょう。

 以前、私は「大義の春」という作品を書きました。
 そこで成田紛争のことについて色々と私見をのべました。
 福田内閣下に於て行われた恥ずべき強制執行には、
 福田総理をはじめ自民党に投票したすべての有権者にも責任はあるのです。
 それを自覚できないからこそ、
 選んだ人が悪政をおこなっても陰で批判するしか出来ない事になってしまう。
 では、自民党を選んだ全ての有権者に成田における数々の残虐行為を
 正当であったと賛同しないまでも反対しない旗幟の鮮明さがあるのなら、
 私は何も言いません。
 あの残虐行為は、自民党を選んだ全ての有権者の意思であったのですから。

 撰んだ者への諌言は必要ですし、欠かすことの出来ない自浄機能です。
 しかし、選らなかった者たちへの懺悔も忘れて欲しくはありません。
 なぜなら、そういった責任転嫁や責任回避こそが、
 現在の政治の腐敗を招いているのですから。

 小泉純一郎、
 わくわくさせてくれる政治家でしたね。
 しかし、
 私は小泉以前も小泉以後も、
 それどころか、この33年間、
 自民党議員に一票を投じたことはありません。
 自民党政権を許せないからです。
 
 あるいは政権奪取を成し遂げるかもしれない民主党も嫌いです。
 鳩山、管、小沢、執行部は元自民党員ばかりだからです。

 私は騙されません。

 花岡ジッ太のような、一般庶民が気軽に立候補できるような、
 そんな国にならないものでしょうかね。

  満面に笑を、トゥース!
  
 
2009 08/09 23:00:50 | none
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  三つのあたいに
  お人形があって
  金色の髪と
  ブルーの瞳が
  不思議

  不思議が二つ
  寄ってきて
  悪意がひとつ
  できました

  パーマネントした金髪を
  鷲掴みに
  ひっぱると
  からだが
  ついてくる
  
  にらみつけても
  ふりまわしても
  たたきつけても 
  まだまだ
  ついてくる

  悪意の右翼は
  蛇で
  悪意の左翼は
  サソリなの

  両翼をなくした
  悪意は
  慈愛にかわる
  
  だから
 
  お泣きなさいな
  なみだを
  たくさん
  お流しなさいな
 
  あなたは
  女の子なんだから
  ママの言うとおり
  しずかに
  なさい
  上手にできたら
  こっちへおいで
  膝の上
  おすわりしたら
  いっぱい
  抱きしめてあげましょう

  三つのあたいに
  お人形があって
  金色の髪と
  ブルーの瞳が
  不思議
  
  
2009 07/25 00:14:18 | none
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よくわかっているよ、
   あの狂おしい青の時代に、
   もっと懸命に勉強していたら、
   もっともっと行い正しくふるまっていたら、
   おれもいまごろ家をもて、
   柔らかいねだいで寝ていただろう

               フランソワ・ヴィヨン「遺言書」より


 好奇心ってのはそもそも薄っぺらなしろものじゃない、
つまり知りたいって欲望は思うよりずっと思いあぐねるもので、
気になることはどうしたってそのままにしておけないってところが人間にはあるものだ。
世界一のグランシェフに天才と言わしめたおじいさんが、
どうして毎日コンビニ弁当を食べているのか、
そこには想像を絶する何か、
ワクワクするくらい痛い過去があるに違いないのです。
他人の苦痛は断言してもいい、
ラ・ペルーシュのお砂糖を3個放り込んだブルーマウンテンナンバーワンの珈琲より甘い。

まぁそんなわけで、
ヒロミとふたり、コンビニで待ち伏せることになったのだ。
おじいさんが現れる。
背中をポンと叩くヒロミ。
「先日のシチューのお礼がしたいわ、イッペイ・タテマツさん」
じいさんの眉間に予期しなかった驚きの蒼い剣(つるぎ)が立つ。
そうでなくっちゃ。
嫌悪感なんて意識してちゃ生きていけない。
腕を取り、いきつけのウナギ屋に強制案内。
逃がしてなるものか。

「これはうまいな、こんなしっかりした蒲焼きを食べるのは何年ぶりかな」
じいさんが美味しそうに舌鼓を打つ。
「でしょう?天才料理人にほめられると案内したアタシも嬉しいな」
箸がとまった。
一瞥(いちべつ)が少しだけ険しい。
「どこで調べた?」
「ミッシェル・ソルマンの『味の庭』という本の中に筆者とあんたが並んで写っていた」
ヒロミが応えた。
「そうか……」
険しさがゆるむ。
葛藤しているまなざしくらいよどむ鏡はない。
だけども、虹彩の波立ちがゆっくり底に沈んでいくのを見逃してはいない、
それは意執からの解放なのだから。
「よかったら、聞かせてくれないか、フランスでの修業時代のこと」
ヒロミの依頼に沈黙が応え、
「………40年以上も前のことだから、あまりよく思い出せないが行きがかり上、仕方ない、話しておこう」

――ホテルの皿洗いから修業は始まった。
何年か働いて調理場にたたせてもらえるようになり、渡仏を考えはじめたのが二十歳の頃だ。
数年後ちょっとしたコネを頼ってパリ行きがかないそうになった。
千載一遇のチャンスだ(載という字は、年と同じです。つまり千年にいちどのチャンスってことですが、ちょっと大袈裟ですね)。
西も東もわからない、フランス語も専門用語以外話せない私を雇ってくれたのは、「ル・グラン」というミシュランの一つ星のレストランだった。
修業は甘くなかった。
誰も何も教えてくれない。
東洋から来たフランス語の解らない若者には言葉ひとつかけてくれなかった。
孤独と屈辱の毎日だった――

「そんな状況でどうやって料理を覚えたの?」
せかされるように、訊いてしまう。
話の腰を折るのは失礼だと自覚していながら訊いてしまう。

――実はつまみ食いだ。
鍋に残ったものをちょっとつまむ。
冷蔵庫にあるものをちょっとつまむ。
減ったのがばれてはいけないから、判らない程度に少量口に入れる。
そのひとつまみのソースや料理を舌の上にころがして、
まろやかさや、香りの立ち具合を頭の中にたたき込んだ。
料理を極めたいなら覚えておくほうがいい、
後味が重要であるのはもちろんだが、
口に入れる瞬間こそが腕の見せ所だ。
香りは、その初めての邂逅の印象が全てを左右するといってもいい。
それがあってこその咀嚼中の味に深みが出る。
今想い出してもよく働いた。
朝は五時から仕込みがはじまり、店が閉まるのが午前一時くらい、アパートに帰って床につくのはいつも午前二時を回っていた。
眠ったと思ったら一時間もたたないうちに起こされてシェフと一緒に仕入れに行くこともあった。
平均睡眠時間はたぶん三時間もなかっただろう――

「そういう時代は何年つづいたの?」
「フランスにいる間は常にそういう毎日だった。
渡仏時代の十数年間すべてそうかな」
「ミッシェル・ソルマン氏とはどこで出逢ったんだ?」
ヒロミが訊く。
「三軒目に働いた『ラ・セルヴィエット』という店だ」
向学心がヒロミの目元をみずみずしく澄ませている。

――休憩時間に調理場の片隅でひとり新しい味にトライしていた男、それがミッシェルだった。
当時は私も彼も下っ端だったが、ふたりとも周囲から注目され始めていた頃だ。
彼は私をライバルとして認めてくれたらしく、よく料理について語り合った。
ふたりが話しはじめると朝まで料理談話は続いたものだ。
ああでもない、こうでもない、こうやってみたらどうか、いやそれは合わない、それならこれはどうだ、あ、それならいけるかもしれない、早速明日試してみよう。
とても楽しかった。
彼は日本から来た私になんの差別もなく接してくれた――

「やっぱり差別はあったの?」
「それはあった。ヨーロッパ大陸には今もそうだと思うが、階級意識が根強く残っている」
じいさんの表情に曇りと険しさが現れた。

――当時のフランスから見れば、東洋からやって来た黄色い人間にちゃんとしたフランス料理を作れる筈がないと思っていたのだろう。
私の作った料理も誰かフランス人が作った料理として認識されることがしばしばだった。
そんな辛さに脱落していった日本人はたくさんいた。
希望と不安、栄光と挫折が、常に隣り合わせで渦巻いてるのが当時のパリだ。
ミッシェルはその後三つ星レストランにスカウトされた。
私もブローニュの一つ星の小さなレストランのシェフに迎えられた。
ミッシェルはそれから次々と創作料理を発表し名声を勝ち取ってゆく。
彼の創作料理の半分は私がミッシェルに教えたものだったが、フランスでは全てミッシェルの創作として受け入れられた――

静聴するヒロミの眉間に剣が立つ。

「私は別にそんなこと気にしないで新しい店「ラ・プラージュ」で新しい創作料理を作りつづけた。
そのうち評判が立つようになり、三年後、店は二つ星を勝ち取るに至った」
「ラ・プラージュにはどんな人が働いていたの?」
「あれは小さな店だった。
若いキュイジニエと、接客係のソフィーという女性の三人でやっていたんだ」
じいさんの額が収縮し、鼻孔がせばまった。

――ラ・プラージュはソフィーでもっていたと云っても過言じゃなかった。
接客、情熱、機転の早さ、人柄、どれも抜きんでていたが、なによりも、人としての品性が備わっていた――

「その褒め方からするとあんたと彼女の間に何かあったんだな?」
「ははは、実はその通りだ」

じいさんの表情が一瞬だけ明るくなり、暗くなった。
そういえば、僅かとは云えじいさんの微笑みを見たのは初めてだっただろう。

――私と彼女は愛しあうようになり同棲をはじめた。
彼女は私と結婚したかったんだと思う。
ソフィーとは1年間暮らしたが、私の帰国で終わった……

「どうして急に?」

――昔、宮廷料理人は自分の味を主君におしつけるのではなく、
主君の舌にさからわぬとみせて徐々に自分の味に惹きこんでゆくものが超一流と呼ばれた。
客の肌艶、背腰の具合、オーダーへの嗜好、
ひとりひとりの客を料理人は把握しさじ加減を変えてゆかなければならない。
いちどきりの客ではなく常連として徐々に自分の味に惹きこんでいった。
だが、
生ガキがもとで、食中毒を起こした客が亡くなってしまった。
……すべて、私の、責任だった。
今でもそのことを考えると、心が痛んで、眠れない……。
食材を管理できなかったということは、料理人として最低だ。
ソフィーは落ち込んでいる私を励ましてくれた。
『あなたの所為じゃない。
あの仕入れたカキは他のレストランでも食中毒を起こしている。
わたしたちの管理とは関係がないのよ、そんなに自分を追いつめないで…』
しかし私はもう料理などではなかった……立ち直れなかった……。
それから間もなく私は帰国した。
最愛のソフィーとも別れた……。
以来三十年間、私は料理を作っていない――

「その後彼女から連絡は?」
ひとは誰にでもそのひとだけの大切なロマンスがあるものだ。
「彼女には私の日本の連絡場所を教えていない、それきりだ」
瞳に透明の被膜がかかる。
「ソフィーは私が愛した最初で最後の女性だった。
今、考えるとひどいことをしたが、それ以来私は女性とつきあっていない。
それが彼女に対する、せめてもの懺悔だと……。
私の中では、……完結している」
「もう料理をつくる気はないの?」
「ははは、もう自信は無いさ。以前ほどの舌の感覚もなくなっているし、手元も覚束ない」
「手は動かなくてもあんたの舌はまだ凄い。このままやめるのはもったいないよ!!」
ヒロミが毅然と云う。
「いや、今から調理場に立つ実力はない」
突然、ヒロミが爺さんの前に土下座した。
「お願いだ!!オレに料理を教えてくれ!!あんたのレシピを教えてくれ!!
レシピがダメなら料理人の心得でもいい!!料理をする人間の哲学を教えて欲しい!!
オレは今までうぬぼれていた。
料理なら誰にも負けない自信があった。
しかし、あんたの作った料理を口にした時、自分の愚かさに気がついた。
なんでもいい!!ひとつでもいいからオレに教えてくれ!!」
どうして男って、真剣になると怒ったような話し方になるのだろうか。
じいさんの顔に父親のような微笑みが映えた。

ヒロミの弟子入りが本格的にスタートしたのは数日後からだった。
アタシの部屋が、彼らの厨房に変身した。
ヒロミのアパートは狭すぎて、調理器具が収まらないからだけど、
これからしょっちゅう一流のフランス料理が味わえる贅沢を味わえる。
それはそれでウキウキしてくる。
たくさんの調理器具がわが家に運び込まれた夜、
ヒロミの修業がはじまったのだ。

「私のフランス料理は古典料理の基礎をひたすら学ぶことからはじまる。
その上で基本を尊重しながら、時代に合わせてゆく。
そこのところをしっかり頭に叩き込んでくれ」
凛々しいじいさんのキュイジニエ姿には威厳さえ漂っていた。
「ほうこれはなかなか立派な舌平目だな」
「アタシが今朝早起きして築地で仕入れてきたの」
「舌平目を使った古典料理はソール・ムニエルだけど、今はどのレストランもそんな古い料理は出さねえよな」
「いや、その古典料理の原形を保ったまま現代化してみよう。
ロール巻きにした舌平目のボンファムだ。
先程も云ったように古典を重んじる正当性と新しい味を探す創造性を調和させるんだ。
いいかヒロミ、料理には足し算と引き算のふたつの方法がある。
足し算料理はいろいろな味や香りを積み重ねてゆくだけだが、それだけに、素材のもつ味が損なわれる危険性が高い。
一般に古典料理はこのやり方だ。
引き算料理は余分な贅肉をそぎ落とすことによって素材のよさをストレートにひき出す方法だ。
昔と違って新鮮な素材が手に入るようになった現代では、素材が形式に優先すると言っていい。
つまり私のフランス料理は古典料理の形式を守りながら、素材を生かすにはどうするかを考えることからはじまる。
時間をかけて完成された形式を一度解体して、それを組みなおす難しい作業だ。
思わぬ成功をすることもあるが大失敗することも多い。
極めて知的で頭脳的なゲームと言える。
だから、料理はおもしろい」

料理が完成した。
舌平目のシャンピニョン・デュクセル巻きサバイヨン焼クリームソース。
横にナイフを入れて半割りにして味わう。
ヒロミが先ず試食した。
「あら、どうしたの?」
咀嚼しながら泣いている。
「ちくしょう!!なんて素晴らしいんだ!なんでこんな絶妙の味がだせるんだ!!」

語学を習得しているとラッキーなことにめぐりあえる。
館長から、フランス哲学の古い原書の購入を依頼された。
もちろん、フランスでだ。
二つ返事で承諾して一路フランスへ。

一週間後、78年ムートン・ロートシルトを土産に帰還した。
じいさんとヒロミが高級ワインにぴったりの料理で帰還祝いをしてくれた。
和牛・フォアグラ・仔牛胸線肉のマーブル仕立グリエ、トリュフ風味、豆苗と絹さや添えでお迎えだ。
「凄いなこのワイン」
ヒロミが感嘆するが、お土産はそれどころじゃないよ、
「おじいさん、逢ってみないソフィーと?」
「なんだって、逢ったのかソフィーに?」
含んだワインにむせながらヒロミが訊く。
「ええ、彼女は世界的に有名な食器会社の社長をしている。来週、日本に来るわよ」
「どうする逢うかじいさん?」
大宰が晩年の冒頭に挿入した「恍惚と不安とふたつわれにあり」は
ポール・ヴェルレエヌの「知恵」の一節だったわね、
おじいさんの顔色はまさにそれだった。
選ばれてあることは、恍惚と不安のふたつに祝福されるものなのだ。

     
     選ばれてあることの恍惚と不安とふたつわれにあり
     なおしかも心つつましき祈りにみちて
     おののきて、いきしたり

              ポール・ヴェルレーヌ

 
2009 07/18 18:52:46 | none
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病んだ町をみおろしながら
   野兎が吹き鳴らす
   草笛のようにわらう
   そんな壊れやすい午後に
   君が好きだ

             よしだたくろう

 壊れやすい午後、
 野兎は草笛を吹き鳴らしながら、
 病んだ人々を嗤っていました。

 甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸。
 商のひとたちは、太陽は10個あり、それぞれに名をつけました。
 このひとめぐりの時間を掌統するのが、
 「旬」という神であったそうです。

 天空の旬は野兎にこうささやきかけました。
 「青と赤の草笛を編みなさい」と。

 青は「復活」の色であり、死者の魂を呼びかえす色でしたし、
 赤は、火が赤、木のあかは朱、土のあかは丹で、
 「いのち」の色でした。
 
 野兎は朱と丹を火であぶり、
 若草を煮て青い染料を抽きました。
 あまった赤を染料にまぶし、
 かき混ぜると紫の砂になります。
 さらに水を加えて、
 草笛をつくりました。

 病んだ町は丘の上から聞こえてくる笑い声に耳をすまし、
 死者たちの舞いを観ました。
 それは蜃気楼のように、
 おぼろげで、
 かすかで、
 ほのかに切なく、
 くすんだ笑顔の下にある、
 くるしさとか、
 かなしさとか、
 やるせなさとか、
 わびしさとかを、
 それぞれの胸にふつふつ去来させました。
 
 その幻影はあたかもしずかに語りかけるように
 こうつぶやいているようでした。

 だいじょうぶですよ、
 あなたが愛したあのひとは、
 いまもこうして丘の上で、
 あなたを憂えています。
 しっかりしなさい、
 あきらめないで歯を食いしばって、
 たたかいなさいと。

   病んだ町をみおろしながら
   野兎が吹き鳴らす
   草笛のようにわらう
   そんな壊れやすい午後に、
   君が好きだ。
   

 

 
 
2009 06/14 16:27:14 | none
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ぼくらはいめを語りあい
  懸想に懸想をねじこんだ

  いめの函が月の蒼さにたえず
  風の落とす影にたがいの臓腑を侵しあうころ

  譲ることすら吝(しわ)くなり
  ささやかなことさえくみとるを惜しみ


  触れた指に霜が立ち
  重ねたくちびるに霧氷がおりる

  なのに

  どうしてなんだろう
  はりさけそうなくらい
  こんなにざわめくのは

  あだびととして出逢い
  あだびととしてむつみ
  あだびととしてそねむ

  明証的な認知に萌ゆる
  どうしようもない松露を
  どうすればいい?
  香気がいくらたとうが
  所詮
  そいつは骸炭さ
  
  血が噴き、
  肉がたぎり
  こころが燃えさかるころ

  胸の内にうかぶことすべてが
  燃え尽きる

  灰塵と化した記憶には
  のこるものはなにもないはずなのに

  どうしてなんだろう
  はりさけそうに
  こんなにざわめくのは


夢(いめ)は、草冠と四で羊の赤くただれた目を現し、さらに、
おおいと夕を合わせて、夜の闇におおわれ見えない状態を意味する字です。
夢見ることは楽しいですか?

2009 05/25 20:23:44 | none
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   この斜陽すぎる男にとって
   人生はまことにむごたらしい。
   さびれた血を生気づけるに
   くちびるうるおす蜜がない、

   眼のために、手のために
   てらすランプに油がない。
   超人的な誇りのために
   おもねる野心も見あたらない。

   生きるために、死ぬために、
   みずから選んだ妻もない。
   苦痛に耐えて忍ぶため
   しばし見とれる妻もない。

   心のために、肉のために
   湧き踊るあそび女たちもない。
   地獄を恐れまいがための
   宿札さえもない。

   いくら苦悩を払ってみても
   天国へ行く「あて」もない。
   なにもない。
   いやいや、ただひとつ、
   「慈愛の心」がのこっていた。

    刺すごとき 
    侮辱に宥恕でむくい、
    ほうけた顔の
    復讐をば放擲する。

   比翼にあじりやって来る
   悪意に対して善意を酬い、

   考えてやり、察してやり、
   それぞれの身になってやり、
   恥をしのび、
   つねに心はひろやかにしめやかに、
  
   こうしていたらなにかしらある温情が
   疲れた心のために光るだろうか
   斜陽すぎる男のために
   やがて人生もほほえむだろうか。

 ポール・ヴェルレーヌは
 デカダンスの元祖と仰がれているらしい(評論家ってのはどうしてこうも括りたがるのか理解できないのだが)。
 デカダンス、その語には
 頽廃、堕落、虚無、耽美、病的、怪奇、おぞましいばかりの形容が並ぶ。
 ボードレールやランボー、ワイルドなどもこの派か。
 裏の裏は表だが、ひっくりかえることはないらしい。
 堕落の堕落はより堕落ということだ。
 その証明のために、
 すこしだけ彼の来歴をたどってみよう。
 1844年3月30日に彼は生まれた。
 十日余の月が夜空に輝いていた。
 14歳、ヴィクトル・ユーゴーに習作を送り、ボードレーヌに感銘を受ける。
 22歳でフランス文壇(それは文学を志す者にとっては特別な世界である)にデビュー、
 26歳で結婚、一子を設けるが、
 27歳のときアルチュール・ランボーに出合い、ひとめぼれ、妻子を棄てた。
 この奇しき出逢いを運命と呼ぶのか宿縁と呼ぶのかどうでもいいが、
 28歳、痴情のもつれに激昂し、ピストルでランボーを撃ち破局、彼は牢屋へ送られる。
 31歳、英国で教職につくが生徒(美少年です、もちろん)にベタボレしてしまい解雇される。
 彼には、もともとそういう性癖(ホーモーってこと)があったのだろう、
 生徒との関係は学校を石もて追われた後37歳まで続く。
 美への憧憬は時として恋という錯覚を魅せることがある。
 しかし彼のこの性癖がそうであったならばそれは剥落という地獄をもたらす。
 何故ならば永遠に「恋」を彼は理解できないからだ。
 40歳に出した「呪われた詩人たち」は全く売れず貧窮したあげく、慈善病院に収容される。
 42歳、場末の娼婦の情夫となる。
 48歳、娼婦に浮気され、慈善病院に入院。
 49歳、別の娼婦と恋仲になり、退院するが、先の娼婦と仲直りし同棲を始める。
 50歳、この偉大なる才能は、娼婦に看取られて死去する。
 死出の夢はマドロス踊り、テンポよく脚あげ腕ふり地獄へむかう。
 晩年(40歳以降だろうか)、街角で詩を即興して得たわずかな金を握りしめ場末の酒場に走った。
 苦しい過去を茫洋とかすませ、辛い現実を甘美な桃源に変える酒は、確実に彼の命を蝕んだ。
 愛憎に削ぎ落とされた才能がつむぐ言葉はどれほどの域に達していたのか誰にもわからない。
 わかることは、
 人生は彼に決してほほえまなかったことだけだ。

    冬は終わりになりました
    光はのどかにいっぱいに明るい天地にみなぎって
    ぼくらの希望はみなどれもかなう季節になりました。

 26歳の時の詩の一節だ。
 盛りの過ぎた売女たち。
 男の心を誘うものなど見つかりそうもないうば桜。
 ただいたずらに騒々しく、欲の皮のつっぱった女たちに囲まれて、
 卑俗な世界に身を沈める痴人の歌を書きなぐる。

    心静かに話しかけると心静かに応えてくれる
    声を荒げて小言を云うと不思議にあなたも声を荒げて小言を云う
    僕が倖せだとあなたは僕以上に倖せらしい
    すると今度は倖せなあなたを見て僕が一層倖せになる
    僕が泣いたりするとあなたもそばへ来て泣き
    僕が慕い寄るとあなたもやさしくよりそってくれる
    僕がうっとりするとあなたもうっとりなさる
    すると今度はあなたがうっとりしていると知って僕が一層うっとりする。
    知りたいものだ、僕が死んだらあなたも死んでくれるだろうか、
    あたしのほうが余計に愛しているのだからあたしが余計に死にますわ、
    そう応えてくれるだろうか。

 彼に死を贈ったのはリューマチだった。
 「天の救いも、人の扶けも、神の誘いもない」孤独な死だった。
 彼が身罷るその数刹那、圧するように浴びたであろう「その頂」の光を、
 どれだけたくさんの詩人たちがあこがれただろうか。
 そう、彼は、到らないまでも、「その頂」を間近で体感したと、私は信じたい。
 希わぬかぎり道すら標されない「その頂」は、
 天才においてなおこれだけの苦境を強いる。
 彼の詩は、血と涙とひと抱えもある絶望で書き記される。
 つまり、血と涙とひと抱えもある絶望で書き記せない詩人はニセモノだということだ。
 仕合わせの裏にあるもの、豊かさの裏に巣くうもの、よろこびの影でふるえるもの、
 それらが言葉を「他の何か」に変える。
 変えられた言葉らしきものはつらなり編まれて「詩」となってゆく。
 それが「詩」だと私は信じている。

 

 

 
 
 
 
 
 
 

2009 04/30 11:03:19 | none
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   羿なんぞ日をいたる
   烏なんぞ羽を解く

               屈原「天問」


むかし、羿(げい)という神がいた。
弓の名人とされている。
史記には二人の羿が違った時間軸に現れて混乱させられるが、
古いほうのゲイのお噺をしよう。

あるとき、天帝の10人の息子たちがイタズラを企てた。
息子たちは皆太陽だったらしい。
一人がかわりばんこに天空にのぼる。
何万年もやってると飽きてくるのは神様もおなじようだ。
10人一緒にのぼってみようと誰かが言い出し9人が即座にのった。
イタズラは、どんなときも楽しい。
おやじにもおふくろにも黙ったまま天空に10個の太陽が煌めいた。
そのまぶしさは半端じゃない。
なにせ、灼熱だ。
作物は枯れ、地はひび割れ、海も川も乾いてしまう。
とても人は生きていけない。
地上の聖王だった尭(ぎょう)は天帝に祈った。
天帝も息子たちのイタズラとはいえ放ってはおけない。
一案を講じてゲイを呼んだ。
「人民のために服務してこい」
ゲイは命じられ、妻とともに下界に降り立った。
妻の名は、嫦娥(じょうが)という。
アフロディナほども美しかったのだろうか、
なにせ天界人、女神だ。
夢は美的なほうがいいに決まってる。
ものすごく美しかったことにしておこう。

ゲイは10本の弓を用意し、つがえて天空の標的を睨んだ。
地上の聖王のギョウは慌(あわ)てた。
10個もあると迷惑至極だが、全てなくなっても困る。
部下に命じそっと一本の矢を隠させた。
必中の矢は、9の太陽を射落とした。
いっこの太陽がのこった。
ゲイはついでに地上の猛禽類や大海ヘビなどもことごとく退治した。
下界に安穏な日々がおとずれる。
大手柄。
意気揚々と天帝に報告した。
だが、天帝は激怒していた。
可愛い我が子を殺されて怒り心頭に達している。
あげくゲイを神籍から外してしまった。
神の世界にも戸籍はある。
あわれゲイ夫妻は、神の特権を失ってしまった。
天界にはのぼれず、永遠の命もない。
いずれ人間のように死を迎えてしまう。
地獄にだって落ちるかも知れない。
それだけは我慢ならなかった。
ジョウガは夫に食ってかかった。
「あんたはなんてバカなの!我が子を殺されて誉めてくれる親がどこにいるのよ!」
女神といえども癇癪持ち(ヒステリー)であることは人と変わらない。
「そんな叫ぶなよ、なんとかするから」
人間の男のように、ゲイは情けなさを露呈する。

家(仮住まいだろう)にいられないゲイは人間の女と浮気をした。
これがまた性悪だったようだ。
おまけに夫もちである。
性悪女は、どうしてだろう、皆、美しいと相場が決まっている。
熟れた口唇からささやかれ声は男を恍惚とさせる。
一度でもうっとりしてしまえばもういけない、無理難題をきかされる羽目になる。
邪魔な夫を殺してともちかけられた。
天帝の神意を汲み取れずに神籍を奪われたゲイに、
女の底意を推し量れるわけがない。
頼まれたとおり夫を射殺そうとした。
だが名人も矢の誤り?放たれた矢は夫の目に突き刺さった。
夫も黙っていない。
天帝に訴え出た。
にっくきゲイを弁護するはずはない。
ゲイはまたひとつ、天界から遠ざかってしまう。
不倫相手は「間抜け!!」の捨て台詞をのこして去ってゆく。
踏んだり蹴ったりだ。
ゲイはジョウガに頭を下げて許しを乞うた。
それみたことか、と妻の悪態は想像をこえるほど降り注がれる。
無条件降伏の身の上だ、どんな誹謗中傷もがまんしなけりゃいけない。
「かあちゃんすまん、これこのとおりだ(土下座)、許してくれ、二度と浮気しないから堪忍してくれ」
恭順するときはプライドなんか捨てなきゃならない。
女房の足を舐めるくらいの無私さが肝心だ。
なにせ美貌では浮気相手もかなわない絶世なのだ、ここは耐え忍ばねばならない。
つまみ食いはもうしない、と固く心に誓うゲイだった。

あるとき耳寄りな噂を聞いた。
崑崙に西王母という神がいて、不死の妙薬をもっているという。
崑崙は西の果て、険路・険峻で人獣を阻んでいるそうだが、ゲイは人籍に落とされようが元は神である、並の体力ではない、喜び勇んで崑崙へ旅立った。
西王母に逢い、妙薬をねだると、
「あとふたつしかありませんから、夫婦でひとつぶずつお飲みなさい。
ひとつぶ飲めば不老不死となりますし、ふたつぶ飲めば昇天して神になれます」
ゲイは押し頂いて妻のもとに馳せ参じた。
西王母の言葉をそっくりそのまま伝えて、妻の顔の喜色に胸を撫おろした。
「不死で充分じゃないか、地上も楽しいぞ、ふたりで仲良く暮らそうぜ」
ゲイは得意満面に妻に告げた。
ジョウガは「そうね」と応えながら別の思案にとりつかれていた。
――こうなったのはこのバカのせいでアタシにはなんの責任もない。
不死だけで足りるわけないじゃないの。
昇天できなきゃ意味がないわ――

ジョウガはゲイに内緒でふたつぶ飲んでしまった。
あんなバカは勝手に死ねばいいのよ。
自分で蒔いた種は自分で刈ってもらいましょう。
当然の権利よ。
恨みはなにひとつ忘れてはいなかったのだ。
女は、ほんと、恐い。

果たしてジョウガは身が軽くなり、天へ昇っていった。
途中で考えた。
このまま天界に戻れば夫を置き去りにしたことがばれてしまう。
それは、まずい。
ホトボリがさめるまでどこかで休息していよう。
天と地の間に月がうかんでいた。
ここでしばらく身を隠していよう、ジョウガは月宮に降り立った。
ところが月宮で横になっていると体の異常に気がついた。
背が縮み、腹がせりだしてくる。
腰が横にふくらみ、手が曲がる。
重力に押しつぶされそうな圧迫を感じる。
やがて首は肩に埋没し、口が裂け、目が大きくなる。
皮膚は黒ずみ、斑点と腫瘍があちこちに出来てくる。
ゲロゲロ!!
ジョウガは悲鳴をあげたつもりだった。
だが声はつぶれた音に過ぎなかった。
彼女は、醜いガマガエルに変身していた。

これ以降、古代の人たちは月を嫦娥と呼んだ。
観月のたび、世の男どもは置き去りにされたゲイを重ねる。
ゲイは悲嘆に暮れなかった。
天職である弓を人間に教え、村々の若い娘をつまみ食いしながら、
よろしく余生を送っていた。
弟子の中に天才がいて、名を逢蒙(ほうもう)という。
めきめき腕が上がり並ぶものがいない。
だが、師匠がいる限り自分はナンバー2だ。
才能という強欲はつねにナンバー1を強いる。
とうとう逢蒙はゲイを闇討ちした。
あわれ、弓の神様羿はここに間抜けな人生を終焉させた。

飼い犬に手を噛まれる、ということわざはここから生まれたらしい。













2008 04/14 18:54:22 | none
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