直接来局の方、あるいは電話のお問合せで、漢方薬販売をお断りした事例集
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土曜日は半ドンであるから忙しい。終末近くの昨日金曜日から入ってくる遠方の新人さんたちからの通信メールや電話も集中し、二泊三日で直接来局されて以後の微調整に余念がない。 このために追加補充や微調整の漢方薬類を発送するのに追われるのが金曜日や土曜日の半ドンである。 そこへ土曜日しか通えない近県や近隣の新人さんや常連さんも直接来局される。
そのような忙しい土曜日に限って、歯切れの悪いのんびりしたお問合せの電話が入る。 「ホームページを見たのですが、漢方相談に乗ってもらえますか?」という若い男性の声。 「一度は直接来局されないことには応じることはできませんが、どのようなご病気ですか?・・・、お住まいはどちらからですか?」 という応対に出た女性薬剤師に対し、 「遠方だからとても行くことはできないから、電話相談にしてもらえませんか?」 「当方のHPを御覧になったのでしたら、トップページにもしっかり書いていますように、一度も来局されない人には、漢方薬をお出しすることは出来ません。そちらの地元の通えるところでお求め下さい。」 といういつものワンパターンのお返事だが、こちらから提出する質問の病名を言うでもなく、遠方というご住所を述べるでもなく、のらりくらりとやられるので、土曜日という貴重な時間をお気軽な電話で浪費したくないので、申し訳ないが荷造りで忙しいので、この辺で宜しいでしょうか、という逃げ口上で、ようやく電話を終わる。 このような応対を延々数十年も繰り返しているのである。ましてや本当に当方のHPを御覧になっているなら、まったく初めての人に電話相談だけで漢方薬を販売するような無謀なことはしないと理解されているはずである。
それでも敢えて電話相談を申し込むということは、まともにHPのトップページの一部すら読まれていない証拠か、あるいは、看板に偽りがあるのではないかと遊び半分にカマをかけているかのいずれかであろう。
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本日も相変わらずお気軽なお電話のお問合せにお断りせざるを得ない内容ばかりが続いている。 「お宅の漢方薬は保険がききますか?」という相変わらずピンとはずれのお問合せに、電話の応対に出る女性薬剤師は、些かウンザリ加減の様子が見て取れる。 同様なお問合せが毎月何本かかることだろう。
ところが、世の中、逆のケースも些か多く、あまり大きい声では言えないのだが、毎月必ずといっていいほど新しく来局される人の中には、 「病院では漢方薬が出されたが、一向に効かなかった。病院でも漢方薬を出すくらいだから、きっと専門のところなら、もっと効く漢方薬があるかもしれないと思ってやって来ました」 とおしゃる奇特な方達がおられるのである。 意外に当方の地元ではこのような発想のもとに来局される人が多く、だからややトウヘンボクな薬剤師の経営する我が薬局も何とか潰れずに生き残れているのである。
但し、誤解のないように言っておけば、保険漢方では適用されない特殊な漢方処方も医薬品として意外に沢山の種類があり、また牛黄や麝香などの高貴薬類は、一切保険がきかないのである。 当方のような漢方専門薬局で販売している漢方薬は、保険漢方として採用されていない、特殊な漢方製剤が豊富に揃っているということだ。
それらの特長を活かせる奇特な方たちが、常に安定して来局され、真の漢方の実力を信頼される常連さんたちによって存続出来るのである。
仄聞するところによると、一部の同業者間では昨今盛んに宣伝される医療用漢方に脅威を感じて、喧々諤々の議論もなされているらしい。 医療用と共通した漢方処方しか販売されない規模であれば、確かに死活問題として議論される理由も理解できる。 また、明治維新以後、市井で営々と漢方薬の伝統を保守し続けてきたのも、多くの薬剤師や薬種商の人々であって、医師の数はほんの一握りに過ぎなかった。
現代漢方は、昨今テレビ宣伝が盛んな勢いに乗じて、完全に医師の手に移っていこうとしているかのようだが、どうしてどうして、保険適用されない多種類の漢方製剤や、高貴薬成分から構成された各種の漢方製剤が、市井では地道に活躍しているのである。
保険漢方は保険漢方、薬局漢方は薬局漢方として、今後も末永く両立していくに違いないのである。 先日も病院から出された葛根湯が効かないので、保険の効かない銀翹散製剤を求めて来局された人が来られたばかりである。
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総合病院などに勤務する身内の医師からシバシバ問合せされるのが、抗癌剤などの副作用防止の漢方薬である。 特に吐き気止めに関する処方の質問では、出入りの医療用漢方メーカーのMRさんに、六君子湯と半夏瀉心湯を言われているが、どちらがいいのだろうかという質問である。
当方の返事としては、ワンパターンの紋切り型のお返事しか出来ない。漢方と漢方薬の法則というものは、所詮、中医学理論に頼らざるを得ないのだから、日本漢方のパターン認識では、あまりにもファジー過ぎると思う。 ひるがえって、貴方の言われる「六君子湯か半夏瀉心湯」と言われる二者択一的な決め方は、漢方薬を現代医学に取り込むのに性急な余り、西洋薬的なエビデンス漢方に堕する危険性なしとしない。
情況によっては柴苓湯や小半夏加茯苓湯ということもあろうし、もちろん大柴胡湯が適切な場合もあろう。はたまた乾姜人参半夏丸ということだったあり得る。
過去に、抗癌剤の副作用ではないが、妊娠中の悪阻が重篤化した同級生の看護婦さんに、一般処方では全然無効であったものが、乾姜人参半夏丸で一発で止まったことがある。
人それぞれの個別性に合わせるのが本来の漢方薬のありかたであり、またそうでなければ有効・適切な漢方処方を選ぶことは出来ない。あてずっぽうで投与したものが良く効いたからと言って、どの程度の再現性があるのか? 確かに確率的には半夏瀉心湯などは抗癌剤の副作用による下痢などに有効性が高く、同時に吐き気止めとして作用するものの、常に再現性があるとは限らない。
やや意地悪なお返事かもしれないが、漢方の本質に早く気付いてほしいからに他ならない。
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休日の日曜日にもお問合せのお電話は多いが、昨今、最低限のマナーすら守れない人がとても多い。
「今日はお休みですが・・・」というこちらの言葉に、すかさず切り返す言葉が「お休みならお訊きしてはいけませんか!?」という不快な語調である。
病気に困っておられる立場のご家族なら、特権的な特別な地位とでも言われるのだろうか? こちらとて前日までのハードな仕事でへとへとの身体を回復させている休息日である。
実際の所、お電話でのお問合せで、先のように最低限のマナーが守れない方とは、あとあとのトラブルを警戒して、御相談を受け付けない方針を徹底している。
これが他の人達のように「お休みのところ申し訳ありません。ちょっとお訊ねして宜しいでしょうか?」 と言われるのであれば、頭脳が停止中のアンテナを無理に揺り起こしてでも、親身にお話を聞く位のことはマナーとしても、人情としても大いに受け入れられるものである。
ところが、しょっぱなから切り口上でやられたのでは、不快感が先にたって、奥ゆかしさが売り物だったこの日本国も、地に落ちるだけ落ちたものだと、せっかくの日曜日も些か台無しにされた気分に陥るのである。
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時間に余裕がないと言いながら、漢方相談を求める理解に苦しむ人たちが後を絶たない。 御自分の身体の問題である。「時間が余り取れないが」と言うこと自体が、明らかにお気楽・お気軽な相談である証拠だ。 数日前のこと、十数年前に来られて暫く続けていたことのある人が、新たな相談でみえたのはよいが、時間がないというので、時間の余裕のあるときに出直してもらったばかりだ。 そして出直して来られたという本日、一時間あれば大丈夫だろうと勝手に決め込んだ口上に、一番緊張感の強いられる綿密な漢方相談のアンテナが壊れてしまった。のみならず、病院にはまったく行っておらず、何の諸検査も受けないままの漢方相談というから尚更である。
病院での受診前の漢方相談を受け付けているのは、日頃の様子が詳細に分かっている常連さんや昔からのお馴染みさんだけである。 お馴染みさんや常連さんであれば、必要に応じて病院での受診や諸検査等を強く勧告できるし、また多くの場合、素直に応じてもらえるので、体調に新たな問題が生じた場合でも、詳細なご相談により、適切なアドバイスが出来るのである。
時間がない、時間がない、という口上でやってこられる漢方相談ほど不愉快なものはない。だから当方では、あからさまに不快感を表明する。 御自分の健康上の問題ではないのか? まったく理解に苦しむ平成時代の日本人たちなのである。
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胃弱にリンドウの根である竜胆を使用するなど、とんでもない話である。やや高齢とも思われる女性のお電話でのお問合せである。 当方では漢方製剤原料を小分け販売するわけにはゆかないこと、のみならず胃弱に竜胆(りゅうたん)というのはほとんどあり得ない話なので、いよいよもってお断りする。
いつも述べているように漢方薬や漢方製剤原料の指名客ほど警戒を要するものはない。たとえば今回の竜胆にしても、中医学的効能を簡単に記すと、
〔性味〕苦・寒 〔帰経〕肝・胆・膀胱 〔効能〕清熱燥湿・瀉肝降火
で、どこにも胃弱に効きそうな性質はほとんどあり得ない。 竜胆を使った漢方処方に「竜胆瀉肝湯」というのがあるが、明らかな胃弱の人には使用してはいけない方剤の一つの代表格である。
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何とも勿体無い話だと思う。この時代になってもステロイド軟膏を毛嫌いし、忌み嫌って絶対に使用したくないという若いご両親が多い。大事な子供さんが全身のアトピー性皮膚炎で常に痒がっていても、である。 恐れた理由は、以前、皮膚科で出される通りに漫然と塗り続けて、治ったと思った時点で中止していたところ、猛烈なリバウンドに見舞われ、噂に違わず本当に恐ろしい薬だと深く認識するに到ったということらしい。 明らかに医師のきめ細かい指導が不足していたか、あるいはご両親が医師の指導を守らなかったかのいずれかであろう。
ステロイド軟膏の正しい使用方法は、金沢大学の竹原和彦教授らの研究により、すでに確立している時代である。 また、漢方と漢方薬関係の医師(江部康二氏)の研究でも、同様の結論が出されている。
漢方の領域でも、アトピー性皮膚炎の御相談はかなり多い現状から、専門家の間でも明らかな優劣はあるものの、アトピーを得意とするところでは、ほぼ全員を副作用を出すことなく完全緩解に近い状態に導いている現実を知らない人も多いだろう。 ところが他の医療機関における治療や他所の漢方治療によって治癒せず、更に悪化した状態で来られた当初は、必要最小限のステロイド軟膏を適切に使用することによって、早期に緩解状態に導くことを可能にするのである。
猛烈に痒がっている新来の時点で、見るに見かねて「皮膚科で適切なステロイド軟膏をもらって、一時的にでも使用してはどうか」とのアドバイスを素直に受け入れられない場合は、この柔軟性と臨機応変の精神に欠けるご両親では、この先が思いやられる故に、断固、漢方相談をお断りせざるを得ないことになる。
そんな現実が昨日あったばかりなので、下記に引用する。 漢方と漢方薬の質疑応答集より、 昨年はHPを見て来られた人に、漢方薬で一ヶ月で治してほしいとか、一年で治してほしいという首を傾げる注文が目立ったが・・・の後半部分から。
先ほど子供さんのアトピーで隣県から一家四人で直接来られた人があったが、来られる前にお電話なりメールでなりお問合せされておれば、遠くから無駄足にならずに済んだものをとややお気の毒であった。 お断りした理由は、これまで二ヶ月ステロイドを使わない病院に行っていたが、大分良くなったといいながら、子供さんは赤黒い身体の全身をひどく痒がっている。ステロイドはもう一年以上使用していないという。そこまでヒドイ状態でステロイドを一時的にでも使用しないのはやや問題であること、今後もステロイドを使用しないつもりなら、当方では扱えないことを告げると、直ぐに諦めて帰られた。 もちろん小生の性格上、ご両親が当方での漢方使用経験がない場合の子供さんは正直言って扱いにくい、きっとご両親が当方のアドバイスに素直に従えないだろうから、という本音を漏らすと、そこだけは大いに同意と見えたのであった。
痒みの強いアトピー性皮膚炎に、臨機応変に一時的にでもステロイド軟膏を使用するくらいの融通性が欠如しておれば、将来が思いやられる。現実には当方の漢方薬を本気で始められた人は、ステロイド軟膏の副作用問題をほぼ完全にクリアしつつ、必要最小限使用してもらうことがあっても、次第に塗布する量も回数も激減し、運が良い人は漢方薬を服用後、一ヶ月もしないうちに殆ど使用する必要がなくなる人もいる。 しかしなが、ステロイド軟膏も必要最小限の正しい使用方法を遵守すれば決して恐い薬ではなく、その間に漢方薬で比較的スムーズな体質改善が行えるので8割の治癒、つまり緩解状態に導くことはそれほど困難ではない。
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火曜日とは言え、月末の火曜日だから朝から忙しい昨日のことである。 車で二時間前後はかかる場所から、予告ナシにやって来られた中年男性。コレステロール値が三百をかなり越えて、近くの開業医の先生にスタチン製剤をもらって服用していたが、副作用が強いことを知って恐くなり、漢方薬を求めてやって来られたのだという。 これを服用していると簡単に200以下に下がり、主治医はもっと下げないといけないというばかりなので、ますます恐くなったということである。
しかしながら、よく訊けば、服用中は血液がサラサラになる気分がして身体も軽くなり、体調も良かったと言うことである。 ということは、貴方には副作用が出るどころか、明らかに有効に作用しているようだから、スタチン製剤を再開して、200以下には下げすぎないように注意しながら使用することを主治医と相談すべきだと説得。
漢方薬を服用しても到底スタチン系製剤の威力には及ばないし、明らかに副作用が出ているのでもなければ、あえて漢方薬に切り替える必要もないでしょうということで、御帰宅を願った。
確かにスタチン系製剤による副作用に遭遇するケースは、文字通り日常茶飯事であるが、一部の人には明らかに有効に働いているのだから、常にケース・バイ・ケースということであろう。
参考文献:下げたら、あかん!コレステロールと血圧 (浜 六郎著) スタチン製剤の服用を強く奨められる初期ガン摘出後の患者さん ←大問題!
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某漢方薬関連研究会では、ここ何年にも渡って、その会で取り扱う漢方薬(医薬品)類のインターネット販売を中止するよう、強く要請されている。
多数の会員を抱える研究会であるが、ほんの一部、数十件足らずの薬局では、たしかに盛んにネット上での「お誘い販売」が常習化されている。 その会では、消費者保護と遵法の立場から取り扱い医薬品についてインターネット上で「買い物カゴ」「カート」「注文表」方式や「ネット市場」を使って販売しないようにお願いしてまいりました。その結果、医薬品は7月中に目標達成可能な状況になりましたことを報告いたします。 との報告書が本日郵送で送られて来た。
同時に医薬品以外でも、この会が取り扱う関連商品もインターネット販売を中止してほしいとの要請である。白いんげん豆の健康被害事件も大々的に報道されているさなか、相談、説明を介さない安易なネット販売によって一般消費者に不測の健康被害をもたらした場合、問題はその商品ばかりでなく、それを取り扱う研究会全体の信用失墜まで及ぶことになりかねないと危惧する声が多く寄せられています。 この漢方関連研究会が、これまでも再三再四、医薬品のインターネット販売を中止するようにと強く要請できる根拠は、入会時に交わした正式な契約に基づくしっかりした法的な根拠が存在するからである。
ともあれ、上述のように7月中に目途が立っているように書かれているが、先ほど調査したところ、相変わらずインターネット上でこの会が取り扱う漢方薬類(医薬品)が、引き続き「お誘い販売」されているのを確認したが、単なるアリバイ作りではないことを祈るばかりである。
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現代のように価値観が崩壊した社会になると、人を人とも思わぬ御仁が増える一方だが、当方のような頑固爺が経営する漢方専門薬局では、老いも若きも皆さんとてもマナーが良いこと、これは日本国中に自信を持って自慢できることである。
ところが、ときにトンデモナイ光景を目にすることがある。たとえば、暫く前から通っている二十歳前後のお嬢さんは、若い割には驚くほどマナーのよい女性で、さぞや素晴らしいご両親に恵まれていることだろうと、勝手な想像をしていたのが大間違いだった(笑)。
たまたま今回は来れなかったらしく、代理で母親が常用の漢方薬を求めに来た。二種類をお出ししていたので、どちらのほうですかと女性薬剤師が質問すると、 「漢方薬ですよ、漢方薬を買いに来たんですよ!」 と意味不明、錯乱気味な怒り顔と口調でまくし立てる。
そんな馬鹿げたことを、漢方専門薬局だからわザワザ漢方薬を買いに来たんだぞっと、アピールするほうがどうかしている。子供さんに何も聞かずに来たのか、ハタマタ自分とこの娘さんだけがこの薬局の客だと思い込んでいるのか?というよりも、たとえ漢方専門薬局であれなんでアレ、店舗とみればハナカラ高飛車に出るどうしようもない人種に違いない。
これほどの親子のマナーの違いには、藤村操が人生不可解と叫んで華厳の滝に飛び込んだ こととはあまり関係ないが、 実に「人間不可解」としか言いようが無い出来事だった。
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