ユダヤ系の英国人歴史学者の Tony Judtは62歳で
2010年に、異郷のNYで生涯を閉じた。
その亡くなる直前に書いた回想録。
膨大な知識と社会全般に対する見識、分析。
1945年以降の世界のうねりと民族の自我と興亡。
それらを死に行く前の者として、冷徹に、しかも
やさしく見ていった、格好の現代史書である。
そして1940-2010年に生きるものとして、同時代史は
決して日本だけや、フランスのパリや、ロンドン郊外の
鉄道発展系の類推からも、わかるように「同時に進行した」
物語であったことがよくわかる。
これほどの鉄道や交通といった体系システムを愛した
歴史学者も珍しかったのでは、ないだろうか。
高尚な本ではあるが、非常に具体性に富み面白い。
僕らが生きてきた戦後社会とはなんだったのか。
20世紀の後半を今もう一度、この夏に振り返るなら、
最上に勧めたい本である。
\3150
発売元: みすず書房