録画の方法には標準モードと3倍モードの2種類があるが、3倍モードの場合、ヘッドによるテープ上の記録の読み書き面積(トラック幅)が標準モード(58μm)に比べ、3分の1(19μm)になる。 3倍モードで録画した後、ビデオデッキを長期間使用した場合、ヘッドの位置がずれることがある。このままテープを再生した場合、ヘッドとテープ上の記録部分との位置がずれることで、トラッキングエラーが発生し、再生できなくなることがある。 また、ヘッドがずれた状態で3倍モードで録画すると、再生の際、ヘッドが同じずれた状態であれば問題なく再生できるが、ヘッドを交換したり、別のビデオデッキで再生した場合などには、やはりトラッキングエラーが発生し、再生できなくなることがある。 長期間保存するテープや大切な映像を残したいテープは、3倍モードではなく、ヘッドのずれの影響を受けにくい標準モードで録画してほしい。 これらの技術的な説明からすると、消費者がビデオデッキを使用するに際しては、より分かりやすい表現による表示が必要ではないかと思われました。そこで、表示における更なる工夫ができないか検討を依頼しました。 その結果、「大切な記録には標準モードをおすすめします。標準モードは3倍モードよりもヘッドによるテープ上への記録の読み書き面積が大きく、長期使用や他のビデオデッキとのテープ交換再生時でもヘッドと記録部分との位置がずれにくくなります」という注意書が新たに加わることになりました。 (※1) トラッキングとは、再生信号を取り出すためにテープ上に記録された部分(トラック)をヘッドが忠実になぞっていくこと。 (※2) 録画したビデオデッキそのもので再生すること。
コメント&解説 家庭用ビデオデッキが普及してから久しいですが、大多数の家庭では、3倍モードで録画しているのではないでしょうか。一般的に、「きれいに撮れるのは標準モード、画質は落ちても長時間録画できるのが3倍モード」といった感覚と思われます。3倍モードで録画したものが、場合により再生できなくなるという意識は薄いはずです。 再生専用のDVDプレーヤーは普及しつつありますが、録画機能を有したDVDレコーダーはまだ価格も高めで、家庭における録画機の主役はビデオデッキですので、今回の事例を参考に、大切な映像の録画をする場合には、気をつけたいものです。 なお、ヘッドにずれが発生していないかは、レンタルビデオなど他のビデオデッキで録画されたテープを再生して、ノイズが出ないか確認してみるという方法があります。
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