エッヘン

2006年 04月 30日 の記事 (1件)


除虫菊(シロバナムシヨケギク)の花に含まれているピレトリンという成分は、殺虫効果を持っています。そのピレトリンを化学的に合成したものがピレスロイドと呼ばれており、蚊取線香の中にはこのピレスロイドが含まれています。蚊取線香は、ピレスロイドを粕粉や木粉などの植物成分に混合し、燃やすことによって有効成分のピレスロイドを極細微粒子として空気中に浮遊させ、長時間殺虫効果を維持できるようにしたものです。燃焼部分の温度は約700℃で、ピレスロイドは先端から6〜8mmの部分(約200℃)から揮散し、かなりの時間空中に浮かんでいます。従って、どのようなせまいすき間にも届き、タンスのうしろや部屋の隅に潜んでいる蚊を殺すことができるのです。殺虫剤が虫の体内に入る方法として、食物とともに口から、体表(皮フ)から、呼吸をする気門からの三つのルートがあり、虫の体内に入った殺虫剤は呼吸を止めるか、神経を攻撃して虫を殺します。
ピレスロイド系の殺虫剤は、その中でも虫の体表(皮フ)から体内に入り、神経を攻撃して虫を興奮させ、やがてケイレンを起こしマヒ状態となって死んでいくのです。しかし、虫にはよく効くピレスロイドも、人間や混血動物に対しては体の中で速やかに分解し、無毒化され、体外に排出されてしまうので安全です。これは温血動物が持っている酵素の働きによるもので、昆虫ではこの働きが弱いため殺虫効果が発揮されるのです。このような毒性を選択毒性といいます。この選択性を持っているのはピレスロイドだけで、有機リン系や有機塩素系の殺虫剤は選択性がないので、混血動物の体内で分解されにくく、毒性がピレスロイドよりも高くなります。このような働きをするピレスロイドを含んだ蚊取線香は、燃焼時間中絶えず一定の有効成分を空中に連続的に放出して、殺虫効果を保持しているのです。

PS1:除虫菊
原産国は地中海・中央アジアといわれ、セルビア・モンテネグロ(旧ユーゴスラビア)で発見されました。この花は古くから殺虫効果があることが知られており、現在もケニアをはじめ世界各地で殺虫剤の原料として栽培されています。殺虫成分ピレトリンは花の子房に多く含まれています。
  日本では弊社(大日本除虫菊株式会社:KINCHO)の創業者である和歌山県出身の上山英一郎(うえやま えいいちろう)が明治19年(1886)にアメリカのH.E.アモア氏から除虫菊の種子を贈られ、渦巻型の蚊取り線香を発明しました。 上山英一郎は和歌山県や広島県・香川県を中心とした瀬戸内地方、北海道など日本の各地で除虫菊の栽培を奨励しました。
 第二次世界大戦前は盛んに生産され、日本から世界中に輸出されて産業振興に貢献しました。しかし第二次大戦後はピレトリン類似化合物のピレスロイドが殺虫成分の主流となり産業としての除虫菊の栽培は現在では終了しています。
(注 除虫菊は、そのままの状態では殺虫効果はほとんどありません)
除虫菊の見頃は5月上旬〜中旬です。瀬戸内地方尾道,向島,因島などに見学スポットがあります。
PS2:KINCHOの蚊取線香は「左巻き」,他社は「右巻き」,ご存知だったでしょうか。

この季節は今日でおしまいです。
2006 04/30 22:26:29 | 何故の解明 | Comment(0)
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